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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 舞木百良
第一幕『事実は演劇より奇なり』
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演劇『魔法使いブレイヴ(1)』

 今から何年も前、世界に「魔王」という存在が現れました。

 人々は世界を魔王から守るため、年に一度一人だけ世界を守る存在「ブレイヴ」を大国の王様が決めておりました。

 ある日、小さな街に住む魔法使いがブレイヴに任命されました。

 魔法使いが小さな手紙を見ながら呟きます。


響彩(とあ)「僕が今年のブレイヴか……」


 魔王のいる場所については、ほとんどの人々が知りません。

 場所は大国からブレイヴに渡された手紙に書いてあります。


響彩「じゃあ、さっそく魔王の元に向かいましょうか」


 最低限の荷物を持った魔法使いは、さっそく魔王のいる場所に向けて旅立ちました。

 サンサンと太陽が魔法使いに降り注ぎます。

 魔法使いは家から塔まで約一週間歩くのです。

 もちろん野宿をすることだって、断崖絶壁という言葉通りの崖を命からがら登ることだってありました。

 旅の途中、魔法使いは騎士に出会いました。

 騎士の言うには、ブレイヴにはなれなかったものの、魔王を倒すため旅を続けていたそうです。


心奏(しおん)「私に貴方様のお伴をさせていただけませんか?」


 騎士は魔法使いの前に跪くと、胸に手を当てて懇願しました。

 そんな騎士を見て、魔法使いは騎士の前にしゃがみ込むと、騎士に向かって手を差し伸べます。


響彩「分かった。一緒に世界を守りましょう」

心奏「ありがとうございます」


 こうして騎士は魔法使いのお供をする事になりました。


響彩「なぜあなたは魔王の元へ向かおうと思ったのですか?」


 その日は魔法使いが家を出発してから五日目の夜でした。

 魔法使いは焚き火を前にしながら、騎士に尋ねます。


心奏「私は親の顔を知らず、小さな孤児院で育ちました。ですがある時、孤児院に魔王の手下と思われるモノ達が来て、孤児院に居た者達を拐って行ったのです」


 夜空を見つめ懐かしそうに微笑むと、騎士は焚き火の前に座り込み、俯き様にそう言いました。


心奏「だから私は拐われた人達を救うため、何年も修行を積みました。しかし、強くなり騎士になってもブレイヴになる事は叶わず、こうして旅をしていたところ貴方様に出会ったという訳です」


 騎士は笑えるでしょう?と苦々しく笑いながら、魔法使いの方に視線を向けました。


響彩「いいえ……」


 魔法使いがキッパリと答えると、騎士は驚いたように目を丸くしたと思うと、ふふっと吹き出したのでした。

 それから二人は夜を明かすと野を越え、山を越え、そしてついに見上げるほど大きな塔に到着しました。


響彩「ここが、魔王のいる塔…」


 塔の門は人が近づくと自動で開くようです。

 塔の門をくぐり先に進むと、二匹のフクロウが魔法使いと騎士の上空を不規則に飛び回りながら言葉を発しました。

 魔法使いは思わず杖を、騎士は剣を構えました。


ロボット1「今回ハ小娘ダワ」

ロボット2「デモ、前マデノ人間ト違ッテルナ」

ロボット1「良イジャナイノ。早ク魔王様ニオ知ラセシマショ」

ロボット2「ソレモソウカ…」


 そう言うと、二匹のフクロウは塔の奥に去っていきました。

 辺りには静寂が訪れます。


心奏「何だったんです?人の言葉を話す鳥はなんているんですね……」


 騎士が剣を鞘に片付けながらフクロウの去っていった方向を見つめました。

 魔法使いも杖を降ろします。


響彩「さぁ?魔法使いがこの世にいるのですから、人の言葉を話す鳥がいてもおかしくはないですよ」

心奏「そ、それもそうですね」


 そうして、二人は塔の奥に進んで行くのでした。

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