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道化師に憧れた僕が自分の病を治す方法  作者: 舞木百良
第五幕『演じるという事象』
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演劇『願いを叶えた二匹の妖怪』

響彩(とあ)「アナタ達はいったい誰?」

心奏(しおん)「僕は九尾の狐。彼は烏天狗だよ」

羽音(ねお)「封印を解きし少女よ。オレ達の願いを聞いてはくれないか?」

響彩「願い?」

心奏「僕らはこの神社を護っていた二匹の妖怪なんだ。ある日、僕らは陰陽師を名乗る者に封印された」

羽音「人々の平和を願っていたオレ達を、だ。そいつらは陰陽師なんかじゃなかったんだよ」


 烏天狗がパチンッと指を鳴らすと、少女の前に四角いモニターのようなものが現れました。

 そのモニターに一人の男性が映し出されます。

 少女はその男性に見覚えがありました。

 その男性は神社を取り囲む村の村長でした。

 少女はそのことを二匹に伝えました。


羽音「オレ達を封印してすぐに村の村長になったのか?」

心奏「狙いはこの村なのかもね」

羽音「どうすんだ?」


 九尾の狐は顎に手を当てて考えたあと、少女に視線を移しました。

 少女は九尾の狐の鋭い視線に、一歩後退りました。

 しかし、少女が思っていたようなことは起こらず、九尾の狐は身体ごと少女の方に向けると、そのまま頭を下げました。

 烏天狗も九尾の狐に続きます。


心奏「どうか。どうか僕らと共に村を助けてくれないか」

羽音「頼む」

響彩「えっ。ちょ、ちょっと、頭を上げてください!」


 少女は慌てて二匹に近寄りましたが、二匹はそのまま頭を下げ続けていました。

 二匹が一向に動く気配がなく、心配になってきた少女は渋々口を開きました。


響彩「分かった!分かりましたから!」

心奏「ありがとう!じゃあさっそく……」


 九尾の狐は少女の右手を取ると、手の甲に軽く唇を落としました。

 すると、少女の手の甲には淡く光る狐の紋様が現れて、すぐに消えました。


響彩「これは?」

心奏「友達の証だよ」

響彩「そんなものをどうして?」

羽音「そうした方が、オレ達があんたを護りやすくなるんだ」


 烏天狗はそう言って、今度は少女の左手に唇を落としました。

 少女の手の甲に烏の紋様が浮き出て消えると、九尾の狐が少女の手を取り神社の外に出ようとしました。


響彩「どこに行くの⁉」

心奏「どこにって、そりゃ村長のところだよ」

響彩「今行って何が出来るっていうの⁉また封印されておしまいじゃない!」

羽音「そんなことない。オレ達には考えがある」

心奏「君が無事なら僕らの考えは成功する」


 烏天狗と九尾の狐の言葉に流され、少女は神社を後にしたのでした。

 二匹の妖怪に促され辿りついた村長の家の前には、多くの人が集まっていました。


響彩「どういうこと?」

羽音「やっぱり仲間を集めてやがったか」

響彩「どうするの⁉これじゃあ……」

心奏「大丈夫。君は少し…休んでいて……」


 九尾の狐が少女の視界を遮るように手を当てると、少女の意識は薄れていきました。

 少女が目覚めると、そこにはもう村長も二匹の妖怪も居ませんでした。

 それどころか、そこは村長の家などではなく自身の家の一室でした。


響彩「えっ、どうして……?」

??「おーい!」


 少女がそう言って飛び起きた瞬間、誰かが少女のことを呼びました。

 その声の方へ少女が振り向くと、裏庭に九尾の狐に似た少年と烏天狗に似た少年が立っていました。


心奏「今日は神社で遊ぶって言ったでしょ?」

響彩「えっ、九尾の狐⁉」

羽音「何言ってんだ?」


 その言葉に少女がハッとして再度二人を見ると、その二人はよく一緒に遊んでいる友達の少年達でした。

 少女が二人をジッと見つめていると、二人は不思議そうに首を傾げました。


響彩「ごめんなさい。ちょっと夢を見ていたの」

心奏「それはそれは、面白そうな夢だね」

羽音「全く、しっかりしてほしいぜ」

響彩「ふふっ。ごめんなさい」


 三人は笑い合うと、神社に向かって走って行ったのでした。

 これは一人の少女と二匹の妖怪の不思議な物語。

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