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第6話 アクシデント

「で、その対価交換の件はそっちに任すとして、”C.P.”に会ったときにこれだけは言わなきゃいけないことがあるんで聞いてくれ。まず第一に、情報師は聞かれたこと以外の発言はできない。要は迷ったらどんどん聞けって事だな。次に、特定の人物が有利になるようなことはしない。嘘や発言しないことはないってことだ。それと、個人の踏み込んだ情報は開示しない。つまり、暴露はできない」

 チッターの説明が終わると、カーミンが

「”C.P.”って何組いるの?」

「今回は2組だな」

「え? それだけ?」

「言っただろ? 必要以上のことは話せないんだ。話しすぎると、解雇になる」

 チッターは冗談のように言ったが、空気が一瞬間だけ重くなった。

「俺たち以外の”C.P.”の名前と特徴を教えてくれ」

 カケルの問いにチッターは迷う様子無くスラスラと答える。

「メンバーは指揮をとるオズ、力強いゼルデム、機械系が得意なローブレット、それと無口のキローヌだ」

 無口って説明されるのか……。じゃあ、カケル組の名前と特徴を聞かれたら、僕は無口だと説明されるのだろうか。

「全宝玉の在処(ありか)を教えてくれ」

 リチューの表現の仕方にチッターは感心したようで

「良い聞き方だな。大雑把だが、得たい情報がはっきりしている。で、質問の答えだが”喜玉”は君たちが所持しているだろ? ”楽玉”はライバルの”C.P.”が。”怒玉”は洞窟に。”哀玉”は海峡にある。今君たちが求めている宝玉は4つだから、これでいいかい?」

「できれば、もっと詳細な場所を教えていただきたいのですが」

「う~ん。あまり言うと不公平になるんでね……。そうだな、守り主までで我慢してくれ。怒玉はアーネック、哀玉はジャーグルが守っている」

「そのアーネック、ジャーグルとかいうのはモンスターですか?」

「答えはYESだな」

 守り主はそれぞれアーネックとジャーグル。日本語で言えば、蛇と鮫だ。その後、いくつかの質疑応答と情報交換を行った。最後にチッターは

「そうそう、最初に渡した名刺に連絡先が載っているから、困ったときはいつでも歓迎だ。だけど、このイベントが終わったらいくら君達でも有料で取引することになるので、そこんところ、よろしくな」

「でも、俺らは連絡手段がないんですが……」

 カケルが申し訳なさそうに言うと、

「あれ? 確か”C.P.”には専用の携帯電話が支給されているはずだが……」

 そういえば、出発直前に支給品バッグが1つ配られていた。それを持っているのは、カケルである。カケルは急いでバッグの中を調べると、それは出てきた。支給用携帯電話。充電が十分ではないため、電源を入れてもものの数秒で画面が真っ暗になった。どうやら、カケルは支給品を把握していないどころか、一度も調べていなかったようだ。雑というか何というか……。先が思いやられる。


    *


 ある夕暮れ、携帯電話でチッターからオズ組の行き先を問うと、クエバの町に向かっているとのこと。クエバの町は、この前いたファルナーデタウンから北、城下町からは北西に位置する町である。そこへ行く方法は大きく2つ。船で行くか山脈を越えるか。こう書くと、多くは船で行く選択肢をとるだろう。しかも、クエバの町はフック状のような半島の端に位置し、直線距離が短い割に、陸続きで行くならば大回りしなければならない。クエバの町の南、海峡を挟んだところには、この国の第二の港町であるポルトゥスがある。そこから船が出ている。つまり、前者が楽だし安全。そのはずだった。

 ポルトゥスの港は、船が一切無かった。カケルはその光景を見て

「どういうことだよ……?」

 漁業関係者に話を聞きに行ってきたクートとメイルが駆けつけ、

「数日前に、船が全部壊されたんだって!」

 さらに、観光船や運搬船、旅客船を管理している会社、ポルトゥス・フェリーから情報を得てきたリチューは

「こっちもだ。どうやら船で行く方法はないようだ」

「何が起こってるんだ? これもイベントのひとつか?」

 カケルは閑散とする港でため息をついた。

 船や電車などで行けるはずの町に、最初は徒歩で向かわねばならないことはゲームではよくある気はするが、なぜ船を破壊する必要があるのだろうか……?

「カケル、それとポルトゥス・フェリーで聞いたとき、こんなことを言っていた。『今朝、同じようなことを聞きに来た少年達もいたけど、あの子達はどうしたのかな?』ってさ」

「それって……」

 カーミンも察したようで、

「大方、オズ組だろうな」

 リチューの推測は正しかった。


 数時間前。ポルトゥスの港にオズ達が来ていた。

「船が出ない?」

 ゼルデムが言った。

「”船が出ない”じゃなくて、出る船そのものが無いってところだな」

 オズは手元の地図を広げて、考える。

「ローブレット、船ぐらい作れないのか?」

「ゼルデム、無茶を言うな。船を造るなど途方も無い時間と費用がいる。ところで、キローヌの姿が見当たらないのだが……」

「あいつ、俺たちと全く口を利こうとしないじゃないか」

 無口のキローヌについて、ゼルデムがそういった。

「確かに喋れない訳では無いけど、喋らない理由が何かあるんじゃない?」

 と、ローブレットはフォローを入れた。そのキローヌは、港の漁師にあることを聞いていた。漁師の返答は

「3日前の明朝、漁に出る準備をしていたときだ。足音が聞こえて、誰かいるのかと思って見たら、体中が真っ黒で人間の形をした化け物がいたんだが、そいつが体を自由自在に変えて船を壊していったんだ。だけど、こんな話、誰も信じてもらえなくてな……」

 キローヌは礼を言い、オズ達のもとへ戻った。どうやら、船が無くなったのは怪奇現象もとい、怪物の仕業のようだった。今回のイベントとは関係無いアクシデントだろうか?


 オズ達は結局、山脈を越えるルートを選択した。カケル達も同じく。そうなると、遠い。まず川を越えて北東へ行き、半島へ行くゲートを通り、山脈を越えてクエバの町に着く。歩いて行くなど無理。何日かかるのか。


To be continued…


物語は中盤へ。キローヌの台詞はここまで無し。漁師に問いかける台詞もありません。

本作にスマホは出てきません。執筆当時、携帯電話の方が普通で、スマホはまだまだでしたので……。今書くとなると、スマホやウェアラブル端末になるのかな? ……フォルスネスは、通話機器があまり流通していない世界なんですが。

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