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第2話 国王に選ばれた人々

 歩くこと以外、特にすることもないし、メンバーの様子を眺めていたら、少しずつそれぞれの特徴、個性が見えてきた。

 まずはカケル。一言でいうと、熱血少年だろうか。単純でリアクションが一々大きい。リーダーになりたがるタイプだな。というより、既にリーダーになっているつもりのようだ。

 次に、カーミン。天然な少女。勘違いが多いとでも言おうか。

 リチューは一般的な少年。周囲をよく見るタイプだろう。料理がうまいかどうかは今夜分かるだろうか。

 クートはお喋り好きな少女。とにかく話題が尽きないが五月蝿(うるさ)い。その分、コミュニケーションが(はかど)っている……のか。

 メイルは一般的な少女。今のところ、特徴なし。機械に関しては未知数。

 僕、ノボルはここまでコミュニケーションを取っていない。仲間意識は無い。

 それはスカイラーも同じだだろう。謎の少年。変わった杖を持つ。消極的というかクールというか、よく分からない。ある意味省エネ。って、それはお互い様か……。


 旅というかイベントの目的はおそらく子どもの交流とか自立を促すこと、もしくは平和ボケの防止か何かだろう。僕自身としては、このイベントの必要性はないと思う。交流なら交流会とか開けばいいだろうし、ぬるいわりに死が隣り合わせの出来事もあるらしい。平和ボケが治る前に死んだら元も子もないだろ。馬車で簡単に説明されたが、この旅の目的は”喜怒哀楽”の4つの宝玉を探すことらしい。

 ところで、このパーティーには危機感が無さすぎると思う。暢気(のんき)なものだ。このメンバーといて、大丈夫なのか……。不安要素しかないようだが……。


 案の定、現在どこに向かうのかとどこまで進むのか、そして野宿か下宿かで()めている。原因の産出者はカケル、カーミン、クート。リチューの仲介は無意味。メイルは呆れて止めようとせず、むしろ滑稽(こっけい)だと眺めているみたいだ。スカイラーは黙って本を読んでいる。僕は距離をとって火の粉が飛び散らないように避難。このままだと、野宿さえもまともに出来なくなるだろう。

 初日から円滑に進むわけが無いが、これは酷い。日没間近。まだ揉め事が収束せず。これだけ揉めることができるのはある意味凄いことかもしれない……。

 が正直飽きた。周囲を見渡すと山々が囲う。町らしきものは見つからない。遠くからこちらに歩いてくる人影が見えた。布を纏い、旅人必須アイテムらしき帽子も。

「君たち、こんなところで何をしているんだい?」

 通りすがりの旅人が僕らに声を掛けてきた。メイルが揉める3人をよそに、

「すみません、この辺りに街はありませんか?」

 旅人に気付いたらしく、3人は喧嘩を中断。旅人は

「今からサイル村へ行くけれど、一緒に行くかい?」

「ありがとう、旅人さん。アタイはメイル。このメンバーは”C.P.(シーピ-)”なんだ」

 C.P.とはthe Chosen Personsの略で”選ばれた人々”という意味。

「”C.P.”ということは、この国の例のイベントか。なるほど……。宝玉は集まったのかい?」

 質問の回答はリチューが

「いいえ。今日が初日のため、宝玉どころか寝床を決めるだけでも進まないチームですので」

「ほう、今日からなのか。じゃあ今晩の寝床はサイル村の民宿がいいだろう」

「よし! 今晩はその民宿だぁ!!」

 威勢だけはいいカケル。リーダーはお前じゃない。

 結局、サイル村へ。案内してくれた旅人はマロックという青年である。彼はこの国の各地を旅しており、知識は豊富。村に向かう途中、宝玉についての情報も教えてくれた。

「ナイトシティに物知りな長老がいることは知っているかな?」

「それはペネーレ長老ですね?」

 とクート。続けて「確か長老は」と長い話が始まった。で要約すると”長老に聞け”と言うことだ。たったこれだけに15分も費やすとは……。これでは壮行式のほうが短い。で、締めはカケルが

「よし、明日はナイトシティに行って長老に会おう!」

 ナイトシティ。夜のナイトか、それとも騎士のナイトか。ところで、大抵の冒険物に出る物知りな長老は村にいるはずだが、都会人なのか?

 サイル村に到着すると真っ暗。民宿の明かりがついているだけだ。つまり、今夜は民宿しか行けないよということだろう。

 C.P.は民宿に泊まる際、出発前に1枚だけ配布された身分証明書のような紙を提示するだけで、本来の一人分宿泊費の100分の1という格安でC.P.の全員が泊まれる。タダではない。もしかすると、過去にタダだとイベントをクリアしようとしないC.P.がいたのかも知れない。今回はマロックが支払った。なお、マロックの宿泊費は定価である。ここの宿泊費は一人2000ガル。つまり支払ったのは2020ガル。安いのか高いのか僕にはその通貨の価値が分からない。”外界街(イディオタガイ)”に通貨はないのだから……。


 旅2日目。マロックにお礼を改めて言ったあと別れ、カケル達はナイトシティへ向かう。3日分の食料や水が各々のバックやリュックに詰められ、道中の野宿前提でサイル村をあとにした。

 森を抜けて草原や山を越えると旅4日目の昼下がりにナイトシティに到着。

 ナイトシティでの聞き込みは主にカケル、クート、カーミン。新たな食料調達・選定にリチュー。機械ショップがあると聞いてダッシュで向かったメイル。スカイラーは何やら単独で。僕は街をぶらぶらと。

 その日の夕暮れにナイトシティのシンボルといわれる騎士の像がある広場に集合した。カケルが情報を得たらしく、長老ペネーレは町から少し離れたところに住んでおり、ナイトシティの地図に書き込んでもらっていた。

 騎士の街、ナイトシティには武器屋や装備品屋はもちろん、騎士の養成学校なんかもあるらしい。そんなナイトシティから少し離れたところに、長老がいるとは思えない庭がある洋風の立派な屋敷が建つ何百坪もありそうなお宅があった。

「ここだよねぇ?」

 カーミンが不安そうに言う。カケルの地図が間違いで無い限りは。

 門が勝手に開き、一同は中へと進む。花が咲き(ほこ)る庭には壷がいくつか置いてある。絶対に割るなよ……。

 ちなみにこの建物は老人ホームではなく、正真正銘ペネーレの屋敷だった。一体長老のどこからそんなお金がという疑問はさておき、カケル達が情報を得るためペネーレと邂逅(かいこう)

「何の用じゃ? ん、お主たちは……?」

 と、ペネーレは言うが

(国をあげて行うこのイベントを知らない人はいないはず。()してや、長老といったキーパーソンは色々と知っているはずだが……)

「申し遅れました。わたくし達は、今回の”C.P.”というものです。物知りなペネーレ長老ならご存じかと思われますが……」

 と、リチュー。

「そうか、もうそんな時期か……」

「じいちゃんは何か宝玉ついて知らねぇのか?」

 無礼極まりないカケルの言動にカーミンが

「ちょっと、その言い方は」

「ほう、威勢がいいことだな。さてその前に、少し昔話を聞いてくれないかな? これは大昔のことじゃった」

(始まった……。よくある長老の長話)

 約30分。ゲームならばボタンを連打でも流せばいいが、現実ではそうはいかない。


To be continued…


外界街出身ながら、ゲームなどの知識はあるようですね。2話は特に変更点が無いです。

さて、『フォルスネス』は『紅頭巾』より後に書いた作品でした。本作はノボルの独り言を中心に進めており、キャラ視点で進めることもうひとつの目的を持って、当時執筆していました。

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