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第11話 燃え盛る街

 クートによると、カケルとスカイラーがメイルの操縦する小型飛行機で向かい、同じタイミングでオズとキローヌがローブレットの操縦する小型飛行機で向かったそうだ。小型飛行機は元々数人乗りのものだが、改造によりメンバー全員が乗れるようにしている。ルールで1割以上の改造があるが、改造するのは乗車人数を増やせるようにすることとエンジンの取り換え、ボディの強化などである。念のため書くが、それぞれ1人で改造しているわけでは無い。ちゃんと整備士や技術屋が協力している。

 中心街方面に行って帰ってこないのは、リチューとゼルデム。ちなみに僕もそこに入っていたらしい。飛行場の外に出るのを誰かが見ていたのだろう。

 ふと思った、連絡手段がないのでは。”C.P.”に支給された携帯電話はそれぞれ1台ずつ。その電話番号を僕らは知らない。連絡できない。しかし、その不安要素はすぐに解決できそうだ。審査員の人が知っているのでは。

 すぐに審査員の3人を探すが、格納庫にいない。マジかよ……。

 連絡手段どうしよう……。普通は3人いるんだから、ここに1人はいるでしょ……なんて呆れてもしょうがない。待機するしかない。

 日付が変わっても飛行場が静かになっただけで爆発音がまだ聞こえる。もし飛行場まで火が飛んできたりしたらなんて考えると、寝られるわけもなく。明け方まで待機していた。

 明朝5時過ぎに滑走路に一機の小型飛行機が着陸した。操縦者はローブレットだ。

 ローブレットは小型飛行機から降りて僕を見るなり、指さして「生存確認」といった。ただそれだけ。すぐに小型飛行機に燃料を充填させる。どうやら燃料切れで戻って来たようだ。

「ここにいるのはノボルだけか?」

「一応、カーミンとクートもいるけど」

「あぁ、カケル組か」

「あの爆発は何だったんですか?」

 現場を見ただろうローブレットに、僕は聞いた。すると

「化け物だよ」

「え?」

「おそらく、あれはファーグルドラゴンの一種ではないかと思われる。だが、ヤツは火炎を身に(まと)い街や人々を襲っていた。こんなことは初めてだと大騒ぎだ」

 ファーグルドラゴンの一種? ってことは倒したものとは別個体だろうか。

「それに……、ゼルデムと向こうのリチューがまだ行方不明で……」

 中心街に行った2人。どちらも食料とメカニックに頼まれたものを調達するためだった。

「みんな必死で探してるんだけど、全然見つからなくて……」

 そういうことか。イベント中に死者が出るなど前代未聞のことであり、国の信頼を揺るがす由々(ゆゆ)しき事態。これには運営側も必死だから、審査員が飛行場にいなかったのだろう。しかし、本当にファーグルドラゴンに2人が……?

 晴れていた空に薄らと雲がかかり、時折強い風が吹きはじめたころ、小型飛行機は燃料の7割を充填完了し滑走路へ。僕らは中心街へ向けて急速発進した。


 準備期間4日目の昼前。最初の爆発から半日は過ぎている。中心街はレンガ造りの建物が多く、アパートや商店街のようなところは崩れていて原形をとどめていなかった。ほとんど鎮火しており、避難もある程度は完了しているそうだ。情報が錯綜(さくそう)していて、現状の確認は終わっていない。そのため正確な人数や被害は不明である。そして肝心のファーグルドラゴンはもう街にはいなかった。

 恐ろしく静かな街。中心街とは思えない。静かといっても人がいないわけではなく、警備防衛隊と生存者の捜索を行う緊急援助隊が黙々と活動している。声を出して捜索しない理由は、かつて声を聞いたモンスターが集結して救援組を襲った歴史があるからとのこと。聞いてないのにクートが勝手に、しかも長々と説明した内容を()()まむとそうらしい。

 カーミンが緊急援護隊のひとりに話しかけ、僕らに今回起こった騒動の一部を教えてくれたが、詳細は不明としか新たな情報はなかった。カーミンが生存者の”C.P.”の行き先を問うと、その人は生存者が搬送された病院へ向かったと教えてくれた。その病院はカスカータにある大きな総合病院で、どうやらゼルデムとリチューもそっちにいるらしい。どれ程のケガなのかは分からないが、発見できたことにカーミンたちは安堵(あんど)。僕らは小型飛行機でその病院を目指す。


 結局、オズたちと合流したのは昼下がりの午後だった。ゼルデムとリチューは大きなけがはなく即日退院可能であり、今回の騒動で死者は出ていないそうだ。リチューと何人かが避難誘導をとり、ゼルデムと数人がファーグルドラゴンの攻撃を引き寄せたことが功を奏した。さらに2人が負傷して搬送されてすぐに”C.P.”や援軍が到着して避難誘導を引き続き行え、物的被害は大きくも人的被害は少なかった。

 そして、ファーグルドラゴンの謎は結局分からないまま、宝玉を賭けた争奪戦が幕を開けようとしていた。聞きそびれたことは山ほどある。これから”外界街(イディオタガイ)”を巡る戦いをするという実感もない。僕はどうすればいい? 僕がいなくても計画はうまくいく気がする。だってこの前の騒動は僕がいなくても皆が解決したじゃないか。僕の存在は無くてもいいんだ。ここにも居場所はないんだ……。

 僕らのゲーム。違う。僕を除いたみんなのゲームが始まるんだ。邪魔はしないし協力もしないかもしれない。蚊帳の外で、第三者観点で、傍観者として見守るだけだ。それに……


 オズがボスの発言として指示する。ボスなどいない。カケル組もスカイラーが指示を出す。国王が判断するとしても、どちらかがダントツにゴールしては広場に出ずモニターなどで確認して姿を現さない可能性がある。そのため、広場に姿を出してもらうためにあることをする。それは同着だ。ほぼ同時に到着したとき、国王のジャッジが重要になる。マイクや代弁で発表しようとすると、オズとスカイラーの仲間が本当に国王本人によるジャッジかと抗議し、無理矢理にでも広場にて姿を現すように促す。とんでもない計画だ。それを実行しようとするのだから、ものすごい。少なくともオズ組はボスが同着っぽく、ギリギリで勝てと指示されたと言えばコントロールできる。それも盛り上げるためだとか言えば批判はしないだろう。ただカケル組はそうそうコントロールできない。本当に同着など可能なのだろうか。

 争奪戦の開始場所はあの飛行場である。


To be continued…


あくまでもノボル中心に話が進むわけでは無く、ノボルって本来ならばスポットの当たらないキャラですね。ノボルが関与すること無く、街の騒動は終結。取り決め事のため、争奪戦は予定通り実施するみたいです。街の救助活動がC.P.の子ども達に出来るかというと、大人に任せるべきであるのはご尤も。

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