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第10話 僕らのゲーム

 C.P.オズ組のメンバーはオズ、ローブレット、ゼルデム、ノボル、キローヌ。C.P.カケル組のメンバーはカケル、カーミン、クート、リチュー、メイル、スカイラー。一応、オズ組にはテッツーもいるが正式メンバーではないので記さず。

 オズ組が所有する宝玉は”楽玉(ディライト)”と”哀玉(サロー)”。カケル組が所有する宝玉は”喜玉(プレジャー)”と”怒玉(レイジ)”。喜怒哀楽の4つの宝玉をそれぞれ2つずつ所有することとなった。

 これにより、争奪戦を行うこととなった。この争奪戦にも決まりがある。それぞれの組から1名だけ選出し、争奪のルールを決める。決まり次第、イベントの運営側はこれを棄却することなく正式に承認し、サポートが必要ならば人数を補充してでも行うこととする。ただし、ルールが生命を賭けるものや道徳に反するなど(かんば)しくない場合は変更を指示することができる。

 ルールはスカイラーとオズが相談して決めることで一致した。オズ組としては至極真っ当であり、カケル組はカケルがスカイラーを選んだ。カケルが行くとどうなるか分からないし、本人も自信がなかったようだ。

 (はた)から見れば、どちらも譲らず交渉し合い決めてくれると思っているだろう。しかし、スカイラーとオズは既に仲間同士。ルールは自分たちの計画に合うような考え方で、かつ批判されないようなもの。

 結局、ルールは

「ここ、カナーレから公共交通機関を用いずに城下町まで競争を行う。先に城下町の広場に着いた組が宝玉を総取りすることができる」

 と、オズが発表しスカイラーが

「なお、その道中にてカスカータ、ファルナーデタウン、ストーリャの街を順番に通ること。通った証明は各街の(おさ)に会って街のベルを鳴らすこととする」

「移動手段は徒歩またはそれぞれの組が1割以上改造した乗り物のみとする。計画時間は5日間で、その間に準備を行うことを認める。広場の到着を判定するのは、国王とする!」

 オズとスカイラーが決めたルールは、すぐに運営側へ伝えられて正式に決まったのが翌日と早かった。同時に審判としてカナーレに3名派遣された。急げば9時間ほどの距離のようだ。

 審判員はマランという女性とコルポルトという男性、そしてプロフェートという女性であった。

「あれ、マランさん!?」

 カケルが指さしてそう言った。

「知り合い?」

 カーミンが聞くと

「俺を広場まで送ってくれた人」

「審査は厳正に行います」

 どうやら審査員はイベントへの迎えに来た人らしい。それぞれマランはカケル、コルポルトはオズ、プロフェートはクートのようだ。

それよりも、気になったのはオズとスカイラーの考えていたことだ。目的はおそらく真の国王の姿を見ること。本来の国王は別の人だったから……。推測でしかないが、僕はオズとスカイラーの行動に感心を抱くも、同時に怖くなった。本当に実行する気なのだと。ボスがいるなど嘘をついて、調整していたのはこのためだろう。争奪戦の条件は、いくつかの組が同じ数だけ獲得したときのみである。仮に1個と3個だった場合は3個の方が勝者としてイベントが終了する。つまり、争奪戦そのものがなくなり、オズたちの描くように物事が進まない。何としてでも争奪戦に持ち込み、国王の姿を確認できるようなルールにする。これが目的だったのだ。この争奪戦の条件は、僕自身がチッターからごく最近聞いたものだ。それまでは知らなかった。一体どこからその情報を入手したのだろうか……。


 準備期間3日目の夜のことだ。カナーレの小さな飛行場にある小型機の格納庫は2つとも灯りがついていた。片方はオズ組が使用しており、もう片方はおそらくカケル組だろう。

 格納庫では審査員のマランがおり、その視線の先には小型飛行機を改造するローブレットの姿。しばらく様子を見ていると、審査員のひとりであるコルポルトが来て「交代の時間です」と言った。3人が代わる代わる審査することで、両方の組を審査しつつ1人は休憩できるって寸法のようだ。それはどうでもいい。用があるのはオズだが、姿が見えない。てっきりここにいると思ったのに。

 格納庫の外は海風が冷たく少し寒い。三日月の今晩は離着陸する飛行機もなく静かであった。

 手持ち無沙汰な僕は飛行場近くを散歩することにした。といっても田畑ばかりで中心街まで2kmほど歩かなければ何もない。300mばかし歩いてバスの停留所を見つけた。時刻表によると1日3回しかこないようだ。それもそのはずだ。なにせ飛行場は小型機しか飛べないような短い滑走路なので、旅客機など飛べるはずがない。

 停留所の椅子に腰かけ、星空を眺める。雲は少なく、周囲が田畑であることもあり、星が一層明るく感じられる。何分経過したかはわからないが、足音が聞こえる。誰だろう。飛行場方面からだ。

 暗くてその姿は分からない。停留所の前をゆっくりと通り過ぎる。帽子とコートで分かりにくい。……おかしくないか? 星が見えるほど暗いのだが、時刻表は読めるぐらい。しかし通りかかった人物はなぜか全身黒っぽいのだ。黒以外の色を感じられない。不気味だ。

 その人が通りすぎてから15分ぐらい経っただろうか。飛行場へ戻ろうと停留所を立ち去ろうとしたとき、爆発音が聞こえた。飛行場とは逆方向。あの人が行った方角。中心街があるところ。暗闇の中、赤々と燃え盛る炎と黒煙が立ちのぼる。火事だとしてもあれほどの爆音……。

 飛行場から消防車が現場へと向かう。その消防車が停留所を通りすぎた。その直後に再び爆発音。

 何が起こっているんだ? 飛行場へ戻るタイミングを見失い、かといって中心街に行っても何もできない気がする。約2kmを走ってもすぐには着かないし、避難の邪魔になる気がする。それに飛行場で全員いるかどうかを知るために集合して、いないメンバーを捜索しているかもしれない。一旦飛行場に戻ろう。

 飛行場の方へ歩き始めると三度目の爆発。炎を纏った物が弾け飛ぶのがここからでも見えた。少なくとも500mは飛んだのでは……。火柱が空へとあがる。火山の噴火のようだ。何度か振り向きつつも飛行場へ走る。


 飛行場では静かだった滑走路にプロペラ機や小型飛行機が次々とテイクオフ。さらにヘリコプターも飛ぶ。

「ノボル!」

 カーミンとクートだ。カーミンは

「大変だよ。みんな中心街へ向かうとか言ってさぁ……」

「どうなってるの?」

 と聞くと、クートが現状を語ってくれた。何気にこれが初めての会話である気がしたが、それは今どうでもいい。


To be continued…


4個の宝玉を2チームが争奪するので、展開は早いです。当時『フォルスネス』も長編を計画してましたが、如何せん『黒雲の剱』が長すぎて、短くしようと方針変更したのが本作です。実際、執筆は年単位で止まって、2013年に本作の元となるブログ掲載版を再執筆して、2014年に一旦完結し、続編を2016年に執筆しようとして頓挫しました。続編はそのままお蔵入りとなりました。

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