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第1話 国王の命令と感情を司る宝玉

 シューサルト国。現在ジークル国王が治めているこの国は、周辺を果てない海に囲まれた”島国”であり、”海の外にある他国”から見ても比較的平和であるとされている。しかし、その国が唯一認めていない街が国内に1つだけ存在する。それが”外界街(イディオタガイ)”と呼ばれる地域である。この地域には人が住んでいないとされているが、実際には人が住んでおり、生活している。街といえども、現在その人口は1人を残すのみとなってしまった。何年か前に人数が激減した。だが、その理由について分からない。

 ”外界街(イディオタガイ)”で暮らしているのはノボルという少年である。友達無し、家族無し……。心を閉ざして、毎日ギリギリの生活をしている。

 そもそも”外界街(イディオタガイ)”は、シューサルト国の東側に位置しており、海や崖、人工的に造られたであろう巨大な壁に囲まれた場所であり、他の地域との交流がない。農作物は自由に育ち、頑丈とは言えないが十分住めるであろう家々が建っている。パッと見て、一般的な村と呼ばれる集落と(そん)(しょく)のないはずだが、国が村だと認めることはなかった。

 集落は荒れており、管理が行き届いていない。もしかすると紛争が起こったのかもしれないが、それは定かではない。少し荒れた集落とでも表現しようか。少し崖や塀の方へ行けば、ゴミが()てられている。街の外から放棄されたものに間違いはないが、昔はそれを材料として何かに加工していたらしい。だが、その職人も今やこの街にはいない。

 ある日、ノボルのもとへ1羽の伝書鳩が飛んでくる。何故、伝書鳩かと言うと単に”外界街(イディオタガイ)”が圏外だからだ。つまり、”外界街(イディオタガイ)”では連絡手段など無いのだ。逆に言えば、”外界街(イディオタガイ)”以外のこの国が認める町や村では連絡手段がある。それは電話やネット。ただ、携帯電話とコンピュータの普及率は微妙。何故かというと、ネット規制のため普及率がとても悪いのと、高価な品だからだ。一家に一台とは言えないけれど固定電話が多い。なお、公衆電話は無い。

 伝書鳩が運んできた手紙は招待状であった。近々迎えが来るらしい。

(なんで……)

 疑問を抱くも、ノボルは読んだ手紙をポケットに突っ込んだ。断れないイベントへの招待状。いや、招待状と言うより国王の命令状だな。

 シューサルト国の12代目国王が始めたイベントというものがある。そのイベントは現在まで継承されて、今回で10回目となる。イベントに参加する人物は、国民である少年少女のなかから国王が決める。決め方は自由で、ある国王はダーツやくじ引きなど適当に。またある国王は選考会を開き丁寧に決めるともあったとか。今回は果たして、どのように決められたのだろうか。

 国家行事に当たるこのイベントに正式な名前は無い。イベントや祭典、国家行事など呼び方はさまざま。行われる時期は、星座や月の位置で決められて、頻繁に行われているわけではない。本来なら選ばれることはとても光栄なこととされ、選ばれた少年や少女の家では祝賀会なども催されているらしい。

 今回は何人選ばれたのだろうか。


    *


 数日後、迎えが来たようだ。灰色の壁の一部が開く。ノボルには、開かずの門と教えられていた。ただ、誰から教わったのかは憶えていない。

 馬車。ノボルは馬の()(づな)を持つ人物の方を見たが、

「君がノボルか?」

 声は馬車の中からだ。ノボルは(うなず)き、馬車に乗る。中には1人の男性が乗っていた。

「初めまして。私はリカードと申します」

 リカードと名乗る人物は、国王に仕える1人。正装で目立った汚れは無いし、表情は柔らかく、男に対する第一印象は悪くない。宮殿に向かうまでの間、今回の行事の説明をノボル、僕にする。

「今回、あなたにはある宝玉を探していただきます。但し、御一人ではなく仲間とともに宮殿を出発点として旅をして頂きます。なお、この旅を断ることは一部の例外を除き出来ません。また旅を途中で放棄することも出来ません」

 リカードは書類を見ながら僕に説明しているみたいだ。

(そんなのは旅じゃない。目的も行動もほぼ強制され、初対面の仲間なんかで自由はない)

 僕はこの行事に興味なんて無い。でも、国王の命令には逆らえない。逆らえばどんなことになるやら。それに反逆者や英雄の名前は永遠に残されるだろうし、厄介事は御免だ。

 ”外界街(イディオタガイ)”を出るゲートの奥には鬱蒼(うっそう)と生い茂る木々と山があり、その場所も巨大な壁に囲まれ、ゲートを通らないと外には出られないようだ。つまり、”外界街(イディオタガイ)”から他の地域へ行くのには2つのゲートを通らなければならないのだ。


    *


 城下町へは門をくぐり、宮殿へは再び門をくぐる。さっきから門ばかりだ。理由としては城下町は円形の塀に囲まれそこに3ヵ所の門がある。いずれの門にも門番が数人おり、城下町への出入りを厳しく監視しているようだ。その城下町の中心に宮殿があり、こちらには厳重警備の門がある。普段は入れないように閉まっているらしいが、今日は祭典ということもあり、門は開いていた。

 宮殿の前にある広場。屋台が建ち並び、人が多い。壮行式といったところか。

「あちらで人数が(そろ)うのをお待ちください」

 馬車を降りて、リカードが案内した方へ。広場の中心。選ばれた少年少女たち、先客あり。僕は7人中6番目に着いたようだ。

 少年2人、少女3人。後から少年1人で、僕を含めるとメンバーは7人で少年が1人多い。

 壮行式で名前とか出身地が言われるのではないかと思ったが、壮行式は国王の代理人が激励の言葉を言っただけで、ものの10分で終わった。

 10分だから休む必要はないが、言葉の通り本当に休む暇もなくすぐに出発式になり、いつの間にか広場を出発、いや追い出されたと言うべきか。

 これでは初対面のメンバー同士が、行き先などで(けん)()するのも時間の問題ではないか。


 どこに向かっているか分からない。僕ではない1人の少年が

「まずは自己紹介だよな。俺はカケルっていうんだ。ヨロシクな。式で一言ずつ喋るのかと思っていたけど、違ったな」

「うん、拍子抜けしちゃった。あっ、私はカーミン。よろしく~」

「俺はリチュー。料理は俺に任せとけ」

「あたしはクートです。野宿とかは無しで頼みます」

「アタイはメイルだよ。機械なら任せて」

「ノボル」

「スカイラーだ」

 自己紹介は偶然にも到着順だったらしい。それより、キャラが被ってはいないだろうか。ただ、第一印象を大切にしているのであれば、話は別か。遅かれ早かれ、そのうち本来の自分、つまりボロが出てくるだろう。僕とスカイラーは名前しか言っていない。それによって、このメンバーへの第一印象として良くはないだろう。僕にはどうでもいいけれども。


To be continued…


過去のブログ掲載時から修正したのが1箇所。壮行式の所要時間を5分から10分に変更しました。さすがに5分は短すぎるので延長。短すぎるだろという表現をする上では、5分で問題はないですが。

本日から1日おきに更新する予定です。よろしくお願いします。

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