話皇帝暗
転送飛行機内で、ララが歩き回っていた。
手には、皇帝視察計画書がヒラヒラとさせて、盗賊たちに見せびらかせた。
「誰がこの書類を手に入れたの、白状しなさい」
誰も見ようとしない。目をそらす奴や、うつむいて黙り込んだりしていた。
しかし、男の前で立ち止まって「あなたね、素直に話しなさい」
男はビックリして、ベラベラと話しだした。
嘘をついても指摘されて、聞いてもいない事も話しだした。
「アルバート街道をひた走る早馬を発見したんだ。弓で射止めた時に手に入たんだ。これが帝国間の全通行札だ。その時に奴が持っていた」
何故なら、全通行札が偽物だと盗賊は見抜いたからだ。
何かあるだろうと、その事件を利用して一儲けを考えたらしい。
「矢ならすぐに死ぬ事はないわ。何か言い残してなかった」
「確かアルポーンの店って言ったような・・・だけど行ってないぜ。行ったら殺されるに決まってる」
「何故なの」
「殺しを生業にする店なんか、金が欲しくてもまっぴらだ」
「すぐにミライに連絡して、情報を仕入れてくれるか」
ララはすぐに立体映像のスイッチを入れて、チャンネル操作して映し出した。
そしてあれこれ説明をした。
「その情報はないよ。奴らとは揉めていて、こっちの諜報員が1人殺されてしまったから・・・どうしようもないんだ。仕返しに10人を殺してしまった」
なんなんだ。しれっとそんな情報は要らないから・・・
アルポーンは、昼は閉めてる酒場だ。
夕方から営業していて、賑わいのない酒場だ。
酒は不味くて、普通の値段だから用事のある客しか中には入らない。
その酒場上空にステルスモードのまま、屋根ギリギリで転送飛行機が止まった。
ドアを開けて飛び下りた。
「ムシ、穴を開けてくれ」
『わかった』
体を高速回転させて、音もなく開けてしまった。
「今度は、このチューブを天井から差込んでこい」
『わかった』
しばらくして『差込んだよ』と念話で伝えてきた。
タンクのコックを開いた。
『寝込んだよ』と伝えてきた。
消音魔法陣を展開して、屋根を壊して部屋に入った。
むさいおっさんと4人の男が寝込んでいた。
更に下りて来た兵士が、急いで拘束している。
ドアの下にチューブを差込んで、コックを開いていた。
廊下にガスが充満してゆく。
『廊下の見張りも寝込んだよ』
そんな事をして、40人を拘束した。
店の表ドアを開けると、外で待機中の諜報員がドカドカと入って来た。
「すべてを引き剥がしていいから、悪事を暴く証拠を見つけろ」
そしてミライが、むさいおっさんの腹を思い切って蹴った。
痛みでようやく目覚めた。
「お前はミライ、何故ここ居るんだ・・・お、俺を拘束したな。ただで済むと思うな!」
ミライは、おっさんの指を掴むと、一気に折り曲げた。
「ボキッ」と音がした。
歯を食いしばって我慢するが、更に指を折られた。
「やめてくれ」
「俺がやめると思ったか」そう言って指を折った。
そして10本の指を、全て折った。
手を震わせて唸るおっさんに、ポーションを振り掛けた。
折れ曲がった指は、そのまま治った。
しかし、指は変な方向に向いたままだ。
「なんだ。この指は・・・動かないぞ。何故動かない」
ミライは、早馬の事をポツリポツリと話し出した。
おっさんは、うつむいたままうな垂れた。
「そ、それは・・・」
その時だ。ドアが急に開いて「大変です。皇帝が帝都を出た所で襲われました」
おっさん「死んだのか」
報告に来た男は、一瞬、おっさんを睨んだ。
しかし、ミライと俺に戻して「無事のようです。しかし犠牲者が大勢でたようです。なんでも大爆発が起きて地獄そのものだと・・・これが現場映像です」
諜報部が撮影したもので、小型飛行機を遠隔操作して監視していた。
皇帝を王都前で待ち伏せていた。
小型立体映像が映し出された。
大爆発後の映像で、消し炭の死体があっちこっちに転がっていた。
中には半身が焼きただれた死体もあった。
そして、あっちこっちで苦しみもがく声が上げられていた。
皇帝の驚愕した顔が、ズームアップして映し出された。
俺が始めて見た顔だった。
「こんな顔なのか・・・爆破のタイミングがなってないぞ。何か手違いでもあったのか・・・」
俺は、そんな風に言葉に出していた。
おっさんは、苦々しい顔をして映像を見てた。
すぐに映像が変えられた。
皇帝の一団が、急いで帝都へ引き返す場面だ。
100人に満たない数だ。
その時に正門が爆発した。その瞬間が映し出された。
1回目より爆発規模は小さい。
それでも正門は瓦礫だらけだ。
それが合図のように、遠くで隠れていた兵が現れて皇帝を襲いだした。
数にして5千だ。
しかし、空からワイバーンに乗った竜騎士が現れた。
ワイバーンは、炎を吐いた。
焼かれ逃げ惑う兵に、容赦なく襲った。
地上からの矢など、無駄な抵抗だった。
矢が突き刺さらない程に、ワイバーンに表面は硬いのだ。
地上から火球が放たれた。
ワイバーンは、軽々とかわした。
そして反撃にあって、魔術士は焼き殺された。
竜騎士の数は10騎だ。
瓦礫が撤去された時には、遠くに逃げた兵も皆殺しだった。
その映像を見終わった全員が、シーンと静まり返った。
おっさんだけが、「ウッ」と唸って倒れた。
口から血が吹き出していた。
「しまった。毒を飲んだぞ!」
急いで毒消し薬を取り出して、飲ませようとするが、すぐに吐き出した。
そして痙攣した後で死んだ。
ミライ「バカな奴だ」
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