襲撃事件②
ララは、転送飛行機で微調整中の機器を指差して、お願いしてきた。
「領主さま、お願いします。わたしにも最近開発された映像を見せて下さい」
「何回もしつこいぞ」
「お願いします。今後の作戦をスムーズに行なう為に見せて下さい」
そんな風に言われたら、見せるしかないだろう。
手に持った最新装置を手渡して、頭にヘルメットを深くかぶった。
スイッチを入れると、映像が映し出されて声を上げて驚いた。
予備の映像を見るとノイズが入ったままだ。
調整のツマミを回して微調整をすると、はっきりした映像になりだした。
「トッド・アブーラが殺されたのか、そんな事が許されると思ってるのか・・・」
「今回の婚約は、破棄にするしかありませんな」
「そんな事は大した事ではない。ワシの顔に泥をぬったのが許せんのだ。なんとかならのか!」
- - - - - - - -
「領主さま、この映像は何処の映像ですか・・・」
「黒幕に連絡が行った後に、手下がマミヤ領へ行って脅迫状を公爵に送った。そのマミヤ公爵の部屋を映したものだ」
「あれがマミヤ公爵・・・悪い噂と違って凛々《りり》しい方ですね」
「ララは知らないと思うが、もっと卑劣な事を平気でやる化け物だ」
「例えばどんな事をしたのですか?」
もう興味丸出しで、食いついた。仕方ない、話してやろう。
「奴は欲しいと思った物は、裏組織を使って他領の財宝も平気で盗む奴だ。それに人さらいをして他国に売り払う極悪人だ。それだけじゃないぞ。奴と話してる奴も金になるなら何でもする奴だ」
「そんな話をされたら相手が気になります。教えて下さい」
「奴は、この帝国の宰相だ」
「話の途中で分からないのですが、どんな脅迫をしたのですか」
「来年の王位継承順位に、ちゃちゃを入れるなと脅迫文が書かれていたみたいだな」
ララはうなった。
「今の映像を見た感じだと逆効果ですよ。黒幕はバカですね」
「ララは、表面しか見てないな・・・もっと裏の裏を見る事だ」
そんな時だ。機内の魔道通話を知らせるランプが点滅して、ピピピと鳴り出した。
ララは急いでスイッチを入れた。すると立体映像が映し出された。
映像に映し出されたのは、領主ドルド・アブーラを見張らせたマイクだ。
「大変です。身代金の要求した手紙が舞い込んできました」
「金額は、いくらなの・・・」
「10白銀とアブーラ家の宝【ナシャル剣】です」
「めちゃくちゃ吹っ掛けたな・・・それで払うのか」
「必死に集めても8白銀が限界でしょう。なので【ナシャル剣】は、差出すようです」
「領主さま、これはどうなってるのですか・・・わたしには、サッパリ分かりません」
「俺の考え過ぎかもしれないが、黒幕なりの計画でマミヤ公爵を脅迫して、ついでにアブーラ家で金を要求したんだろう。アブーラ家の内情も詳しく調べ上げたのだろうな」
「話の途中で申し訳ありませんが、【おたすけ組合】に誘拐事件の解決依頼が来ました」
ララは、驚いた顔をした。
「その噂を最近聞くのですが、事件解決100%って嘘くさいですよねーー」
「なんだ、ララは知らなかったのか・・・諜報部の訓練でやっている副業だ」
ララは口を押さえて驚いた。
「こうなったらサラ・アブーラ嬢を助けるしかないな・・・マイク、その誘拐事件を受けてくれ。成功報酬は4白銀と【ナシャル剣】だ」
「承知しました」
「もう夜になったし、4時間後に決行するぞ。ララも少し仮眠をとれ」
「分かりました」と言って自動運転に切り替えてから、毛布にくるまって床に寝てしまった。
え!もう寝息が聞こえたぞ。もう寝たのか・・・鑑定結果は熟睡だ。
ちょうど屋敷の上空に止まると、ドアを開けて円盤型移動機でゆっくりと屋敷に下りた。
窓に近づき、ムシを呼び寄せて窓ガラスに穴を開けるように指示した。
慣れたもので体を高速回転させて、小さな穴を音も出さずに開けてしまった。
俺は、その穴にチューブを差込んだ。そしてタンクのコックをひねった。
一気に無色透明なガスが部屋を充満した。
ここのボスが深い眠りに落ちるのを見続けた。
「ムシ、ガラスを大きく開けろ」
ムシは、又も高速回転してガラスに大きな円を描きながら切り取った。
丸く削られたガラスが外側に落ちた。
オ、ト、ト、滑り落ちそうになったぞ。
そっと手を突っ込んで、窓のとめ具を解除した。
そしてゆっくりと開けて忍び込んだ。
眠りガスを無効にする薬を飲んだので、2時間程は大丈夫なはずだ。
ボスを拘束具を使って、手と足を拘束してやった。
これで目覚めても動けなくなるだろう。ざまあみろだ。
この部屋を出て、隣のドア下にチューブを差込んで同じ事した。
「ムシ、見て来い」
スススと下からムシは入り込んだ。
『寝てた』
「よし、穴を開けろ」
開いた穴に手を突っ込んで、そして開錠して入った。
そんな事を次々にやった。
最後に残ったのは、地下の牢屋だ。
牢屋の前には男が椅子に座って、ウトウトとしている。
そして、ハッとして立上がった。
「いい夢だったのに」
階段下に向けてガスを出した。
男は崩れるように「ドサッ」と倒れた。そしてグーグーと寝ている。
この男も拘束してやった。
気持ち良く寝てたので、腹に蹴りを食らわした。
「ウッ」と、うめき気絶した。
魔道通話で「外の奴らを始末していいぞ」
「了解しました。好きなようにしていいですか・・・」
「ああ、いいぞ」何をする積もりだ。まあ、いいか・・・
そして鉄格子を剣でサッサッと斬った。
鉄格子はカランカランと大きな音を出して倒れた。
「この剣は、凄い切れ味だ」
そして中に入ると、サラ嬢はすみっこで寝てた。
可哀想に猿轡で口が塞がれたままだ。
手も拘束されたままだ。
顔は、泣いたあとがハッキリと残っていた。
サラ嬢を円盤型移動機の乗せて、浮遊しながら外に出ると、見張りの男の頭が吹飛んでいた。
ああ、そんなグロい物をみせるなよ・・・
ドルド・アブーラ侯爵に無事に娘さんを返した。
【おたすけ組合】の名は、一気に帝国中に広まるだろう。
それだけの大事件だ。
そして、アジトの屋敷も知らせたので、大勢の兵士が捕らえに向かったらしい。
2日後にムシ2号が知らせてきた。
黒幕の屋敷が襲われて、屋敷は燃やされてしまった。
火事のせいで隣の屋敷も燃えたのに、その情報はあまりにも知られず、噂にも上がらなかった。
しかし、重要な書類は盗み見て記憶したから大丈夫だ。
少しだけだが、裏事情が分かった気がした。
もし面白ければ。
下の項目の☆☆☆☆☆でポイント応援して下さい。
良ければ5点、悪い1点でもお願いします。
気になる方は、ブックマークを付けて下さい。
書く為の応援をよろしくお願いします。