新たな世界
それは突然だった。ハクセンが念話で話しかけてきた。
『我の古い記憶に、目の前の木と同じような木を見たような・・・』
俺はハクセンを睨み返した。
「なんだと、もしかして魔法国の星の事か・・・」
『思い出したのだ。一度だけだが偶然に出来た異界の切れ目で行ってしまった世界だった』
「ならば違う星の事だな・・・それでどうなった」
もう要点だけ話せと、なんだか気が焦った。
『散々な目にあった。それ程に巨大な力の持ち主だった』
「もしかして行けるのか? 行けるのなら行って見たい」
『主も変わった方だな・・・いつでも行けと言えば行く事が出来るが、心して行かねばならない・・・それ程の力なのだ』
「分かった。ローランに帰ってから準備をしよう・・・その力に負けない準備を・・・」
「皆!妖精王オーベロンも喜んだようだ。それに敵対する存在でも無い事が分かった。もうここには俺らが居る必要もないだろう。かえって迷惑かもしれないから帰るぞ」
リアン「それがよろしいでしょう。機嫌がいい今が帰り時だと感じます。それ程の力の持ち主です」
「え!もう帰るの・・・仕方ないわね」
コハクとクチャは無邪気に遊んでいたが、緊迫した雰囲気に気付いて怪訝な顔で見ていた。
「コハクとクチャ、悪いが帰るぞ」
『帰るの・・・ほんとうに』
「皆!転送で帰るぞ!心の準備をしろ!」
皆の顔を見て確認した。
魔石を取り出した。ここからならこの魔石で十分だ。
ブツブツと呪文を唱えた。魔法陣が全員の下に展開して一気に発動した。
やはり使い勝手が楽になっていた。熟練度アップのおかげだ。
城へ一瞬で帰ってきた。
「さあ、話してちょうだい。魂胆は分かってるのよ。あなたの微妙に出る表情で、わたしは理解している積もりよ」
なに!俺にはそんな癖があったのか・・・
それに今回の相手は相当な力がありそうだ。
アリッサのステータスアップがあれば、それだけで有利かもしれな。
ここに居る全員に、ハクセンの話をかいつまんで話した。
「え!ハクセンて違う世界のドラゴンなの・・・知らなかった。どうりでテレパシーが通じない訳ね」
『変な目で見るでない』
「するとコハクもそうなの・・・」
『そうだよ』
俺は、転送飛行機を出して、ここの座標位置をセットしていつでも転送出来る準備をした。
もしもの時に、俺が居なくても転送して帰れるように。
そんな事が起きないに越した事は無いが、準備だけはしておきたい。
そうだ。砲撃車体も収納して、もしもの時に使用しよう。
最新の魔法砲弾が更にトンでもない威力を秘めていた。
前の威力の10倍だ。
呼び寄せたハチが勢揃いしている。壮大な景色だった。1万を超える数だ。
通常任務のハチ以外も収納していった。
そして妖精王と会ったメンバーが集まった。
それぞれが戦闘に向かう装備で身支度をすませていた。
アリッサは、赤を基本にした軍服だ。
軍服には、ポケットが幾つもあって、なにかしの物が入ってるようだ。
バーダラ国の秘密兵器かも知れない。
何故なら鑑定でも理解不能だからだ。
ララやリアンは、普段着だ。
これでは不味いな、胸当てを取り出してちゃちゃっと改造した胸当てを手渡した。
「胸当てのサイドに魔力を流すと、体にフイットするから試してくれ。それとこれは腕輪だ。このボタンを押せば結界が張られて守ってくれるだろう」
「ありがとう御座います」
2人とも何度もお辞儀をした。
「あら、わたしには無いの」
「え!いるのか」
「腕輪ぐらいくれてもバチは当たらないわ」
仕方なく腕輪を手渡した。
「ハクセン、メンバーも揃ったぞ」
『その前に、コハクはここに残れ』
『え!なんで?』
『安全が確認出来るまでここに残れ。我の命令だ!』
しぶしぶだが『わかった。次回は連れてってよ。クチャ、おいらの分も頑張ってね』
『ああ、分かったよ』
『それでは行くぞ』
魔法陣が出現して、皆を包み込んだ。
なんて冷たい風なんだ。
『おかしい。以前はこんな感じではなかった。何かあったのか・・・』
見渡す景色は、白い雪におおわれていた。
極寒の世界だ。
枯れはてた木が、雪の重みでガサッと倒れた。
俺は魔眼を発動して、白い景色を見渡した。
まったく生命が見られなかった。
「これは、おかしい」
「領主さま、申し訳ありませんが、衣服を出してもらえませんか」
3人の女性は、唇を紫にして震えていた。
ああ、そうか・・・急いで厚手の服と毛布を出した。
そして、転送飛行機を出した。
3人は駆け込んだ。ララが暖房スイッチをすぐに入れた。
「ああ、あったかい」
暖房の噴出口に群がって暖をとりだした。
「ああ、寒かったわ。こんな経験は始めてよ」
「あの寒さは異常です」
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