アリッサ・パーラーの秘密を見た
アリッサが執務室に入るなり「学校をつくる必要があるわ」と急に話し掛けてきた。
「何事ですか・・・衛兵、むやみに人を入れるな」
後ろでは、追い駆けてきた衛兵が困った顔で引き止めているが、まったく効果はなかった。
「あなたたちも止めるのは無駄よ。大事な話なんだから」
そしてセバスの制止を振り解き、又も話し出した。
「魔法国から来た人たちは、あなた達が作った通訳機で話せるけど、読み書きは出来ない状態よ。このままでいいと思ってるの。学問を身につかせるのも領主のつとめなのよ」
それより、いつまでここに居る積もりだ。
お前の領地はどうする積もりなんだ。そんな風に俺は思った。
それに学校って、帝国にも貴族学校はあったが、俺は通ってない。
だから学校自体よく分からなかった。
「学校って、なんとなくしか知らないんだ。セバスから教えられた事と本を読んで自分自身で学んだからね」
「そうなの・・・あなたも苦労してるのね。分かったわ、わたしが協力して上げるわ。わたしが学校をつくるわ。あたなは金と人材を提供しなさい」
「金と人材か・・・分かったよ。セバスあとは頼んだぞ」
「そう・・・それでいいのよ。忙しくなるわ」
ツカツカと元気よく、執務室から出て行った。
セバスは、「え!」とただ見送るしかなかった。
そして思いついたように、アリッサの後を追った。
遠くでセバスの訴える声が聞こえてきた。
「アリッサさん、ここでのルールを守ってもらう必要があります」
「わたし悪い事は言ってないわ。それとも良い意見も聞く耳をもたない積もりなの」
「そんな事は言ってません」
ああ、セバスにも苦労を掛けてしまった。
学校が出来るまで、セバスは難題が待ち受けているだろう。
なんと教師候補の面談を始めてる。
俺が作成した。鑑定名簿で賢い人材をサバスに集めさせた。
「あなたは、本を読んだ事があるかしら」
「はい、ここの図書が無料なので、趣味として読んでます」
「そう、ならば人を教えた経験はあるかしら」
「教えた経験は、ありません」
「いいわ。あなたを採用します。次の人にかわって」
そして何人も雇った。
魔法国から来た人たちが住む街の外れに、巨大な建物が建ち並んだ。
「もう勘弁して下さいよ。アリッサさん」
「まだよ。広大な広場を作ってちょうだい」
「アリッサさん、魔力の消耗が激しいのでもう終了ですよ」
「そうはいかないわよ。最近になって開発された魔力回復の薬を持って来たわ」
「あんたは鬼だ!」
「いいから働きなさい」
シレンとマイヤは、薬を飲んだ。あまりにも苦さに吐いた。
「あなた、この薬もタダじゃないのよ。我慢して飲みなさい」
苦い薬をシブシブと飲んだ。
飲んだ途端に、あんなに消耗した魔力が徐々に回復してゆく。
「あ、ホントだ!魔力が回復してる」
「マイヤ、なにを喜んでる。また働かされるのが分からないのか・・・」
「だから、一生懸命に働きなさい」
2人は大地に手をついた。
「マイヤ!一気にゆくぞ!」
「はい!」
手から魔力が流れた途端に、大地がグラグラと動き出した。
そして凸凹の大地が、広大な平地の広場になってゆく。
土木隊の隊長が、その広場を見ながら「いい出来だ。これで今日の仕事は終わらせてもらうぜ」
「仕方ないわね。いい仕事だったわ」
そのまま振返って帰った。
「ロベルトさん、すいません。あの方はあんな感じで申し訳ありません」
「ララがあやまる必要はないよ。これも俺らの仕事だからね。それにしてもこの広場は必要だったのか」
「なんでも模擬戦をさせるそうです」
「なんでそんな戦いをさせるんだ」
「なんでも、ここの住人と違って魔法国の住人たちは弱い人たちのようです。魔の森で暮らすなら少しでも強くあるべきだと言ってました。だから早い段階での戦いの知識が必要って・・・」
あれから1ヶ月が経っただろう。
あの広大な広場では、赤いタスキをした軍と黄色いタスキをした軍が睨み合っていた。
壇上のアリッサが「勝った軍は、飴のご褒美が待ってるから気合を入れて戦いなさい。それでは始めなさい!」
俺はムシとリンクして見てる中で、子供たちは軍同士の戦いのように戦いだした。
武器はゴム製の剣や槍で、叩かれても突かれても痛くないようにできていた。
頭に括り付けた紙風船が、潰されたら戦いの場から退場だ。
大人の教師が、潰れても戦い続ける子は、強制的に退去させていた。
「イヤー、この鬼切りを受けてみろ」
「あんたのへなちょこなら、打ち返してみせるわよ!」
剣が打ち返されて、できたスキに頭を叩かれていた。
「しまった!」
最後の2人の戦いは終わった。
50対50の戦いは、赤組が勝利した。
勝った赤組は、勝利に酔いしれていた。
俺は、この模擬戦でアリッサの能力の秘密を垣間見た気がした。
あれは子供の戦いでは無かった。
子供のステータスが、アリッサの号令と同時に跳ね上がった。
ムシとのリンク率が上がったせいで、鑑定ができるようになった。
その鑑定結果でも明らかだ。
2倍に跳ね上がったのは、力と素早さだ。
子供のステータスが2倍なら相当なものだ。
動き方が半端ない程だ!
それに勉学で遅れた子供は、放課後も残されてアリッサが見てる中で、知力が上げられた。
そして1時間で、今日の遅れた勉強をマスターしていた。
その事から、任意のステータスを上げる事ができるようだ。
そんな能力は初めてだ。
あの魔道武器以外にみた事がないぞ。
それも複数に同時に上げるなんて・・・
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