スパイ
帝国の貿易都市であるライデンヒルから、新たな職人と家族がローランにやって来た。
俺とララで選んだ家族を、1階は店と作業場で2階住居を見せて回ってた。
「おかあさん、見て見て、これをひねったら水が出てきたよ」
「あらホントだわ! それにキレイな水ね」
台所の魔道コンロを見て、又も驚いた。
それに魔道照明も、各部屋に付いていたので、子供は点けたり消したりして怒られていた。
旦那さんは、家具道具を1つ1つ触って使っては驚いていた。
ライデンヒルから持って来た道具が、子供のおもちゃのように感じ出した。
「このノコギリは、切ってる事さえ忘れる程に軽く切れるぞ。こんな物があるなんて驚きだ」
今度は、家具用の塗料を手に取った。
「これが例にワックスですね、この光沢は鏡のように写り込むので評判でした。欲しくて探し回ったのにここにあるなんて」
「どうだララ大丈夫そうか・・・」
「深層心理を深くみましたが、大丈夫でした。悪魔のマインドコントロールには犯されてません」
「そうか、それはよかった」
「本当によかったです。あの家族の末娘が大勢が見てる大通りの中で、貴族の馬車に轢かれるなんて・・・」
「だから選んでララがみる事になったがな・・・」
それは3日前の出来事だった。
「なに、帝国から貿易船が来ただと! セバス、それは本当か?」
「本当で御座います。5日も早いので何かあるかも知れません」
「兵士たちに注意するように伝えてくれ」
「すでに伝えて応援も呼んでます」
「ならば迎えに出るか・・・」
沖に停泊した貿易魔道船から小型ボートが接近してきた。
キレイになった湾内に入ってきた。
「お前がシンか、出迎えご苦労」
又も偉そうなおっさんが現れた。
あのボレン・ガーデルが死んだので、まともな奴が来ると思ってたのに期待ハズレだ。
セバスは、スススッとおっさんの傍らによると袋を手渡した。
「ジャラッ」と一瞬、音がした。
おっさんはにニヤリと笑っていた。
おっさんが引き連れた兵士も見て見ぬふりだ。
そんな姿を見たくない俺は、なにげに後ろを振向いた。
その時に女の動きが気になった。
俺が連れて来た兵士を、チラチラと確認してこっちにも何度も見ていた。
俺は鑑定して見た。
サイヤ・ヘード
HP8
MP5
STR1 VIT2
DEF1 INT2
DEX1 AGI2
悪魔のマインドコントロール
なに!悪魔のマインドコントロールてなんだ。
再度、詳しく見た。
1週間後に症状があらわれて、掛けられた命令を実行する。
それは本人すらあがなう事はできない。
そんな怪しい事が見えた。
この女はたしか、10日前にライデンヒルより来た女だ。
しかし悪魔のマインドコントロールは無かった。
なんとなく読めた気がした。
帝国のスパイだ。
ここにも配置していた黒騎士に念話で「捕まえろ」と念じた。
動きは早かった。
黒騎士2人に両脇を抱えられて、口もふさがれたまま引っ立てられた。
向こうのおっさんも兵士にも気付かなかった。
私服の兵士が、黒騎士に命令されて女の前に出て見え無くしたからだ。
サイヤ・ヘードは、牢屋の中から悪態をついていた。
「帝国の裏切り者が、貴様らを殺してやる」
すっかり人格が変わっていた。
そんなサイヤの前にララがやって来て、椅子に座ると優しく話し出した。
「あなたの父親は、帝国の兵士に殴り殺されたのを忘れたの、あなたもひどい目にあってるはずよ。それでも帝国を信じるの・・・」
「なにを言うか、わたしは幸せに暮らしていた。父親も帝国で高い地位についている」
「領主さま、嘘は言ってません。信じられませんが、言った事を信じてます」
「ライデンヒルのミライの報告だと、父親は殺された事は間違いないぞ。目撃者も大勢いるからな、ミライもそれを見ていた」
「大勢が見てたのですか、それで兵士はどうなりましたか・・・」
「たしか、おとがめナシだ」
「それはおかしいです。あえて見せているいるように感じます。もう1度どみてみます」
ララは真剣な瞳でサイヤを見続けた。
ああ、記憶が改ざんされている。
何なの、この禍々《まがまが》しい目が見詰めて来た。
それは黒い髪の長い女で、キレイな目で禍々しく引き込まれてしまいそう。
これは微かに残るサイヤの記憶だわ。
深層心理の奥深くで、サイヤは貴族になっていた。帝国に忠誠を誓ってる。
もう別人格が形成されている。
「成る程、サイヤは別人格にされて帝国のスパイにされたのか。しかも敵対勢力に上手く潜り込ませて密告させる訳か・・・恐ろしい作戦だ」
「諜報部に知らせる必要がありますね」
「それはセバスに言っておこう。ララは見破れるか?」
「時間を掛ければ見破れます。1時間も掛かりますが・・・」
そして、新たに1人が発見された。
牢屋の中で、今は治療中だ。
回復魔法のビリアを中心に取り組んだ。
「どうだビアン」
「少しですが、人格を取り戻してます。後1週間も治療を続ければ治ります。しかし、こんな事をする帝国は許せません」
「そうだな、絶対に許せないな」
これが切っ掛けで、精神治療の分野で飛躍的に進歩していった。
執務室でのんびりとしていた。
それなのにドアが「コンコンコン」とノックされた。
「セバスです。入ってもよろしいですか」
「入ってもいいよ」
「ミライより連絡がありました。【悪魔のマインドコントロール】の使い手が反勢力によって処刑されました」
「そうか、情報屋にそのままの情報を流した事がよかったようだな」
「はい、そのようです。・・・なんでも異国の難破船の生き残りだったそうです」
「そうだったのか・・・せっかく生き残ったのに・・・」
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