夜逃げ
俺は門の近くで隠れて見てた。
門の警備は、魔術士に対して穴だらけだった。
マントで頭を隠しているのに、身分証明の確認も無い。
面を取る事など、全然無いのだ。
本人すら面をとれないでいるのだろう。取れば、恐ろしい事が訪れるからだ。
取れば必ず死ぬ呪いが掛けられていた。本当にクソな国だ。
皆、特殊な乗り物に乗っているか、門の近くの台に転送して門に入っていた。
だから俺は、あの台に転送して入ってみようと思う。
この魔法王国が、どれ程の進入に対処してるのか試したい。
いざとなったら逃げる作戦だ。
図書館での知識は魔法が90%を占めていた。
この城の全体の防御や魔法結界は無かった。
何事にも経験と失敗が大切だ。
転送開始。
あの台の中心に立っていた。
さあ歩いて行こう。ああ緊張してきたーー。
俺が門を潜っても誰も声を掛けてこない。
なんだか走って逃げたい気分だ。
あ!門の中に結界のスイッチがあった。
ああ、これがこうなってこんな関係になってたのか・・・
やばい立ち止まり過ぎた。
ようし門を出た。左に行けば魔法関係の武器屋があるはずだ。
おおこれが武器屋か10軒も並んでる。
1軒目のショーウィンドウには高い値段なのに、どれもこれもヘボ武器だけだ。
ここはパスだ。
店構えはいいのに、鑑定してがっくりする杖や指輪でどうしようもない店だ。
次に行こう。
全てを回ったがいい物は全然無い。
諦め掛けた時に、路地の看板に気付いた。
まあついでだ寄ってみよう。
入った瞬間から、品揃いに驚いた。
アルタの杖
INT+3
DEX+1
雷魔法+2
凄いと言うしかなかった。
「お客さん、いらしゃい。もう1年ぶりのお客さんね」
可愛らしい女の子だ。
「いい物ばかりだ。それなのに客が来ないのか」
「色々と問題があって」
「この杖を買うから教えて欲しいな、なんか気になって・・・」
「金貨50枚だけど大丈夫」
50枚を数えて手渡した。
「せっかく売れたけど、50枚では解決出来ないわ。あと950枚も必要だから」
「それって借金か・・・買ったから教えてくれてもいいと思うが」
「うちのじいちゃんは頑固なの、ここの宰相からリベートの要求があったの、しかし出す必要は無いと断ってから、嫌がらせで客も来なくなったの・・・」
頑固そうなじいさんが奥から出て来た。
「ラン、お客に余計な事まで言うな」
「だっておじいちゃん、杖が売れたんだよ」
「どうもシンです。できたら話を聞かせて下さい。私は海外から来たので、ここの商品が凄くいいのに驚いてます。出来れば海外で店を開きませんか?」
「あんた海外の人か、その面はどうした」
俺は面を外した。
「あんたもよく入れたな、見つかれば死罪だぞ」
「大丈夫ですよ。見つかれば転送で逃げます」
「あんた、転送が出来るのか・・・目利きも出来るみたいだ・・・ランの事を考えたら海外もいいかも知れないな」
あ、話に乗ってきた。
「私の所の王も大変に優しい方で、この商品なら国の繁栄になると考えるでしょう。手付けに950枚を出します」
亜空間袋から金貨の入った袋を2つを取り出した。
そしてテーブルの上に置いた。ランは必死に数えている。
「なんじゃその袋は!」
「気になりますか・・・私が作った物です」
腰から袋を取って、手渡した。
「見てもいいのか」
「どうぞ好きなだけ見て下さい」
「成る程、あんた以外は取り出せないみたいだな。どれぐらい入る」
「そうですね・・・噂になっているドラゴンでも10体でも軽く入ります」
「ならば、この店の全ても入るのか」
「まだまだ余裕があり過ぎます」
夜まで話し込んだ。
宰相は1年半前に息子が交代した。その結果このようになったらしい。
その結果、我が領土へ来てくれる事になった。
今夜決行する予定だ。
店の全て収納して生活用品も全てだ。
決行の時間が来たので、手を握りあった。
そして転送を開始した。
床に魔法陣が展開されて転送が始まった。
例の山の中だ。
「本当にあんたの使い魔なのか・・・」
「間違いありませんから、大丈夫ですよ」
「おじいちゃん、情けないよ。使い魔のドラゴンなら心配ないよ」
「じゃあ呼びます」
魔法陣が現れてドラゴンが出現した。
あんなに気丈だった女の子も、緊張している。
『何か用かな、主殿』
「俺ら3人を、俺の星に転送してくれ。お前の背中に乗るから落とすなよ」
『そんなヘマはしません』
「さあ、このドラゴンの背中に乗って下さい」
2人が乗る間に、ロープを使ってハクセンを巻いて、俺らを固定した。
体に巻いたロープを再度確認した。
あの2人は転送など経験がなく緊張の連続だ。
「これは精神安定の薬だから飲んでください」
「この薬って美味しい」
2人して飲んで、やっと元気になった。
「ハクセン、やってくれ」
言われた途端に転送が開始した。
ハクセンが空を舞っていた。
前回の魔術士を食らってパワーアップしたので元気だ。
だから眠気もないまま、我がローランへ飛んでいる。
「おじいちゃん、飛んでるよ。凄いよ」
「おおお!」
「おじいちゃん、大丈夫よ」
すぐにローランへ着いた。
城の広場でセバスが迎えに来てくれた。
「え!それは本当か・・・嘘は言ってないな」
「シンさまに嘘など言いません」
俺らが転送してから5時間しか経ってなかった。
転送で時間の歪でも発生したのか・・・
「ハクセン、お前はどう思う」
『時間などは余り気にしないので、分かるはずもないのがドラゴンだと思うが・・・』
結局、分からないと言いたいのか・・・すなおに分からないと言えばいいのに・・・遠まわしに言う奴だ。
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