新たなドラゴン退治
旧屋敷の会合室には、女や子供が疲れた表情で揃っていた。
そしてセバスから説明を聞いてしまった。
「なんだと、この20人が2日前に帝国から送られて来た罪人なのか? そして俺の不在をどうやって誤魔化したのだ」
「病気で寝込んでいると言って、うつるかもと言って役人は納得したようで合わせないで済みました。それとこの者たちは、アブラム男爵の血縁者で・・・」
「アブラム男爵・・・聞いた事もない貴族だな。それに何を言葉を濁している」
「それは私が言いましょう。アブラム一族は帝国の陰謀によって領地を奪われた。あんな金鉱さえ見つからなければ、こんな醜い事にはならなかった」
その言葉を発したのは、アブラム男爵家で生き残こった息子のショーンだと、セバスが耳打ちしてくれた。
鑑定結果は、13歳でスキルに剣士と表示されている。
将来的には、物凄い剣士になる事が約束されたようなものだ。
ただし努力も必要だ。
それに金鉱の言葉だけで、なんとなくだが理由が分かった気がする。
金鉱目当てではめられたのだろう。
「シンさま、まだ誰が黒幕なのか分かっておりません」
「この段階で分からないのか・・・凄い用心深い奴だな」
「わたしも、そう思います」
「私は、兵士から領主さまの人柄や帝国をどう思っているのかを聞き及んでいます。どうか私を兵士の1員に加えて下さい。絶対に後悔はさせません」
「セバスよ、あのように言っているぞ。後はサラス隊長の任せればいいかな」
「それがよろしいかと思います。ショーンよ、聞いての通りだ兵士見習いとしてはげめ」
そしてセバスは、兵士に手で合図を送っていた。
兵士に追い立てられるように20人は、部屋から追い出された。
ショーン以外に、特に気になった恩恵を受けた者は居なかった。
「これが今回の帝国商人から支払ってもらった金額です。こっちの帳簿が密貿易の金額になります」
「密貿易は順調だな、帝国の収入の半年に相当する金額になったか・・・」
「ここに来て半年も経ってませんが、凄い金額になってしまいました。黒騎士の働きが凄いからでしょう」
「そうだな、24時間働いて金属や宝石と魔石まで取って来るからな、しかも文句を言わないから助かってる部分が多いな。重労働はなんでもやってくれるのがいい」
「なにか褒美をあげてみては・・・」
褒美か・・・アンデットが喜ぶような物があったかな・・・
ゴブリンの魔石がいいかも知れないな。
何か知らないが美味しそうに吸収してたからな。
話が終わったのでセバスには、今後の20名に付いてあれこれ指示して、屋敷を出た。
そしてここの兵器庫へ寄った。
若い兵士の2人が、直立不動のまま緊張したようすで立っていた。
「全ての武器や防具は揃っているな」
「はい、仰せの通りに集めて揃えています」
「よし、開けてくれ」
言われるままガチャゴチョと鍵を開けてくれた。
「いいな、誰も入れるなよ」
「はい」と元気に返事が返ってきた。
兵器庫でスライムの魔石を取り出して、錬金術を施してながら進んでいった。
コーティングされながら、武器や防具が真新しく強化されている。
パワーアップした為に、強化されたのだろう。
剣を手に持って眺めても、以前より鋭くなった事が理解できる程だ。
振った感じも申し分ない。
そして、全てをコーティングし終えた。
なので武器庫から出ると、若い兵士が「領主さま、港に新たな国への貿易に向かっていた船が、戻って来たと連絡がありました」
「そうか・・・分かった」
たしか、セバスがそんな計画を立てた事を思い出した。
港ならすぐだから、見てみようか・・・
大勢の人が群がって、何かを見ていた。
何を見てるんだと人垣のスキから覗き込むと、肌の色が赤く顔には毛が一切ない人が6人も居た。
身なりも見た事が無い服を着ている。え!尻尾が生えていた。
すぐに鑑定した。
マルモ・マッコイ(亜人)
HP20
MP35
STR3 VIT3
DEF3 INT7★
DEX3 AGI3
風魔法 火魔法
それなりのステータスだ。
それに亜人って表示されている。ブレーメン国の人々と同じ亜人だ。
姿が違うから、その土地に応じてか別の要因で人間から変わったのか・・・
その6人の隣には、ララが通訳をしているようだ。
ララはにこやかに微笑んで話していた。
しかしあの亜人たちの表情は、まったく読めない。
あの顔の小さな目が何処を見ているのか、それすら分からない。
人間なら目を見て話すのが基本だ。だから分からないのか・・・それにあの声はなんなのだ。
「チチッチチチッチ」で会話が出来てしまっている。
ブレーメン国とは、全く違う言語だ。
俺の後ろで、誰かが軽く肩を叩いた。
振向きながら「誰だ!」と言い放った。
「これは失礼しました」
深々とお辞儀をしたのは、ミヤンダ・ゴルドールだった。
ここ最近になって商売人のロゲルのライバルとされている者だった。
そして今回の貿易の中心人物でもあった。
身なりはラフな感じの女だ。
商売をやるからなのか、言葉づかいが男のように話す女だった。
「ミヤンダ・ゴルドールです。領主さま・・・今回の貿易は有意義な貿易となるでしょう」
「それはどんな意味だ」
「あの者たちは、バーヤン国の代表で御座います。このローランと同盟を結びたいと来て頂きました。わたしも帰って話しますと言ったのですが、急ぐ話だと押し切られてしまいました。その点は申し訳なく思ってます」
またも深々とお辞儀をして謝っていた。
訪問した理由は、バーヤン国では白いドラゴンが暴れまくっていた。
その被害は増大する一方で、国は大変困っていた。
それを聞いたミヤンダは、ローランでのドラゴン退治の話をしてしまった。
同盟と言っているが、ドラゴン退治をして欲しいのだ。
それは切実な思いだと、ミヤンダの話の内容でも分かってしまう程だ。
ドラゴン退治すれば、バーヤン国は喜ぶだろう。
今後の貿易も、いい感じで続けられる事だろう。
ミヤンダも、商売上のよい機会だと思っているに違いない。
城の会議室では、あの「チチッチッチッチッチ」が亜人の間で何度も会話されていた。
「領主さま、ようやく決まりました。報酬として1万パーツを支払ってくれるそうです」
「1万パーツってこっちの価格でどれくらいなんだ」
「それが帝国の年収を2倍にした価格です」
「え!そんなに出して大丈夫なのか? 年収の2倍なんて・・・とんでもない金額だぞ」
「ドラゴン退治に比べると、まだ安いとマルモ・マッコイは思ってます。なにせ本心が聞けてしまうので・・・」
成る程、嘘が通じないのか・・・あれ?・・・ララに対して思った事が筒抜けなのか・・・他の事を考えろ。
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