ローラン号
完成した輸送船にローラン号と名づけた。
初めてのローラン領の船だからだ。
魔の森で伐採されて乾燥した木材が、クレーンで持ち上げられて船内倉庫へ収納。
商人ロゲル・スライヤーは、その材木の数を確認して回っていた。
倉庫から叫んだ「これで最後ですかーー」
甲板からのぞく船員が叫んだ「これで最後ですーー」そして手を大きく振った。
ロゲルは、ブツブツと言いながらメモに書き込むのに夢中だった。
操縦席には、副船長が舵を握っていた。
久し振りに握る舵で、少し緊張気味だ。
この男は、帝国の海軍で船長をしていた男だった。
この船の船長も、同じでこの男の先輩だ。
「サガ、なにを緊張してるんだ」
「久し振りなので、なまってないか心配で」
「俺も人には言えないが、緊張している。この船自体がどう動くのか予測が出来ないからな」
「船内の起動式を見ましたが、あれで動くのか不思議で溜まりませんよ」
「そうだな。別次元の物だ・・・それに操縦のレクチャーを受けたのも昨日だから、従来の操縦が役にたたないだろう」
「本当ですよ。あれで動くとは、今でも信じらえません」
操舵室にロゲルが入ってきた。
「商品の確認が終わりましたので、出航しても大丈夫ですよ」
船長は、魔道通話に向かって「こちらアーレン船長だ。開門を頼む」
「了解」
すでに海水は満たされていた。
絶壁門がゆっくりと開いてゆく。
ローラン号が絶壁門から姿を現した。
それは造船場と同じくらい大きな魔導船で、想像してたより間近に近づくにつれ、巨大さに驚く。
帝国の魔道船の3倍だ。
それは街から見に来ていた人たちも同じだ。
拍手をするのも忘れて、ただ見ているだけだ。
俺が指示した通りに、最低速度のレベル1で湾内をゆっくりと進んでいる。
下手な操作でぶつけられでもしたら、製造した俺の立場がなくなる。
やっと湾内を出た。
我に返った住民は、互いに凄いものを見たと言い合っている。
あれ!おかしい。
ローラン号がスピードを上げているのは分かる。
それが徐々に浮き上がっている。
「船が、船が・・・飛んでる」男は、船を指さして呆れた声を出していた。
「あんな巨大な物が飛ぶなんて」
「おかあさん、船って飛ぶの・・・飛んでる船の方が、わたしは好きだわ」
母親は、右手で子供の手をギュッと握って、左手を口に持ってゆきうわ言のようい「うそ・・・そんなバカな・・・」
子供は困った顔して、母親を見ていた。
俺も予想外だった。
それ程に起動式の重力にはパワーがあったとは・・・
大型にしたのがまずかった。
違うな・・・飛んだ事を喜ぶべき大発見だ。
ドラゴンのように空から攻撃すれば優位性が担保される。
もうこれは、空を飛ぶ乗り物を製造して、武器をのっければ怖いものナシだ。
これなら帝国をぶっ潰すのも夢で終わる事はなくなった。
俺は城へ急いで帰った。
ローラン号内はパニックだ。
「副船長!!なぜレベル4までもっていった。それにしても飛ぶなんて聞いてないぞーー」
「わたしも聞いてませんよ。それにしても操縦はどうなるだ。飛んだ時の操縦も聞いてませんよーー」
「それはワシに聞いているのか・・・ここは落ち着こう。あせったらダメだ」
「レベル3にしてみれば、商人の勘ですがレベル3で船の高度が下がる気がしますね」
「そうだな・・・副船長、レベル3へゆっくり入れるように・・・」
「分かりました。やってみます」
レバーを3へゆっくりと移動させた。
その途端に高度が徐々に下がっていた。
海面へゆっくり「ザバンッ」と着地した。
「ああ、どうなるかと思ったぞ・・・・・・もし最高値のレベル7ならどうなっていたのか・・・考えるだけでゾッとして怖いです」
「そうだな、レベル7か・・・レベル3でも凄い速度だ。ワシが知っている最高速の魔道船をはるかに凌ぐ速度だ。今はレベル2にしろ。操作に慣れるまで我慢だ」
「船長、分かりました」
操船に慣れた頃だろう。
操舵室に船員のジョーンが転げるように入ってきた。
「船長、リヴァイアサンが右舷に現れました。早く飛んで逃げましょう」
「なにーーリヴァイアサンだと」
船長は右舷の窓からかぶり付くように見た。
「あ、あれは間違いない。リヴァイアサンだ」
海面を何度も飛び出す姿が、優美にキラキラと輝いていた。
船に携わる者なら、誰しも恐怖する魔物だった。
しかし船長は思った。飛んだらあの強力な雷砲が使えない。
船の下の魔物を、雷砲が撃てない角度だと軍人として分かっていた。
数々の同僚を殺された思いが、フツフツと燃え上がった。
船長は、魔道通話に向かって叫んだ。
「雷砲室!右舷のリヴァイアサンを撃てーー必ず仕留めろーー」
雷砲室からガチャガチャと激しい音が魔道通話から聞こえていた。
操舵室からも閃光が見えた。
魔道通話から「命中、リヴァイアサンに命中しました。船長、船長、聞いてますか。ちょっとあわてて発射ボタン何度も押してしまい、巨大な雷弾になって・・・砲身が壊れました。本当に申し訳ありません」
目が慣れた頃には、海面にはリヴァイアサンが「プカリッ」と浮いていた。
「このローラン号の3倍以上もあるリヴァイアサンを倒したのか? あの頑丈そうなウロコなのに、領主さまから聞いた海の魔物は雷系に弱いと、それに巨大な雷弾だから殺せたのかも知れないな」
「船長、あのリヴァイアサンの近くに寄って下さい。収納して解体すれば、いい売り物が出来ますよ」
手に持ったメモ帳に、又もなにやら書き込みながらにやりとしていた。
「あんな試練があったのだから、わたしに商売の神さまが微笑んで贈りものを下さったのだ。ありがたや、ありがたや」
そんな商人を船長は、ただ不気味に見るしかなかった。
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