辺境な領土へ追放
自然に出来た港で、船長のロベルトは俺の手を握って別れを惜しんだ。
「王子、あ!もう王子で無くなったんだな、シン・ローラン辺境伯。俺ら信じているぜ、あんたは良い奴だってことを・・・」
小型ボートに乗り込み、沖合いの魔導船へ帰ってゆく姿を、俺は見送っていた。
「シン様、屋敷に行きましょう」
「セバス、分かっている」
俺のお供は、セバスを入れても7人だけだった。
6人は平民上がりで昔からの俺の配下だった。
セバスは、俺の身の回りから教育まで何でもしてくれる頼もしい人だ。
そして俺は、自分自身の領土に足を踏み入った。
俺は今年で15歳になり、大人の儀式でもある鑑定の儀式を受けた。
結果は錬金術を、女神から授かったことになっていた。
しかし実際は違っていたが、俺は訂正しなかった。
錬金術は普通な恩恵であったが、皇族には相応しくなかった。
そして、それが理由で役に立たない辺境な領土の辺境伯に任命された。
しかし実質的には、追放の身と言ってもよかった。
それに、俺は皇帝が憎かった。ガーデン帝国そのものが嫌いだった。
いつも公の場で、俺の上の兄ライ・ガーデンから嫌がらせや罵りがたえなかった。
母が違い、その母親も俺の母親を嫌っていた。
よく言われたのが「赤眼、黒眼」だ。
俺の右の瞳は赤で、左の瞳が黒だったせいだ。
ガーデン帝国は、青か緑が主流で、俺の眼は好奇に見られていた。
黒は呪われた色として、特に嫌われていた。
それに、俺をいじめても誰にも怒られないのが原因。
そのせいで、物心つく頃からいじめが続いて、この帝国から出ることしか考えなくなった。
俺の母は、美人で皇帝のお気に入りの側室だった。
しかし、俺を生んですぐに死んでしまった。
皇帝は、俺が母を殺したと憎んでいるに違いない。
そのせいで皇帝は、俺に1度も会うこともなく、宰相らの勧めでこの辺境な領土へ追いやられた。
そしてシン・ガーデンから名を変えられて、皇族順位からも外されてここに居る。
「なんだセバス、これが屋敷か?」
「そうですね、少し時間は掛かりますが手直ししましょう」
俺が住んでいた屋敷も自慢出来ないが、ここは更に酷かった。
セバスが用意したベッドに倒れこむと、「ピキッ」と音がした。
しかし船旅の疲れでしだいに眠気が襲い寝てしまった。
窓から朝日が差込んできた。
「シン様、服を着たまま寝られたのですか?」
何時の間に、寝てしまったのだろう。
「そうだな、しかし誰も咎めないからいいだろ」
「それはいけません」
「セバスは、考えが古いよ。それにここには忌々しい監視者も居ない。だから俺は自由なんだ」
「それでも領主としての勤めがあります。兵を集めました。服を着替えて挨拶をお願いします」
セバスも一生懸命なのだ。ここはセバスの言う通りに行動しておこう。
兵の服装も揃っていない。
隊列も無く、ただ集まった集団だ。
事前に調べた通りで、ここは兵にとっては吹き溜まりでしかない。
そして、帝国から追放された民が住む領土だった。
開拓の見込みも無い領土で、呪われた領土と言われている。
ここは帝国の東端で、山脈によって帝国から切り離された、陸の孤島とも言われている。
1年前までは、洞窟で繋がっていたらしい。
しかし、落盤によって洞窟が塞がって、今では船でしか往来が出来なくなった。
「俺が領主のシン・ローランだ。お前らも思うことが多いだろうが、我慢して従ってくれ。今日は1人1人の面談をする」
兵士らは、突然の面談にざわつきだした。
「そこのお前からだ。名前は」
「カイ・ヘイモンドです」
俺は、カイ・ヘイモンドを見ていた。
カイ・ヘイモンド
HP10
MP15
STR3 VIT3
DEF3 INT3★
DEX3★ AGI3★
魔法
風魔法
「カイ、鑑定は受けたか?」
「受けてませんが?」
「カイは風魔法が使えるから、明日から風魔法の練習をしろ。INTとDEXとAGIに才能が有るから更に伸びるぞ」
「それは、本当ですか? 俺に風魔法があるなんて信じられない」
ここの兵士達は、鑑定の儀式の金も用意出来なかったのだろう。
農村なのでは、鑑定の儀式すら行なわれないのが常識になっている。
鑑定師の数が少ないのが原因で、鑑定師はそれなりの金を要求する事が当り前になっていた。
鑑定師にもランクがあって、高いランクの鑑定士は貴族専用。
ランクの低い鑑定士は、街で金を受取って鑑定を生業にしていた。
兵士達が騒ぎだした。ただで鑑定をしてくれるからだ。
その結果しだいで、人生が変わるかも知れないからだ。
俺の本当の恩恵は【魔眼】だ。
この世の真実を見分けることが出来る能力。
錬金術は、魔眼の触りの能力でしかなく、鑑定では魔眼が鑑定出来なかった。
しかし、鑑定で錬金術の能力に反応して、鑑定結果が錬金術に成った。
それ以外にも、鑑定や死の理を知りえる死霊術も使える。
10分以内なら、死者蘇生も出来る能力だった。
それと、魔力やマナもこの【魔眼】で視える。
※★は、才能のバロメーターで、★1つで才能有り、★★2つで天才、★★★3つで神がかりな才能
高いランクの鑑定士でないと★の数も見えない。
低い鑑定士が出来るのは、名とHP・MPと魔法やスキルぐらいだ。
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