絶え間ない挫折が生み出した悪党
この世界には想像の及ばないものに溢れている
深淵に住まい、真理を知るタコ
無限に湧き出す黄金の泉
死者ともう一度会える金色の雨
思うがままに天地を創造するドラゴン
世界の行く末を記した本
神になった男の回想録
俺は知りたい
いや、自分の命を試したいのかもしれない
俺の名前はイル=グランド
14歳
ゴブリン1匹倒せない冒険者
パーティには虐げられているが
そんなことで俺は冒険をやめられない
世界がどんなものか知らずに
人生を終えれるのか、いや無理に決まっている
食事のときも、誰かと話しているときも
幻想的な風景が頭に浮かぶ
その度に何かをしたいという気分になるが
何一つ前へ進めていない自分が嫌になる
こんな日をどれぐらい過ごしたのだろうか
冒険者は簡単な仕事ではない
戦闘能力のない俺を歓迎してくれる
パーティなかった
しかし現れた……それは俺にとって一筋の希望
でもあり絶望でもあった
そのパーティはウィルギン=ギルドで最弱、
おまけに性格も腐っていた
毎日のように殴られて、罵声をあびせられる
夢が俺を苦痛に縛り付ける
逃れることはできない
眩しい光が朝の訪れをつげる
ギルドの依頼をこなす日はいつも憂鬱だ
まぶたを閉じて、肺に意識を向けて深く息を吸う
これをすると体の固さがマシになる
今日の依頼はゴブリンの頭蓋骨を納品すること
最初、魔物の死体を見たときグロくて何度も吐いた
だが今はなんとも思わない
慣れというとのは恐ろしいものだ
いや、慣れではなく俺が内に秘めていた残虐性なのだろうか
ダンジョンと呼ばれている古代遺跡にいる
いつも通り戦闘で役に立つことが出来なかった
仲間が命をかけて戦っているところを指を咥えて見ているだけというのはなかなか心にくるものがある
そして今、俺は1人で頭蓋骨を回収している
どこを見ても生々しいゴブリンの多肉
鼻をつまみたくなるような臭いがする
顔を歪めながら肉を削ぎ取っていく
そうしていると大男が足音を立てて近づいてくる
はぁ……いやだなぁ
「おせぇんだよ ノロマが 冒険者なんてやめちまえ!!」
大男は俺を思い切り蹴り飛ばす
この男の名はバラン
暴力的で口の悪いこのパーティーのリーダー
我慢する以外の方法を俺は知らない
黙っていれば時間は過ぎていく
だから俺はただ耐える
「みっともない姿だな 笑えるぜ」
なにがそこまで楽しいのかまったくわからない
しかしバランは腹を抱えて笑っている
耐えていれば、耐えてさへいれば何の問題もない
「ほんとにそうね その這いつくばってる姿よく似合ってるわ」
バランの彼女、ルミも愉快そうに笑う
嫌な性格の女がする笑顔だ
初めて会ったときより、ブサイクになっているような気がする
これはルミに対しての嫌悪感がそうさせているのだろうか
底辺よりも底辺、それがこのパーティにおけるイルの存在価値だった
「ほら手が止まってるぞ お前が遅いと早くかえれねーだろうが 彼女が俺を待ってるんだよ」
こいつはジョン このパーティの中では比較的優しいやつ
でもバランたちに毒されたのか日に日に俺に対して
横柄になっているような気がする
この3人と俺で一つのパーティー
だれか俺の代わりにこのパーティに入りたいやつはいるのかな
まぁ……いるわけないだろうな
ゴブリンの首を切り落とす
赤い血はまだ温かい
「え……なんで……」
まったく気づかなかった……
目の前に少女がいた
とはいえ俺よりずっと大人びていている
思わず見惚れてしまった
まるで妖精
金髪の少女は少し口角を上げる
「お前……まぁまぁかっこいいじゃん……」
不思議な空気を出す女は口が悪かった
他の冒険者みたいな話し方でどこか親しみを感じる
「なっ……なんなんだおめぇ……」
バランが狼狽えながら少女に問いかける
パーティーのリーダーがこんなことで狼狽えて
情けないと普通の冒険者なら驚くだろう
だか俺たちはそうじゃない
はっきり言おう、リーダーは雑魚
それに付き従う俺たちはもっと雑魚
雑魚が誰かもわからない奴の気配に気づけず、
近くにいられたとあれば取り乱すのも当然
「ははは……びびってんの??きも……」
その容姿からはおおよそ想像できない罵倒を受け、
バランは顔を真っ赤にして怒りの表情を少女に向ける
「このクソガキ!!ぶっ殺してやる
こんなところで1人でいちゃ危ないんだぜ??
あの世で反省すんだな」
ルミはバランの言葉を聞き口角をあげる
「あぁ〜あ かわいそうに
まぁ……バランは子供でも容赦ないから
血まみれになるだけだから
ふふ 頑張ってね……」
バランが今からやろうとすることを想像して楽しそうにしている
大の男がブチギレながら殴りかかろうとしているのか早足で迫る
なのに少女は何も感じていないかのように
口を大きく開けてあくびをする
次の瞬間……何かが起こった
そう確実に何かが起こった
少し時間が経ってようやく何が起きたか飲み込めた
彼女がバランを殺害した
それも平然と
まるで冒険者が魔物を狩る時のように
バランを殺されて過呼吸になるルミ
謎の女が彼氏の命を奪ったんだ……無理はない
バランはずっと俺を虐げてきた
俺は何度も何度も頭の中で彼を殺していた
だが……実際に死んでいる姿は想像とかけ離れていた
ふと頭によぎる……バラン無しとなれば
パーティーは解散するかもしれない
そうなれば俺はどこへいけばいいんだろう
そんなことを思いながらも視線は少女のところへと
戻っていた
「ふぅ……はぁ……なんで」
ルミはショックのあまり過呼吸になっている
彼氏の命が奪われたんだ無理もないだろう
少女はゆっくりとルミの瞳を覗き込む
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