8話「サウスタウンと恥ずかしい」
「あれが騎士王国首都エイバンを守るように位置する街の一つサウスタウンだ。首都エイバンを中心北、西、東、南に街がある。首都行くにはどれかの街を必ず通らないと行けない仕組みになっていてな。
今向かっているのは南に位置する街サウスタウンだ。」
「なるほど。それにしてもこの黄金騎士王剣腰に下げてるだけでもかなり目立つ気がするんだが気のせいか?どうにかならないの?」
俺はポンポンと剣を叩いた。
「そればかりはどうにもならんよ。我は我だからな。隠す必要もあるまい。それに街に行っても目立たんよ。」
「なぜ?」
「行けば分かるよ。」
会話を終え渋々、門に向かって歩いた。
門の前に着くとそこには兵士らしき者が立っていた。自分の番が来るまで様子を眺めていると街に入る前の確認作業をしているようだ。1人また1人と人が居なくなり俺の番になった。
「ようこそサウスタウンへ。身分を証明できる物を持っているか?」
「いや、実はそこの森から出てきたんだがあいにく自分の名前以外記憶を失っているみたいでわからないんだ。だから、証明する物を持っていないんだ。」
俺は本当の事は言えず真実と嘘を混ぜうまく誤魔化そうとした。本当のことを言ったところで逆に怪しまれるだろう。これが無難だと思った。
「そうか記憶をね。お前迷いの森を抜けてきたのか?彼処はAランクの魔物が出る危険な場所だぞ?もしかして勝手に迷いの森に入って魔物に襲われたのか?奇跡的に生き延びたが反動で記憶を失ったのかもな。」
兵士がうまく勘違いしてくれたようだ。
「そんなに危ない場所だったのか?」
「迷いの森はBランク冒険者クラスの実力がなければ通用しない場所だ。駆け出しの冒険者だと簡単に命を落とす。よく記憶を失うだけで済んだな。」
「今度から肝に銘じておくよ。」
俺はそう言うと申し訳無さそうな顔をした。
「それに腰に下げてるそれ。黄金騎士王剣に憧れているんだろう?気持ちはわかるぞ。俺も昔は自分で金色に染めてよく腰にぶら下げて遊んだもんだ。ほれ、街中を覗き込んでみろ。」
そう言われ体を少しずらし街の中を覗き込むと子供から大人、冒険者らしき人まで金色の剣を持ち歩いてる人が少なからず居た。
「な?噂によると黄金騎士王剣は今までに一度たりとも使い手が現れたことがない。毎年「王剣の使い手選定の犠を」がおこなわれるのだかな、誰1人黄金騎士王剣に認められる者は現れなかった。それほど使い手に選ばれることはすごいことなんだ。だから、みんな憧れるし目指そうとする。まぁ、そのなんだみんな一度は通る道だ大丈夫だ。」
兵士は笑いながら肩を叩いた。
「あ、え、う、うん。あ、ありがとう。」
俺はあまりの恥ずかしさに動揺してしまった。そんなことなら布か何かを巻いて隠せばよかったと後悔した。でも、そんなことをしたら黄金騎士王剣が怒りそうだから辞めとくか。
「話はそれたが冒険者ギルドに向かいギルドカードを発行してもらえばいい。ギルドカードは身分証明書の代わりにもなる。発行したらまたここに戻ってきてくれ。登録をするからな。万が一登録せずに日にちが過ぎると直ぐに見つけ出され追放されるからな気をつけろよ。」
「分かった。何から何までありがとう。色々参考になったよ。」
「気にするな。ではまたな。」
俺は軽く会釈をし街に入った。まずは冒険者ギルドに行かないとだな。手持ちのお金もないから依頼も受けたい。やらなければならない事ばかりで頭が痛くなった。でも、この先どんなことが起こるのだろうと期待もした。