ハードコア編
アンドロイドといえばエイリアンのゲームですかねー
第九話 ハードなコア
____二時間後……。
『寝てるなら起きなさい!起きてるなら甲板へ集合!ハードコアに着いたわよ!』
いつもの耳が痛くなるような声がハウリングしながら響く。
俺はムジナを起こし、手を引きながら甲板へと急いだ。
「来たから拡声器は止めてくれ」
「そうでもしなきゃ声が届かないでしょ。それともなに?フライパンとお玉でカンカンしてほしい?」
「あっ、拡声器でいいっす」
アシリアは勝ち誇ったような顔をすると、船を着陸させるために体勢を整えようと動き始めた。
「見て、ヘラ!工業地帯、っていうのかな?煙がすごいよ!」
船から顔を覗き込んだムジナが早速はしゃぐ。しかし煙が嫌だったのか、すぐに引っ込んだ。
「危ないからもう少し待ってなよ。でも案外楽しみだ。ここには人もいそうだ。ま、宇宙人だと思うけどさ」
「宇宙人か……もしかすると、さっきのアルカディアにいた人の元の姿、あのままだったかもよ?」
「縁起でもないこと言うな」
俺はムジナの頭を優しくチョップし、部屋に戻ろうと後ろを向いた。
「着陸するまでに戻ってきてよー」
「わかってる。すぐ戻る」
俺はさっきまで縫い直していた服を手に甲板へと駆け出した。
戦闘を見越し、動きやすく。でもってこの服の元のデザインを損なわないような……そんな服だ。
俺は黒を。ムジナは白を強調してみた。
黒ならワンチャン見つかりにくいだろう。宇宙的に。
「早かったね、ヘラ!アシリアが着陸地点を見つけたからそろそろ呼ぼうと思ってたんだ」
「そうか……なら着陸するまでに着替えようぜ」
「わ、縫い直してくれたんだ!前より上手くなってるね」
「そう言いながらもずっと着てくれてるじゃないか。俺は幸せ者だよ」
ムジナがいつも着ている青と白、時々黄色な長袖の服は俺の手作りだ。ちなみに彼の兄、ヘッジさんの服も作った。二人はお世辞でもファッションセンスが良いとは言えない兄弟で、部屋着にも見える服で外を歩くので俺が見かねて作った。そんな服を今もずっと着てくれている。毎日着ているので代わりの同じデザインの服を四枚ほど作って渡したのだ。
「さっきのもいいけど、色が似すぎて……何となく気に入らなかったから縫い直したんだよ」
「白と黒。正反対なんて、オレたちみたいだね」
「……そうだな。さ、着替えに行って、アシリアを驚かせようぜ」
「賛成!」
____着替えから戻ってくると、アシリアが地図を開いて唸っていた。
「どうしたの?」
「ムジナ……次、アンカーを見つけようと思ってるんだけど、この地図と今の状態が全く合ってなくて……。アンカーはこの星の特別な素材じゃないといけないのに、これじゃ見つけようがないわ」
「それならここの人たちに聞いてみようよ。こんなに繁栄してるんだからいっぱいいるでしょ」
「それもそうね。じゃ、着陸に備えて。結構ゴツゴツしてるみたいだから振り落とされないでよね」
……本当にそうだった。めちゃくちゃゴツゴツしていた。下から突き上げるような衝撃が三人を襲った。
「二人とも、大丈夫か!?」
「えぇ……空からやってくることを想定してなかったのね……いたた……」
「滑ったー!いったぁー!」
ムジナが尻餅をついている。何をしようとしたのかはわからないが、恐らく自業自得の類だと思うのでスルーした。
「地図通りじゃないっていうのは伊達じゃないかも……」
「とにかく、こんな不安定なところから早く離れよう」
「それがダメなの……すっかりハマったみたいで。それに鉄でしょ?扱いならここの人の方がいいでしょ」
「そうだな。よし。あそこに見えてる街に行ってみようぜ」
「……あぁ見えてヘラの方がはしゃいでるわね」
____まるで戦争後の廃墟のようだ。
この例えが一番合っているだろう。
あとから追い付いた二人も驚きのあまり言葉を失っていた。
周りは工業地帯なのに、どうしてここだけが廃墟のようになっているのだろうか。
「……あ!あそこに人がいるよ!」
ムジナが指した先には、確かに人がいた。しかし、どうやらここの人ではないようだ。未来感溢れる服を着ており、さらに俺たちのことに気づいていないようだった。
「こんにちは!」
ムジナが駆け寄る。
だが、すぐにまずいという顔をして戻ってきた。
「どうしたんだ?」
「や、やばっ、やばいよ!あれ、人じゃなくてっ……あぁ、何て言ったらいいんだ!」
ムジナが頭を抱えて騒ぐ。
アシリアが呆れてため息をついた。
「落ち着きなさいよ、ムジナ。ちゃんと教えて」
「すー、はー……ふぅ。いい?あれはね____」
ムジナが口を開いたそのときだった。
けたたましいエンジン音が聞こえてきた。
それはどんどんこっちに近づいてくる。
「皆様、早くこちらに!」
近づいてきたのは大型の改造されたバイクだった。上に乗っているのは……千手観音のように見えた。いや、そんなはずはない。幻覚だ。きっと、いやそうに違いない。
「左右から来るよ、どうしようヘラ!」
「……あーもう!バイクだ、バイクの奴の方に行くぞ!」
俺はアシリアをひょいと抱え、バイクの方へと寄った。轢かれない程度に。
「そうです、そのままもう少しこちらに____ええいっ!」
目にも止まらぬ早さでバイクの後ろに乗せられる。
千手観音だと思った腕たちは、どうやらこの人が操るマシンのようだ。それらは精密に動き、時にはクレーンのように掴んで運搬することもできる。
「うわっ!」
「きゃっ!?」
「ぐえっ!」
手荒く乗せられ、潰れたカエルのような声が出た。一言言ってやろうと思ったが、そんな考えはドライバーの顔を見て吹き飛んだ。
「……サイボーグ……?」
「申し訳ありません、サイボーグなどと同じにしないでくださいませ。エラー、エラー……任務遂行のため、完了まで私語は致しませんのでご了承ください」
「怒らせちまったな……」
バイクはどんどん廃墟に囲まれた道を進む。後ろを見ていたムジナが嫌そうな顔をした。
「ヘラ……大変だよ。さっきのはアンドロイドだ。魂が無いから何も読み取れなかったからすぐにわかったよ。街のために働いてるように見えるけど、あれはただの殺戮マシンだよ。多分あいつらがこの星をめちゃくちゃにしたんだと思う」
「アンドロイド?じゃあこのドライバーも……」
ドライバーの女性を見る。
確かにパッと見サイボーグだと思えたのだからその線はある。
「皆様、そろそろご主人様の館にございます。しっかり掴まってください」
まだ俺たちの目には映っていないが、この先にこのアンドロイドのご主人様と言える人がいるようだ。成り行きではあるが、贅沢は言っていられない。今は少しでも情報がほしいので、俺たち三人は何も言わずに到着するのを待っていた……。
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜