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怪奇討伐部Ⅴ-Star Handolle-  作者: グラニュー糖*
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【R-15】アルカディア編3

本作は流血の表現があります。

pixiv版では流血無しver.も用意しておりますが、こちらでは載せませんのでご注意のほどよろしくお願いします。

第六話 おかしな惑星




 先手として俺は手のひらサイズの炎の弾を投げ飛ばした。だが、それは盾となった人型だったものに遮られてしまった。


「ぐっ……」


 肉と髪の焼けるにおいがする。あまりいいものではない。


「あなたがガス欠になるのか、私のコレクションが全部焼けるか……消耗戦ってことね。言っておくけど、私のコレクションは私を抜いてこの星の住民全員。あなたにこの星を滅ぼす勇気はあるかしら?」

「滅ぼすつもりなんてない!俺はお前みたいなヤバイ奴から宇宙を守ろうと……」

「それには私という犠牲が必要よね」


 ____こいつ、ノートみたいなことを……。


「あなたは私に出会ってしまった。運が悪かったのよ。こんな花以外何もない広いこの星で、偶然、出会ってしまった。特別に教えてあげるわ。まだ私以外の住民が残っていたとき言われてた通り名を」

「いらない。俺たちしかいないからって、初対面の人にベラベラ喋るものじゃないぞ」

「つれないわね」


 元人型たちは盾だけかと思いきや、特攻隊として危険を顧みず突っ込んできた。


「うわっ、来るな!さすがに狙えないから!殺したくないから!」

「結構優しいのね。さっき燃やしたのは不可抗力だったものね」


 あれらを見るたび、どうしてもさっきの燃えていく様を思い出してしまう。

 しかし、燃えていくときの表情は苦痛のものではなかった。むしろ、この女性から解放された喜びに満ち溢れていた。


「こいつら、まさか……俺に燃やされようと……!?」


 本当にそうなのかはわからないが、もしそうだとすれば彼女に悟られないように彼らを燃やさ(救わ)なければ。


「とりあえずあいつを倒さないと!」

「ヘラ!」


 声がした方を見ると、ムジナが駆けてきていた。アシリアは置いてきたようだ。


「ムジナ!?戻ってろって言っただろ!」

「やっぱりヘラ一人じゃ心配なんだ!」

「ムジナ……わかったよ」


 前を向くと女性はムジナに戦いを邪魔されたことに不快を持った目付きで見ていた。


「男の子一人増えたところで何も変わらないわ。あなた、ムジナっていうのね?あなたもこのヘラってのと一緒にコレクションにしてあげるわ!」


 女性が片手を上げる。すると元人型たちは二手にわかれて襲いかかってきた。


「____今だ、ムジナ!」


 俺がムジナに合図を送る。

 にっこりと笑ったムジナは、虚空から取り出した死神の正装である真っ黒のフードを羽織った。

 これは彼の兄、ヘッジさんが腰に巻いているものと同じもの。常に着ることはできないが、一時的なら着用することができる。


「刈り取ってやれ!」


 ムジナの手に、鳥の頭蓋骨をあしらった鎌が現れた。

 水蒸気を振り撒き、それを操って急激に冷やす。それに従い氷漬けになった人型たちに巨大な思念体となった鎌を振り下ろした。


 一瞬のことだった。

 こんな数の魂が消えるところなんて初めて見た。

 ムジナの複雑な表情が目に映る。

 一方女性は何が起きたかわからないという顔をしていた。


「____動きなさい、動きなさいよ、信者たち!あなたたちならこんな氷くらい……」

「もう動かないよ、お姉さん」

「何で____まさかあなた……死神!?」


 ムジナが頷く。

 女性は観念したように膝から崩れ落ちた。


「あの人たちの魂はずっとここにあったんだ。この星をいつかお姉さんから救ってくれる人が現れるように。だから一生懸命、自分とリンクしていた花のにおいを出していた。オレたちを導くかのように。……ってさっき刈り取ったときにみんなが教えてくれたんだ」


 ____だからあのとき複雑な表情をしていたのか。


「お姉さんの負けだよ。死神の目を掻い潜って魂を弄んだこと、しっかり償ってもらわなきゃ」


 ムジナは笑顔のまま、彼女の首に鎌を回した。


「……ふ、ふふふ……あははははっ!」


 彼女は突然笑い出した。

 ムジナも驚いている。


「負けを実感して気でも狂ったか?」

「あはは、やっぱり面白いわ!だってあなたたち____」


 座っていた彼女はドレス姿にも関わらず、一歩大きく踏み出し、ムジナに急接近した。


「最後まで油断でいっぱいなんですもの」


 彼女は素早くムジナの背後をとり、ムジナの首筋にナイフをあてがった。


「ムジナ!」

「おっと、動かないでちょうだい。……そう、そのままよ……。これからムジナの血を使って、契約を果たすんだから」


 そう言ってジリジリと後退りしている。

 ムジナは怯えきってしまい、震えている。


「契約……?」

「宗教って何のためにあると思ってるの?神の恩寵を得るためにやっているのよ。その結果、得たのがこの通り名……『血濡れの聖女』。血濡れ部分が本来の私なんだけどね。私のナイフたちが吸ったのは、この星の全ての生き物の血。契約の最後に必要だったのは、価値の高い血液だったの」

「なら俺のを使えばいいだろ!ムジナを返せ!」

「嫌よ、こんな蛮人の血なんて」

「ばっ……」


 蛮人って。

 いくらなんでも酷すぎやしないか。


「結構傷ついちゃったみたいね。それは謝るわ。……さぁ、あなたは一人で帰りなさい。この子は貰っておくわ」

「渡すかよ!ムジナは俺の親友なんだ!やっと……やっと静かなところに来たってのに……どうして……」


 この女性を倒そうと思ったのは、そういうところからもきている。

 これまでのことを考えると、ずっと大変だった。

 ハレティとの戦いのあとは面会も許されなかったし、最近は周りがギスギスし始めたから平和と呼べる日常ではなかった。


 だからやっと手にした平穏だと思ったのに、一発目からこんな星を引き当てるなんて……。


「わかったよ……俺一人で____」

「弱気になるんじゃないぜ、兄ちゃん?」


 誰かの声が聞こえた。

 渋い声だった。

 一体何が起きたのか全くわからない。

 なぜなら……。


 なぜなら、一瞬にしてあの女性のナイフを持った方の腕が切り裂かれたのだから。


「え……?きゃ、きゃぁあああっ!?」

「うわああああ!?」


 女性は驚きのあまり尻餅をつき、血を撒き散らしながら叫んだ。

 この光景を生み出した男性は同じく叫んでいるムジナの手を引いて助け出した。……のだが、ムジナの服に少しだけあの女性の血がついてしまった。あとで直さないと。


「何なのよ!一体!あんた、誰なの!?」

「……罪人に語る名前など無いさ」

「ナメてくれちゃって____」


 どこかに仕込んでいたと思わしきナイフを口に咥え、男性に襲いかかる。だが、彼は短くため息をつき、刀で一閃、凪ぎ払った。俺とムジナでも思わず目を背けたくなるような血の出方だった。


「……終わりだ、血濡れの聖女。お前の宗教はとっくに終わってる。お前が民を手にかけたときから、な」

どうも、グラニュー糖*です!

現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!

こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。

本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!


なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!


ではでは〜

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