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怪奇討伐部Ⅴ-Star Handolle-  作者: グラニュー糖*
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アルカディア編2

第五話 不穏な影




 __________


「……ムジナ、帰ってこないわね」


 ムジナがどこかに行って十分くらい経っただろうか。帰ってこない。


「まーた迷子になってるのか……まぁらしいっちゃあらしいけど。俺、探しに行ってくる」

「ヘラまで迷子にならないでよね?」

「バカ言え、俺はそこまで方向音痴じゃない」


 俺は船をちら、と見て遠くの方に走り出した。

 ……おかしい。少し違和感を感じる。

 花ってこんなににおいがキツかったっけ?


「……はぁ、はぁ……少し……息苦しいな……花のにおいが喉にまで入ってくるみたいだ……」


 例えるならば、フレグランスをそこら中に撒きすぎたようだ。


「まさか、これがこの星の人たちを消したとか……いやいや、無いか」


 こんな香水みたいなにおいで人が死ぬわけがない。

 俺はコートで鼻を押さえようとしたが、さっき着替えたとき、船に置いてきてしまったことに気づいた。……やってしまった。これはムジナも同じことだ。俺たちは今、半袖だ。


「ムジナ!どこだ!?」


 この星のどこに降りても同じなのに、どうして道を進むにつれてにおいがキツくなるのだろうか。もしかすると、元からこの星全体が同じレベルのにおいが充満していたのかもしれないが、真相はわからない。


「____ラ……ヘラ!けほっ」


 近くからムジナの声が聞こえた。


「ムジナ!戻ってこい!」

「ダメ……来ちゃダメだ!」

「何言ってるんだ、ここは危険だ。早く船に戻って作戦を練ろう!」


 俺はムジナがいる方向に叫ぶ。

 ……すると、まるで換気をしたかのようににおいが一気に消え去った。

 突然のことなので、頭が追い付かない。とにかく今はムジナを見つけることを優先にしなくては……。


「……あらあら、旅人さんかしら……?」


 後ろから声が聞こえた。

 さっきまで誰もいなかったはずなのに。


「いつの間に背後を____」

「ヘラ、伏せて!」


 ムジナの言う通りに伏せると、頭の上を何かが掠めていった。


「!?」

「惜しいわ。本当、惜しいわ!でも、面白いわ!あなたもこの花と過ごす権利を与えてあげるわ!」


 嬉しそうに両手を上に上げるのは、リメルアと似たようなファッションセンスをお持ちの女の人だ。彼女は茶色のゴシックドレスを着ている。所々に薔薇があしらわれており、見るものを魅了するだろう。……周りさえ見なければ。


「……そういうことか」

「ヘラ!アシリア、どうしよう!」

「先に戻っててくれ。俺はこいつを何とかする……!」


 俺は女の人を睨んだ。

 泰平の花の星、なんてやはり嘘だ。ここは血みどろの薔薇の星。人っ子一人いないのに平和なんてよく言ったものだ。


「あらあら、お仲間がいるのね?あなたを私のコレクションに加えてから迎えに行ってあげる」

「させるかよ。お前が誰かは知らんが、どうも怪しいから止めさせてもらう」

「怪しいなんて女性には誉め言葉になる場合があるのよ?ミステリアスってね」


 殺気放ちまくりな奴のどこがミステリアスというのだろうか。どう見てもヤバイ奴としか考えられない。


「あぁ言えばこう言う……。なぁ、俺たちが旅人ってわかるならさ、どうしてここが泰平の花の星なんか呼ばれてるんだよ?誰もいないじゃないか」


 俺は警戒を解かずに問うた。いつ襲いかかってきてコレクションとやらにされるのかが恐ろしいからだ。


「あー、昔は栄えたのよ、ここ。でも、花畑になってしまった……その理由はね、私なのよ」

「……」

「そんな気はしてたって顔ね。みんな私のコレクションになったのよ。この花……薔薇は、この星の宗教のシンボルマークとされていた。この星に充満するにおいは、品種改良された薔薇が放っているの。みんな薔薇の香りに誘われて、そして死んでいく。綺麗な薔薇には棘がある、それを体現してるの。もちろん、香りの向こうには私がいた……ってこと。わかった?」

「……じゃあ、宗教のトップに殺されたってことだな?」

「殺したとか人聞きが悪いわ。コレクションになったの。コレクションにしてしまえば消えることはない。この宗教は永遠のものになるのよ____!」


 もう一度両手を高々と上げる女性。

 俺たちのような旅人にコレクションでも見せて認めてもらい、宇宙に広めようとか思っているのだろうか。こんな大量殺人犯を放っておけば、大変なことになるのは目に見えている。


「うるせぇ、メンヘラ。嫌がる人々をコレクションにしやがって、許せねーぞ!」

「えぇ、嫌がっていたわ。でも今ではすっかり私の人形……」


 彼女が薄ら笑いを浮かべると、悪寒が走った。

 そして鼻をつく腐臭……。


「うっ」

「死んでないでしょう?永遠の命と言いなさい。彼らは私という救世主によって救われたの」


 まるで花一本一本が墓標だったかのようだ。いつの間にか無数の『人型だったもの』に囲まれていた。それほどの数だった。


「……これがその宗教だというなら、俺は入りたくねぇな……」

「そう言ってられるのも今のうちよ。あなたの旅はこれで終わり。あなたはずっとここで過ごしていたくなる。この消えた街で、幻影の中で過ごしていたくなる。まずはウェルカムランチに防腐剤はいかがかしら?」

「誰が食うか、そんなもの!」


 俺は廻貌を呼び出しかけたが、あいつなら『こんな死体みたいなグチャグチャの奴ら、斬りたくないね!汚れるからな!』なんて言って協力してくれなさそうなので諦めた。仕方ない、炎で何とかするしかない……!

どうも、グラニュー糖*です!

現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!

こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。

本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!


なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!


ではでは〜

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