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怪奇討伐部Ⅴ-Star Handolle-  作者: グラニュー糖*
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準備前の話は大事

第四十五話 侵入




「ムジナ、ヘラ。魔力はあとどれくらい残ってる?」

「実はだいぶ……。ヘラは?」

「聞くな」


 あ、この人また発散してたのか……。

 インキュバスの魔力の供給方法は基本的にいかがわしいことだが、ヘラの場合はそれを乗り越え、趣味に走ることで供給することができる。


 そのヘラの趣味というのは主に『家事』だ。


 料理洗濯掃除に飽き足らず、剣の手入れ、服を一から作る裁縫、客の出迎えなど全てマスターしている。……メノイさんが怠け者になったのはだいたいヘラのせいだ。


「ヘラ、何かあったら頼ってくれよ。お前、ずっと一人で抱え込むだろ」

「う……わかったよ……」


 サメさんもそう言ってることだし、しばらくはヘラを任せられるだろう。


「これから突撃するわよ。しっかり掴まってて……。進行予測、完了。星の道……バリア……損害予測、完了。?……少し重い気が……」


 ちら、と後ろを向くアシリア。しかし船は二人増えたくらいで沈むほど柔ではない。


「気のせいじゃない?」

「そうかな……」

「早く行こーよー!ねー、ヘラー」

「俺に振るなよ」


 などと意見はさまざまだ。

 グダグダすぎるメンツにアシリアは頭を抱え、操縦に戻った。


「……お前らさぁ……」


 見かねたサメさんが唸る。

 そしてアシリアの方に向かい、肩に手を置き、ニヤ、と笑った。


「グダグダしてっと、俺がこいつ、奪っちまうぞ?」


 固まる一同。

 一番先に動いたのはアシリアだった。


「……ハコフグに言っちゃお」

「なっ!!」

「って冗談よ!本気にした?」

「そりゃそうだ!」


 その様子を見ていた商人ちゃんはクスクスと笑った。


「あはは、よかったー」

「何が?」

「サメくん、ずっと悩んでたから。ちゃんと話ができるんだろうか……裏切り者、嘘つきだとか言われてしまったらどうしようって言ってたからね」


 いつも明るい商人ちゃんの目はその時だけだろうか、とても温かかった。

 そういえば商人ちゃんってずっと宇宙にいるらしいけど……宇宙って地球と違う時間の流れでしょ?もしかするとオレたちより超年上だったり!?


「お、おい!みんなも何か言ってくれよ!」


 サメさんがいつもは見せない顔をして叫ぶ。オレたち三人はそれを見てケラケラと笑っていた。


「……サメって、俺たちのなかでは一番年下なんだろうな」

「ん?どうして?」

「サメはただ姿が変わっただけのジンベエザメだ。平均六、七十年、最高で百五十年は生きるらしい。それでも俺たち悪魔にとっては一瞬の出来事だ。だから……」


 そこまで言ってヘラはぷい、と後ろを向いた。


「……少しは甘やかしてやろうぜ。かわいい弟分をさ」

「「あは、ヘラにしては珍し~」」

「ハモるなっ!!」


 __________


 ワープを実行したあと。

 少しずつバリアのピンクが見えてきている。

 オリオンから逃げ出すとき、一度見たからどの辺りにバリアがあるかはわかるが、よくよく見ると薄ーくピンク色が見えるのだ。本当によーく見ないとわからないが。


 ムジナ、ヘラの二人にはよく頑張ってもらった。私一人じゃ絶対にここまで戻って来られなかった。この二人を巻き込んでくれたイアにもお礼を言わなきゃ。そのためにも、お父様には絶対に勝たないと。


「アシリア!そろそろ……おっ、あれがオリオン?」


 ぴょこっと部屋から顔を出したのはムジナだ。

 四人でカードゲームをやっていたのだろうか、数枚のカードを手に持っている。おそらく商人ちゃんのものだろう。


「そうよ。あのバリアを突っ切るわよ」

「んー……魔力も感じられないし、イリアが使ってた『科学の力』ってやつかな?」

「そうよ。私はよくわからないけど、生まれる前からあの技術があったの」

「不思議だねぇ」

「そうね」


 にへらと笑ったムジナにはオリオンの強さをまだ教えちゃいけないと思った。

 この笑顔が恐怖に変わるところを見たくなかったから____。


「……オリオン、そんなに強いの?」

「!!」

「言ったでしょ?オレは死神。人の魂を読み取って、行動する悪魔だって。今のアシリアの魂は濁ってた。きっと、そんなことだろうって……思ったんだ」

「ムジナ……」

「オレたちを頼って。そのために連れてきたんでしょ?」

「……うん!」


 私はスコープを使い、距離を測った。

 そろそろ備えるべき距離だ。


「ムジナ、コンパス見ててくれるかしら?」

「おっけー!」

「……お客さんに迷惑かけるわけにはいかないもの……!」


 私はバリアの機械を弄る。

 これを最大出力にして……飽和させ、あっちのバリアを貫く!!


「ムジナ!ちゃんと柱とか持っててよね!振り落とされないよう、気を付けて!」

「アシリアこそ!」

「わかってる……!____いっけええええ!!!」


 船が大きく揺れる。

 少しの浮遊感が私たちを襲う。

 おそらく部屋ではカードが散らばって三人が騒いでいるところだろう。


 ____それはたった三秒間のことだというのに。


「アシリア!」

「……っ!……大丈夫……成功よ!」


 振り向くと、さっきよりだいぶ濃くなったピンクのバリアが輝いていた。

 一部破れているように見える。いや、見えるのではなく、破ったのだ。

 オリオンにはオリオンの技術を。

 それは昔から言われていることだ。


 ……なぜなら、それより上の技術なんて無いのだから……。


「な、何が起こったんだ!?……って、あぁ!成功したんだな!?」


 バン!と扉を開いたのはサメさんだった。

 焦った顔を見たあとにその手を見ると、カードが……。いろいろと台無しだ。


「……」

「な、なんだ……その目は……」

「……私がいろいろ制御してるのにみんなといったら……」

「ごめん!!」

「意外と正直!?」


 そんなことを言っていると、商人ちゃんが部屋から出てきた。


「アシリア!いつも入ってるところ教えてあげる!あっちだよ!」


 そう言って商人ちゃんは舵取りに加わった。


「キャプテン、俺らは何をしたらいいですか……」


 サメさんの声が聞こえる。

 振り向くと左からヘラ、ムジナ、サメさんと並んでいた。


「そこにいて」

「「「は、はい」」」


 男三人の動きを封じ、舵取りに戻る。


 オリオンの星が見えてきた。

 星というよりかは巨大な丸い母艦だ。

 周囲にあるとんでもない数の穴から、タビトも乗っていたビーム兵器を積載している船が出てくるのだ。


「でか……」


 思わずムジナの口から言葉が漏れる。

 意外にも残り二人からは驚く声は聞こえなかった。


「……ヘラ、こんな気はしてたって感じ?」

「まぁな。タビトの船を見て技術の予想はしていた。でも……まぁ予想以上なのは否定できん」


 言い切ってもヘラの表情は曇ったままだ。


(……月の鍵の作りはよくわからないものだ……だが、宇宙にあるものの技術は地球よりかなり進んでいることは理解した。もしかすると、ノートはビーム兵器みたいなのを出してくるかもしれん……。もしかするとマリフが見た設計図は宇宙のものなのか?オリオンのビーム兵器よりは幾分か劣っているものの、ビームはビームだ。……いや、劣っているように見えて、あの小さな銃で撃てるように設計したマリフの方が技術力は上なのか……?)


 考え込むヘラをサメさんは不思議そうに覗き込んでいた。


「……疲れたなら部屋で休んだらどうだ」

「いい。もしオリオンが船に攻撃してきたら誰が守るんだ。サメ、お前はただの魚だろ?悪魔ではない」

「う……」


 突っぱねるようなヘラの言葉にサメさんは顔をしかめる。

 止めたいのは山々だが、こちらも操縦に忙しいし、商人ちゃんもルートガイドに忙しい。ここはムジナに任せておこう。


「あ!そこの穴だよ!ここならオリオンのバリアやサーチ……共に死角だよ」

「……なんか腹立つわね……オリオンの人間として」

「あーそんなこと言っちゃダメだよー」


 商人ちゃんは頬を膨らませる。

 私は彼女をなんとか宥め、着陸の準備に入った。


 確かに人はいない。

 オリオンという星でいう『予備の空母』というのだろうか……。

 数ある穴の中で、出撃する船と船の影響がギリギリ重なって事故が起きてしまうかもしれないので「ここは使わなくていいか!」と放置された場所だ。

 ……昔一度お父様に「どうしてあそこからは出撃しないの?」と聞いたことがあるような無いような感じがする。


「やけに静かだな」


 サメさんの言う通り、一隻も船が見えない。

 どうしてかと思っていると、ヘラが「ん?ん?」と言いながらクルクルと回りだした。


「何してるんだ?」

「なんか……ブンブン鳴ってる……震えてる……」


 クルクル回っていると、ポケットから何かがカタンという音を立てて落ちた。


「あ、スマホ……誰のだろ」

「電話来てるぞ。……タ……ビ……ト……?」

「タビトぉ!?」


 ヘラとサメさんが見ているスマートフォンにはなんとタビトから連絡が来たらしい。


「どうしよ……出る?出た方がいい?アシリア」

「私に聞かないでよ。でも、タビトからなら何か大切なことを言ってくるかもしれないわ。出たら?」

「わかった。……もしもし?」


 ヘラがスマホを耳に当てる。

 するとスピーカーにしていたのか、大きなタビトの声が響いた。


『ヘラか?繋がってるなら生きてるな。よかったよ』

「うるさっっっ」

『すまん。早速だが本題に入らせてもらう。時間がないんだ』

「そ、そうか。なら話してくれ」

『今オリオンの前にいるだろ?船が一隻もないのはオレの命令で止めているからだ』


 その言葉にヘラは一瞬目を丸くしたが、すぐに戻った。


「それで?礼を言ってほしいって?」

『そんなことじゃない。ただ一言言いたかっただけだ。オレたちの代わりに……頑張ってくれ。オリオンを倒してくれ!』

「は!?お前だってオリオンだろ!?どうして!」

『オレたちは本当は別の星の住人だった。メリアはアルカディアだし、オレはハードコアだった。……もしかすると地球もいるかもな』


 ヘラの顔色が変わった。


「!」

『いいか、よく聞け。もう一度言うぞ。オレたちは連れてこられただけの住民だ。オリオンの言うことを聞かなければ殺される。これまでのことを許してほしいとは言わない。ただ、真実を言って、謝りたかっただけだ』


 ヘラの瞳が私に向けられる。

 だが、私が何か言えることではない。


『ヘラ、アシリアは何も知らない。だから責めないでくれ』

「……わかった。タビト、アシリアに何か言うことは?」

『……無いよ。……皆、申し訳ないことをし____』


 同時に悲鳴と何かが呻く声と銃声がスピーカーモードの先から聞こえた。

 何が起こったかわからない。

 だが、ヘラは理解したかのように「やっぱりな」と呟いた。


「ヘラ?」

「行くぞ。もう後戻りはできない。……シャドウアースは助からない」

「どういうこと!?」


 ヘラはポケットにスマートフォンをしまい、私の隣に来て耳打ちした。


「……シャドウアースは元の姿に戻っただけだ。不思議なこと……つまり、あの星の奴らが対抗できないほど強力で未知のものが出現したということだ。不思議なことが起きない前提で作られていた世界の武器では必ず負ける……ブルーローズの腕をもってしても、な……」


 そう言ってヘラはサメさんの隣に戻った。

 そんなサメさんは何もわかっていないので、無神経に口を出した。


「何を言ってるかはわからないが、そろそろ着陸準備をしろよ。レーザーとかあっても知らねーぞ」

「サメ、ちょっと黙ってろ」

「あ゛ぁ!?」


 ヘラの冷静な突っ込みに不快を露わにするサメさん。だが、ここは二人ともが正しい。

 私は心の中でシャドウアースの彼らにお礼を言ったあと、船の制御装置に手を掛けた。

どうも、グラニュー糖*です!

現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!

こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。

本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!


なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!


ではでは〜

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