生きていた!
第四十四話 生存
宇宙に出て二時間後。
オレは船がオートなのを良いことに、昼寝をしていた。
ヘラはずっと寝ていたことだし、頑張っていたオレはもうヘトヘトだったからだ。
アシリアは何をしていたかわからない。
「よく寝たぁ……」
舵をとっているアシリアの方へフラフラと近づき、驚かせてやろうと忍び足を使う。
そして……。
「うわ!」
「ひにゃあ!?」
バッ、と肩に手を置いた。
作戦成功だ!
アシリアは驚きすぎて舵から手を離してしまった。だがオートなので問題なしだ。
……まずオートなのにどうしてそこから動かないのか。
「どうしたの?オートでしょ?」
「ほっといてよ……」
「えー……ん?」
ふ、とアシリアが隠すように両手で持っている袋に目が行った。
「なんだこれ」
「あっ!」
アシリアが手を引っ込めるよりも早くひょいと取ってみる。
かわいくラッピングされており、ずっしりと重かった。
「お土産?」
「うぅ……。本当はムジナにあげる予定だったのよ……でも冬馬くんが渡しちゃって……」
開けてみて、と促してきたので言うとおりにすると、中には黒い木と銀色の鉄でできた望遠鏡が入っていた。
「あれは……探していた今までのアンカーとかと同じ……貴重なものよ。そんな市販のものとは違うの……」
悲しそうにポツリポツリと言葉を紡いでいくアシリア。しかしどこからそんな資金が出たのか。
「でも嬉しいよ。ありがと!」
「いいのよ……どうせ月光さんが『うーん、そうだ!プレゼントとかはどうだい?これで買ってきなさい』って言ってくれたお金で買ったものだし……」
「月光さんの実費……怪しい」
「信頼が落ち切ったかわいそうなおじさんね……」
オレは二つの望遠鏡を見比べ、そして冬馬くんがくれた望遠鏡をアシリアに渡した。
「え?」
「これならオリオンに確実に着ける確率が高くなるんでしょ?ならアシリアが使って。これはオレが使うから」
有無を言わさずオレはアシリアがくれた望遠鏡を目元に当てた。
「うん!よく見えるじゃん!ありがと、アシリア!」
「ムジナがそれでいいなら……こちらこそありがとう。……ねぇ、ムジナ」
「ん?何?」
オレは望遠鏡から目を離し、アシリアの方を向いた。
唇に柔らかいものが当たる。
何事かと目を白黒とさせていると、アシリアは一歩離れ、にこっと笑った。
「もし……もしもだけどね。この戦いが終わったら……私の仲間以上の存在になってくれる?」
アシリアの水色の髪が紺色の続く宇宙に映える。
黄色い星が輝く潤んだその瞳は恥ずかしさと悲しみを兼ね備えていた。
その悲しみは何を意味しているのかわからなかった。
「……アシリアは……」
「?」
「アシリアは地に降りていいの?空を駆ける海賊、やめてもいいの?」
アシリアの瞳が見開かれる。
そしてくす、と笑った。
「ムジナは優しすぎるのよ」
「?」
「ありがとう。おかげで目が覚めた。最後の戦い……思いっきりやるわよ!」
____どこか空回りしているような気がした。
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「みーなさーん!!」
遠くから元気な声が聞こえた。
ヘラが嫌そうな顔をする。
誰かと思い、後ろの方を見てみると、何か青い光が見えた。
「……来たか」
ヘラが唸る。
しばらくして小舟とアシリアの船がドッキングし、小舟から女の子が……商人ちゃんがやってきた!
「こんにちはー!久しぶりだね!」
ニコニコしながら商人ちゃんはオレの手を取り、くるんと回った。
「商人ちゃん!」
「月光おじさんから聞いたよ!次、オリオンに行くんだって?」
「そうだよ」
笑顔になった商人ちゃんは一歩下がり、背負っている大きな茶色いリュックサックを床に下ろしてからガサゴソといじり始めた。
「何探してるの?」
「んふふー、見つかるまで秘密!」
二分くらいたったあと、商人ちゃんの顔が晴れた。
「みーつけた!」
「ん?」
「じゃ、おいで!新入りくん!」
ぴゅーいっ!と指笛を吹く。
するとドッキングした船から一人の男の人が乗船してきた。
……しようとしてきたのだが。
「……うぅ……」
「ほらー、会いたいって言ったのはキミでしょー?ちゃんと顔を合わせないと」
「だ、だが……あんな大口叩いておいて、おめおめと生き残ってしまったからな……」
なかなか姿を見せない。
ヘラと顔を見合わせていると、商人ちゃんが引っ張ってきた。
その顔を見たオレたちは固まってしまった。
「よ、よぅ……ムジナ、ヘラ……」
後頭部に右手を当て、恥ずかしそうに左下に顔を向け、目だけをこちらに向けたのはサメさんだった。
隠れていた片目の髪をピン止めで止め、両目が見えている。
ジャージ姿でも、サメさんはサメさんだ。
「さ、サメさん!?ほ、本物だよね!?」
「あの崩落から生き延びていたのか……!」
「ハコフグ姫に声かけた?心配させてない?!」
「ちょ、ちょっとお前ら……近いしがっつきすぎだ」
サメさんはオレたちのトリプルアタックに耐えきれず、思わず後退りしてしまった。
「実はあの戦いのあと、本当にもう終わりかと思っていたんだ。だが、商人ちゃんが来てな……俺を連れ出したんだ」
「そゆこと~♪」
商人ちゃんはニコニコしている。
サメさんが「ちゃん」付けで名前を呼ぶのは珍しい。
でも待って……どうしてサメさんがグランドゥプリュイを離れて暮らせているのだろう?
「サメさん、どうして水中じゃなくても生きられるの?あそこは魚にとっての地上、グランドゥプリュイならどこでも息ができるって言ってたじゃん」
「あー……あれな、商人ちゃんがわざわざ水槽を載せてくれたんだ。今はハコフグが渡したであろうその宝のおかげで息ができる。この船にいる限りは俺は生きることができるんだ」
そう言ってサメさんは船のふちに腰かけた。
「こうして生きているのも奇跡なのに、また三人に会えるなんて……俺は幸せ者だな」
「サメさん、牢屋から出て優しくなったね」
オレの一言にサメさんは目を細めた。
「元からジンベエザメはこういうのんびりとした性格だ。俺はハコフグやシロナガスクジラに『今から「サメ」として振る舞ってもらう』って言われて、あのトゲが付いたリングや足枷を付けられたんだ。怖そうに見せるためにってな」
「そんな……」
「ほら、よく見ると俺の髪の色とかはどちらかというとジンベエザメ寄りだろ。ってわからないか」
くくく、と楽しそうに笑うサメさんを見ていると、なんだか嬉しくなってきた。
外の世界に出られて本当に嬉しいのだろう。
あの星の水の中でしか生きられないサメさんが宇宙に出て暮らす。サメさんが人の姿にならなかったら実現しなかっただろう。人の姿になったからこそ実現した……なんて言ったら怒られそうだ。
「サメくん!」
「あ、あぁ……わかってる。そろそろ出発するぞ」
「よっ……」と体の重心を取り戻したサメさんは背中を向けた。
「行っちゃうの?」
「いや、お前たちのサポートをするんだ。お前たちに助けられたこの命……ここで使わずいつ使う?」
「……好きにしろ」
「ヘラ!」
後ろからの声に思わず叫ぶ。
ヘラは腕を組んだまま、下を向いていた。
ヘラだって心苦しい選択かもしれない。だが、サメさんが自分で選んだことだ。無理に引き留めてはいけない。……いけないのだが。
「ありがとうな、ヘラ。でも俺だって死ぬ気はない……頑張ろうぜ、みんな」
「うん!」
にや、と笑ったサメさんはいつもの頼れる姿をしていた。
「……ところで、どうやって行くの?」
「場所はわかってるから、近くまでワープするのよ。そこからバリアを破る。一発当てると暗いピンクっぽい色になるからバレるの。だからその一発勝負よ」
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




