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怪奇討伐部Ⅴ-Star Handolle-  作者: グラニュー糖*
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シャドウアース編9

第四十二話 微睡みの空




 大きな建物を出て後ろを見る。

 驚くほど大きく、高く、そして冷たく感じた。


 紗也さんはポケットに手を突っ込み、車のキーを探している。

 ムジナは護衛しようと向かったその時だった。


「見事だったね、二人とも」


 あの忌まわしい声が聞こえた。


「タビト……!」

「警戒しないでくれ。オレは降参だ」


 そう言ってタビトは両手を後頭部へと回した。


「ずいぶんとあっさりだな」

「……元からこの星での活動は破綻していてな」


 タビトはその場で胡座をかいた。

 目を閉じ、ゆっくりと顔を上げ……目を開けた。


「完膚なきまでに叩きのめすのがオリオンだったんだが、ここの住民は強すぎた。戦闘力も五分五分だ。そんな争いを続けていたら、いずれ戦争となり、この星が滅ぶまで止めないだろう」

「その種を蒔いたのはオリオンだ」

「それは百も承知だ。最後のピースとして絶対的な力を持つラスボス……お前を兵器として使いたかったがな……ブルーローズが「どうしてかわからないがやめてほしい」って言ってきたんだ。不思議だよな」


 タビトもブルーローズの変化には気づいていたのか。


「そのブルーローズは今どこに?」

「さぁ?今日もどこかでスナイピングしてるんじゃないか?」


 しらを切るつもりか、どこかを見ながら答えた。

 ……その方向はさっきの方向だったが。


「そうか。感謝するよ、ブルーローズ。……行くぞ、二人とも」


 タビトに背を向けた俺にムジナは不思議そうな顔をして近づいた。


「トドメは刺さないの?」

「刺さん。降参って言ってたしな」


 __________


「……よかったのか?ブルーローズ……いや、黒池」

「いいんだ、これで。あとその名前で呼ぶな。それは捨てたんだ……」


 建物の裏手から出てくると、タビトはタバコを吸っていた。

 紗也はおそらく俺が生きてることに気づいてくれただろうし、そもそも紗也に合わせる顔がない。


「ふーっ……。お前のおかげで負けちまったな」

「うるさい。終わらせようとしたのはお前だろ」


 俺はタビトの横に座り、火を受け取った。


「……見事なスナイピングだったよ」

「彼があそこまで行かなかったら俺は引き金を引くことはなかった」

「あくまで彼らの頑張りと言いたいのか?」

「そうだ。……これからどうするんだ?」

「どうするって……」


 立ち上がった俺の顔を目を丸くしながら見るタビト。

 オリオンの本拠地に戻っても、裏切り者として処分されるかもしれないだろう。ならば提案することは一つだ。


「行くところがないなら、俺のところに来て復興に手を貸さないか?」


 タビトに手を差し伸べた。

 ポカンと開いた口からタバコがポロッと落ちる。当たり前の反応だ。俺だってこいつには借りがある。こいつのせいで俺は紗也から姿を隠さないといけなくなったのだから……。


「お、オリオンが復興だと!?そんな馬鹿な話____」

「俺はお前を憎んでいるんだぞ?今ここで殺したっていい」


 俺はスナイパーライフルとは別に装備しているハンドガンに手をかけた。

 タビトの表情が曇る。

 だが、ここでオリオンを一人や二人殺しても根本的な解決にはならない。

 俺はハンドガンから手を離した。


「……歪んでいるな」

「まったく。その通りだ」


 どこの誰が言ったかわからないその言葉は、タバコの煙と共に空へと溶けていった。


 __________


「ムジナくん、アシリアちゃんが呼んでいたわよ。……って、彼は____」

「大丈夫」


 紗也さんの最強ドライビングテクを堪能しきったあと、彼女のアジトに到着した俺たちを待っていたのは若い女性だった。


 俺の顔をじっと見つめた後、紗也さんの一言で彼女は引き下がった。……しかし視線が怖い。


 彼女は紗也さんと俺たちをまとめて案内し、白で統一された建物の扉を開いた。


「ムジナ!それにヘラも!」


 どこかの事務所のような見た目の内装だ。

 明る……くはないが、少しだけ光が入っている。観葉植物と一つの額縁がある。その他には白い正方形のテーブルと白い丸椅子があり、アシリアと羊の角を頭につけたボブカットの男とも女ともつかない人物が向かい合って座っていた。


「この人は?」

「一度会っていますが。……あぁ、この姿では初めてだったね」


 にや、と笑ったあと、体が黒い霧に包まれた。

 霧が晴れてくると黒いフード付きコートが見え、オレンジ色の目が光った。


「あ!コルマーの!!」

「そう。虹の粉はオリオンの意思。そして命。溜まるのはもう少し後……」


 目を閉じ、うなずいた。


「イア。簡単に教えてあげなよ」

「アシリア……。仕方ない。ここまで来た勇者は君たちが初めてだ。自己紹介を含めて教えてあげよう」


 イアと呼ばれた人物はテーブルに置いていたカップに入った紅茶を一口飲んだ。


「僕の名前はイアドール・ネルソン。僕は男でも女でもないから、誤解を避けるためにもイアと呼んでくれ」

「イアは私のパートナーなのよ。……といっても、旅をしてくれる相手を探すためにお得意の変化を使ったりして噂を広めるだけなんだけどね。直接一緒には行動しないの」

「でもどうして合流したんだ?」


 俺は興味津々にイアの角を見ているムジナを見ながら聞いた。


「イアはここの人だからね。イアはその瓶を元に私の船の位置を調べてるの。だからここに立ち寄るってわかったときに落ち合おうって話になったの」

「アシリア、それじゃ僕が常にマークしてる変人にしか聞こえないよ」

「イアは元から変な人でしょ」

「ぐ……!」


 イアが振り返った衝撃で角がムジナの顔面に当たる。ムジナは顔を押さえてしゃがんでしまった。


「ーーっ!!ーーっ!!」

「ムジナ!」

「二次被害が起こってるから!謝りなさい、イア!」

「どうして僕が!!」


 ……イアって真面目そうだと思ったけど、そうでもないようだ。

 むしろワガママな子供って感じ……?


「大丈夫だよ……大丈夫……うん……」

「ったく……ムジナは俺が看る。イアはどういう目的でここにいるのかの説明を続けてくれ」

「わかった」


 イアは座り直した。


「まずはおめでとうと言っておきます。この星のオリオンを倒したのですからね」

「ありがとう」

「向かうべき星はあと一つ、オリオン。手強いですよ」

「だろうな」

「あなたたちはオリオンを倒す。それだけでいいんです。オリオンの意思が虹の粉としてその瓶に溜まるのですから。あと、地下の話ですが……」

「!」


 ここで地下の話を持ち出してくるとは思わなかった。そういえば虹の粉は地下に行くのに必要だと聞いたが……。


「さっきも言った通り、瓶は僕の「第三の目」でもあります。瓶からの情報で地下の敵について少しわかりました」

「それは?」

「鬼です」

「は?」


 鬼……鬼だと?

 あの鬼は外!の鬼、だと?

 昔話でも悪役として常連の鬼が地下で暴れて廻貌を追い出しただと?


「信じられないと思いますが、現実です。鬼は部下に天狗も連れているそうです。彼らはそれぞれの陣地を所有しており、そこにある「柱」を襲って自分のものにしよう、そういった活動を行っているそうです」

「その被害者第一号が廻貌と」

「ザッツライト」


 ちら、と廻貌を見る。

 どうやら眠っているようだ。そういえば昨日から一言も話さない気がする。


「しかもその鬼、女性らしいです」

「なにそのどうでもいい情報」

「どうでもよくありません!!」


 イアはバン!!とカップが揺れるほど机を叩いた。


「男と女で割り振られる力の天秤が変わってくるんです」

「どういうことだ?」

「面積の問題とも言われています。大人の女性ほど素手の状態の火力が男より上がります。代わりに男は武器を持った状態での火力が上がります」

「両方ヤバイじゃねぇか」

「いえ、その情報を知るのはごく一握り。元々の力が強いもとい、周りが弱いためそれを考えるまでもないのです。要は知らなければラッキー!ってことですよ」

「適当だな」


 そんな適当、投げやりになるほどの力だということでもあるだろう。まったく、誰のせいでそんな奴に立ち向かって行かないといけないんだ……。と、俺は廻貌を見た。


「その代わり、非常に強力な剣の持ち主がフリーとなるので、その廻貌と同じように自分の力とすることができれば勝てるでしょう。……タイマンなら」

「ちなみに上がる火力は?」

「五倍です」

「え?」

「五倍です」


 五倍。廻貌五本分。

 一本で倉庫に大穴を開ける廻貌が五本も。


「無理だ!俺の家が持たん!」

「何の話!?」

「……そろそろ話は終わったか?」


 壁にもたれていた紗也さんが唸る。

 車内で応急処置をしたものの、まだダメージは残っているようだった。


「えぇ。お邪魔しました、紗也さん。それにブリリアントの皆さんも」

「あぁ」


 紗也さんはさっきの女の人と共に外に出ていった。というかいつからあの女の人中にいたんだろう……。


「何をす____うぐっ!?」

「取り押さえろ!」

「おい、大丈夫か、紗也!」


 外が騒々しい。

 紗也さんに何かあったのか?!

 俺たち四人は顔を見合わせ、一斉に外に出た。


「紗也さん!?」

「離して!離しなさいよ!」

「……」


 さっきから紗也さんと話していた女の人が捕まっている。

 紗也さんは男の人たちに支えられながら口から出た血を手で拭った。


「こいつの男はブルーローズなのよ!仲間を何人も殺した男!!紗也はブルーローズを思い出して嬉しそうに笑ったのよ!?」


 その言葉にムジナと俺の堪忍袋の尾がブツンと切れた。


「お前!紗也さんは……紗也さんは、ずっとブルーローズに会うのを我慢してたんだぞ!」

「ブルーローズだって、倒れる直前に近くにいた俺の名前じゃなくて紗也さんの名前を呼んだ!」

「ムジナ……ヘラ……」

「「だから、二人のことを悪く言うな!!」」

「……」


 叫ぶ俺たちを差し置いて、静かに前に出るイア。あまりにも自然な動きだったので、誰も止めることができなかった。


「イア?」

「ムジナ、ヘラ。この人は工場から抜け出してきたサンプルらしい。僕が処分します」

「そんな急に!」


 周りの人も「そうだ、そうだ!」と口々に抗議する。だが、イアは引かなかった。


「オリオンが落ちたことにより、封印されてきた記憶が一斉に外に漏れたんです。それで混乱した人や、サンプルたちが暴れだしたのでしょう。各地でこの人のようなことが起こっていくでしょう。……アシリア」

「何?」

「ムジナとヘラを連れてこの星を出てくれ」

「そんな、まだ終わってないじゃない!」

「お願いだ」


 イアのオレンジの瞳で見つめられ、アシリアは何も言えなかった。


「……アシリア、本当に出るの?」


 ムジナが不安そうに顔を覗く。

 奥歯を噛み締めていたアシリアは踵を返し、叫んだ。


「知らないわよ!私は……私はオリオンの娘……っ!落とし前はきっちり付けるんだから!!」

「アシリア!行くよ、ヘラ!」

「お、おう……。……」


 二人は何も言わなかったが、俺はずっと気になっていた。

 ドラゴンソウルを通して見えた記憶……男の子の姿が見えない。

 だが、俺は一度も話したことがない。俺は気のせいだと割り切り、二人の後を追った。

どうも、グラニュー糖*です!

現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!

こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。

本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!


なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!


ではでは〜

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