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怪奇討伐部Ⅴ-Star Handolle-  作者: グラニュー糖*
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シャドウアース編5

第三十八話 復讐の魔




「ド、ドラゴン!?」


 なぜだ。あり得ないものが認知されない世界にドラゴンとは。


「ムジナお兄ちゃん……」


 冬馬くんは腰を抜かしてしまっている。

 ここからでも辛うじてドラゴンと呼ばれた『彼』の炎が見える。かなり高く飛んでいるので見えるのだ。


「大丈夫だよ、冬馬くん……」


 オレは冬馬くんの手を引っ張り、立ち上がらせた。彼はブーメランに手を伸ばしたが、手が震えているためホルスターのような布のケースを掴めずにいた。


『ヴ、ヴヴヴ……』


 オレは『彼』を見た。

 憎悪に燃える絶対零度の鋭い瞳。

 なぜ一番見えにくいところがここまで詳しくわかるかって?


 ……オレが飛んで近づいたからだ。


「ヘラ!」

『……』


 そんな名前は知らない、魂がそう語った。

 だが、オレは知らないふりをしてもっと近づく。


「ヘラ!」

『……まずはお前からか?』


 エコーがかかった、テレパシーのような言葉を発した。


『名は何という』

「……ムジナ。ムジナ・ルクエトリーパー」

『……ルクエ……トリーパー……!』


 オレの顔の真横を火球が掠めていった。

 後ろの建物に激突し、熱風と共に轟音が頭に響く。

 何事かと後ろを見た一瞬だった。


 ヘラが目と鼻の先までに接近していた。


『死神、どうして止めなかった!!』

「え、え!?」

『しらばっくれるな!お前たち死神は我らドラゴンが勇者に討伐されていくのを雪山の上から見るだけで、止めようとはしなかった!本来、死神や霊王は生者と死者のバランスを保つ役割も担っているはずだ。なのにどうしてだ!?』


 ……オレにはわかるはずがない話だ。


 ヘッジお兄ちゃんに聞いた話だが、ドラゴンソウルが初めて認知されたのはオレやヘラが生まれるちょっと前だったそうだ。


「わ、わからないよ……オレは、まだ生まれてもいなかったんだ。まず、霊王は干渉があるまで霊界から出られないんじゃなかったの?」

『ぐ……そう言われると反論の余地がないが……良いだろう、一つ教えてやる。霊王の話はデマだ。元はお前たちの世界の住民だっただろう。どうして霊界に『引きこもる』必要がある?』


 ハレティは引きこもっていた?

 確かに元は現魔界の人だったらしいけど……そう考えると、いつでも戻れたはずだ。権利とかそういう問題じゃない。「家に帰る」、それは誰もが持ち得る大切なものだからだ。


「知らないよ」


 でもよく考えるとハレティにはおかしな点はあった。

 初めて見た日……ハレティには神の力、もしくは気配がしていた。一番確率が高いのは……きっと、自分を利用しようとしているノートの目を誤魔化すため。

 魂と肉体を引き離すことで、お互いの居場所を隠匿することが可能になっていたのだろう。


 では、どうしてハレティには神の気配がまとわりついていた?

 答えは簡単。


 ____オレの気まぐれのせいで見つかっていたからだ。


『……その顔だと、察したということだな?』

「……ヘラを返して」

『それは無理だ』

「どうして!」

『久しぶりに現世に来れたのだ。とことん楽しませてもらう』

「た、楽しむって!?」

『そりゃあもちろん……』


 彼は少し離れてから、赤紫に変色した禍々しい翼を魔力でさらに拡大させ……


『世界を征服するのだ!』


 なんとも子供っぽいことを叫んだではないか!


『おい聞こえてるぞ』

「え!?何も言ってない!うわっ!?」


 うるさいとばかりに飛んでくる火の玉。

 後ろを見ても冬馬くんたちブリリアントのメンバーは見えなかったのでここは……存分に戦うことができる。


 ……というよりかは。


「こんの……やりやがったな!」


 ヘラの体を使って好き勝手行動するドラゴンソウルが許せなかった。

 ヘラがどうしてドラゴンソウルを抑え込めなくなったのかはわからないが、ヘラの姿をして暴れまわるのは俺が許さない。


 嫉妬に似たその想いは、水蒸気を鋭い氷の仮面へと形を変えた。


『それは……死神の無限の力……!』

「ドラゴンソウルにはこれしかないんだ」


 オレは感情のままに鎌を掲げる。

 魔力放出率六十……八十三パーセント……!


「行くぞ、ドラゴンソウル!」

『ふん……どうやらこいつは我の力を引き出しきれていないようだな』

「え?」


 彼はオレが動くより前に接近してきた。

 その手には____。


「エガタ!」

「すまない、ムジナ……魔法か何かで自由に動けないんだ」


 よく見ると少しだけだが、カタカタと動いていた。


 膨大な魔力のせいで見た目が変わってしまっている。そういえば、今までもヘラに合わせてエガタは姿を変えてきた。刃の黒は変わらないが、外装などが変わるのだ。


 元々は地下世界のすっごぉーい剣らしいが、この憎たらしい話し方を聞いたりしていたらそう思わなくなってくる。

 実際にオレは『廻貌』と漢字で呼ばせてもらえなかったり、レインなんか『雑魚』と呼ばれたりしている。

 イントネーションが漢字寄りだったりすると、刃物の方をこっちに向けて追いかけてくる。


『そんなにブーストして大丈夫か?このあと大事なことを残しているのだろう?』

「オリオンより、まずは親友を助けるのが先だ!」

『友達想いだな……っ!』

「親友、だ!」


 彼が飛ばしてくる炎を氷で相殺する。

 言葉のキャッチボールは成立しているが、攻撃は消させてもらっている。一方通行だ。打ち返したりなんかしたら、さらに威力が上がって返ってくることだろう。それだけは避けたい。


「本当のヘラはどこにいる!」

『それは実物か?それとも意識のことか?』

「どういうこと?」

『これを見てみな』


 先ほどとは違うが、確実に大きな青い炎を生み出した。


「うっ……」

『身構えなくてもいい。テレビだと思え』


 彼の言うとおり、本当に動画が流れ出した。


「うわ……」


 暗い……黒い……。泥だろうか?

 上から下へとゆっくり流れていく。

 粘度を持った『それ』は、ある一ヶ所に集まっていた。


「!!」


 黒の中に鮮やかな赤が一つ。

 項垂れ、微動だにしないその人影は……間違えるはずがない。ヘラだ。


「ヘラ!ヘラ!」

『ここからでは聞こえんぞ』


 そう言って炎を消した。


『ムジナ・ルクエトリーパー』

「なんだよ」

『戦って興が醒めた』

「え!?」


 突然何を言い出すんだ、この亡霊は。


『我とお前が戦っても、互いに相殺されるだけだ。終わりがない』

「それは……そうなんだけど……」

『ヘラの居場所を聞きたいか?』

「もちろん!」

『それはな____』


 彼が口を開いたその時、彼の翼を一発の銃弾が貫いた。

 ……魔力の塊なのですぐに戻ったが。


「工場、だろ?」


 撃ったのは紗也さんだった。

 小さな銃でビルより高い場所にいる標的を一発で仕留めるのは、もはや神業だ。


 当然彼は怒り、さっきよりかは小さな炎を飛ばす。だが、紗也さんはヒラリヒラリとかわした。


『貴様、人間の分際で……!』

「思った通りだ。お前みたいな気取った奴は、軽く見える技術に弱い」

「紗也さん、危ないよ!」


 オレは家にいたときのようにシャツにズボンというラフすぎる格好になった紗也さんに声をかけた。


 紗也さんはハンドガンから立ち上る煙をフッと息で消した。


「大丈夫。予想していた答えだったし、呼ぼうともしていた。そこのドラゴン、お前さん……最初から私を殺す気はなかったのだろう?」

「そ、そうなの?オレにだけ本気だったの?ひどくない?」


 紗也さんとオレの視線は彼に向く。

 彼はドラゴンのようにゴツゴツと変形してしまった左手を振り、首を横に倒した。


『少しだけ残ったヘラの残滓が抵抗していてな。意識が持っていかれそうになることもある。死神への攻撃は、恐らくこいつがお前を守ろうとする意志が反転しているからだろうな。我は普通に攻撃していたがな』


 変形した左手を下ろし、今回は右手でグッドサインを作り、胸をトンと突いた。


「ヘラが……まだ生きてる!」

『勝手に殺すな。我がこの体にいられるのも、ヘラが生きているからだ。死んだら次の体に移らねばならぬからな』

「じゃあヘラが死んだら……お前は違うところに移るのか?」

『そういうことだ。そうやって呪いは続いてきたのだよ。ムジナ』


 本人から聞くほど確実なものはない。

 だが……悲しきかな、ヘラが死なないとドラゴンソウルは解けない。

 ヘラは一生ドラゴンソウルに苦しめられるのだと。

どうも、グラニュー糖*です!

現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!

こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。

本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!


なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!


ではでは〜

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