シャドウアース編3
第三十六話 革命の予感
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ガタガタ揺れる車内。
正直、何度かお尻が浮いている。
アシリアはというと……。
「……っ!」
ビビっているのか、オレを掴もうとして……スカッと空振りしていた。
車内は子供の体にとっては広いのである。
「姉さん、後ろの二人大丈夫なの?慣れてないんじゃないの?」
「大丈夫っしょ!」
オレとアシリアは「大丈夫じゃない!!」と叫ぼうとしたが、また浮いたので出たのは空気だけだった。
てかなんだよ、「大丈夫っしょ!」って!完全に主観だよね!?こっちはさっきから浮いてお尻ぶつけて痛いんだ!
『そこのブリリアントのものと思わしき車体!止まりなさい!』
しかも後ろからパトカーが追ってくる。
パトカーは黒池の職場とマリフがいた建物に嫌というほど停まっていたので間違えるはずがない。
あれはパトカーだ。
「気を付けろよ、この街のパトカーは地の果てまで追ってくる」
「「そんな状況を作ったのはどこのどいつ____ギャー!?」」
車体が横に揺れた。
何事かと窓の外を見ると……
パトカーが。
サイドアタックを仕掛けてきていた。
「暴力!暴力パトカー!ぎゃあああ」
「ギャーギャー騒がないの。舌噛むわよ」
「これが騒がずにいられるか!」
言い争い中でも一発、二発とぶつけてくるトンデモパトカー。
一体どんな人物が乗っているのだろうか……。
「この街の警察はみんな真実を捨てているのさ。警察官になる条件はただ一つ、真実を知ってもそれを捨て、諦めることだ。奴等は青い空を捨てた。ここが本当の地球になったとしても、奴等は青い空を認めずにシェルターにでも籠るんだろうな。『宇宙人の侵略だ』なんて屁理屈を並べてな」
淡々と恐ろしいことを口にする紗也さん。
冬馬くんは当たり前だというばかりに首を縦に振った。
「ここはおかしいんだ。姉さんに本当のことを教えてもらって……。姉さんは違う人からそれを教えてもらったって言ってたけど、その教えた人は行方不明なんだって」
冬馬くんは前を向いたまま話した。
いつもは紗也さんに「変なこと言うな」と怒られるところだが……内容が内容なだけあり、それに運転中だということもあり、何もしなかった。
「きっとあいつらに消されたんだ。あの人自身も精神的にキツかったっぽいし……」
ちら、と冬馬くんが紗也さんの方を見たのが見えた。
どちらにしろ二人の表情は見えないが、きっとその人のことを想っているのだろう。
「どんな人だったか覚えてる?」
「もちろん。優しくて、料理がうまくて……あの人は何もかもを得ていたんだ」
「いい人だったんだね!」
そう言った直後、キキーッ!!と急ブレーキを踏み、紗也さんが窓を開けた。左手で車のハンドルを操作し、右手を外に出す。
その手にはハンドガンが握られており、勢い余って前に出たパトカーの前後のタイヤを狙い撃ちした。
パン!パン!と数発撃ったあと、タイヤに穴が開いたパトカーはクルクルと回りながら停止した。
「フゥー!さっすが私!」
「紗也さん!前にも誰かいるよ!武器持ってる!」
「えー?……あぁ、大丈夫大丈夫。ここが目的地だから」
紗也さんはゴーグルを外し、ハンドガンを座っていた席に放り、冬馬くんに持たせていた白を基調とした赤い線が入ったジャンパーを羽織って丸腰で外に出た。
オレたち三人は後を追って外に出る。
アシリアは最後まで車から降りようとしなかったが、オレと冬馬くんでなんとか降ろすことに成功した。
紗也さんの前にツカツカと歩いてきたのはボブカットの若い女の人で、彼女も周りの人と同じく白い服を着ている。
「紗也さん!あんまり派手に暴れないでください!あなたは私たちの切り札なんですから!ったく、いつもいつもあなたはこう……ブツブツ」
「会って一言目がそれか?それより見てくれよ、ほら。この星の人じゃないのがついに目の前に現れたんだ。これは革命の予感がするぜ?」
他の人たちがパトカーに群がり、中の人を引きずり出したりパトカーの部品を奪っていくのを見ていたオレとアシリアは「へっ?」と間抜けな声を出して紗也さんの方を見た。
「彼らが、ですか?……確かにあり得ない、ファンタジーな感じはしますが……」
ファンタジーな感じって……!
オレがどんなに苦労してるか、わからないのか!
……そう思った時にはもうオレの手には鳥の頭蓋骨を模した鎌が握られていた。
オレのような子供や普通の死神はそれぞれの好みの鎌を持つことができるが、お兄ちゃん……死神王は伝統である『デスサイズ』と呼ばれるおっきな鎌を持つことが義務付けられている。
死神王になる前に誰がなるかの話し合いがあり、決まった数人がデスサイズのレプリカを使う。今回はお兄ちゃんともう一人の女の人だったが、女の人はどこかに行ってしまったので周りからはあまり賛同されてはいなかったのだがお兄ちゃんに決定したのだ。
「オレはできるだけ人間に近づけてるの!!そんなこと言われたら黙ってられないぞ!」
「あーもー、ムジナ、鎌仕舞いなさいよ。冬馬くんが怯えてるわ」
オレはアシリアに掴まれ、前に出ることを諦めた。同時に異界へ鎌は消えた。
オレは人間が好きだ。だからできるだけ魂を刈り取りたくない。しかし月光は見たのだろう。
オレが、アルカディア全ての魂を刈り取った姿を____!
「……」
「……考え事?」
「月光……月光を探さないと」
冷たい水蒸気が勝手に舞った。
頭がフワフワして、自分が何を考えてるのかわからない。風邪引いたときみたいだ。お兄ちゃんにシチューを作ってもらわなきゃ。
「待ちな」
紗也さんがオレの肩に手を置いた。
大人の強さなのだろうか、オレの体は後ろに倒れそうになった。
「なに?」
「月光はこのアジトには来ない。あいつはここに行くと知ったらしばらくはフラフラと出かけてるんだよ。だから月光を探すのは諦めな」
そしてこう続けた。
「月光はただの旅人だ。この街の戦いに興味無いし、黒服たちを統括してるオリオンってやつのこともつい最近知ったようだ」
「さ、紗也さん……いくらなんでも教えすぎでは?」
女の人は困った顔で制止をかける。
それを見た紗也さんはオレを見て目を細めた。
「大丈夫だ。ムジナたちはオリオンと戦うためにここに来た、そう月光に聞いたからな。この星は比較的オリオンから配属されたメンバーの割合が大きいとされている。ここまで来たのだから、次は本丸に乗り込むんだろ?」
「そうなの?」
「えぇ。でもここでの用は済まさせてもらうわよ」
そういえば今回の用事は聞いてなかった。また何か集めるのかな……。
「こんなオリオンだらけの星に何しに来たんだ?」
紗也さんが腕を組んでアシリアを見る。
答えによっては……とかいうやつだったらどうしよう?と、オレはソワソワし始めた。
「私の部下がここにいるの。探すために私はこの場所を離れるわ。街に連れてきてくれてありがとうね、紗也さん」
「え!?オレはどうするの?」
「ムジナはどっちでもいいわ。どうするの?」
「オレはここに残る。もしかするとヘラに会うかもしれないし」
「そ。勝手なことだけど……ムジナのこと、よろしくね、紗也さん」
紗也さんは渋い顔をしていた。
「____気を付けなよ」
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




