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怪奇討伐部Ⅴ-Star Handolle-  作者: グラニュー糖*
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シャドウアース編

第三十四話 灰の街の探偵事務所




 __________


「まずはここの星の説明をしないといけないわね」


 アシリアは周りに紐を取り付けながら口を開いた。


「この星は反転してるって言ったわよね。その反転は真実と偽りについてなのよ」

「それは真か!」

「……まぁそういうやつよ。フィクションとノンフィクションがいい例かも。不思議な力が存在しないのがここ、シャドウアースなの」

「え!?(じゃあオレ自体がアウトなのではという顔)」

「大丈夫よ(来ちゃったものはしょうがないという顔)」


 アシリアはちら、と周りを見る。

 釣られてオレも見た。


 黒池がいた『東京』に似ている。

 しかし、あそこは明るかった。光がたくさんあって、スマートフォンを持った人間たちが歩いていて……光がないところは存在しないのではと思ったほどだ。


 それに比べ、ここは光なんかひとっつもない。

 誰も笑ってないし、魔力も感じられない。

 余程地球が恵まれた環境だということが如実に表されていた。


「でも、ここは一つ注意点があって____」


 アシリアが説明しようとしたその時だった。


「動くな!そのまま手を上げ、膝を地面に付けろ!」


 怒声と上に放ったのであろう一発の銃声が聞こえた。

 黒い服で警棒らしきものを手に持った男たちが屋上のドアを開けてヘリポートに侵入してきた。


「え?え!?ど、どうしよう……」

「ここは従うしかないわよ……」

「何をコソコソとやっている!」

「ふにゃ!!?」


 荒っぽい男が一人、また一人とにじり寄ってくる。

 これは……万事休すか……!?


「二人とも、逃げて!」


 少年の声が聞こえた。

 直後、派手な紫色をベースとしたブーメランが飛んできた。

 そのブーメランはピンポイントで黒い服の人たちの警棒や銃に当たり、落としていった。


「どこから飛ばしてるの!?」

「わかんない!でも、あの子の言う通り逃げよう!」

「ヘラは!?」

「……放っとけばいいよ」

「何言ってんの、親友でしょ!?」

「あいつなら絶対来るから!」

「ムジナ……」

「……泣きたいのはこっちだよ」


 アシリアの手を引いて、冷たい風の中走る。

 ヘラが作った帽子が飛ばされそうになった。


「……ヘラ……」


 瞬く間に黒に包囲されていった船。

 最後に見たのは、コートに手を突っ込んで船から降りる赤い姿だった……。


 __________


 水をポットで温め、カップに出す。

 カップにはお気に入りの紅茶の茶葉がお湯を今か今かと待ちわびている。


 ……なに、安物で味が強いだけのレモンティーのティーバッグさ。


 味が強くないとやってらんないよ。

 味覚音痴なんて言わないでくれ。

 その気になれば私はラーメン屋で他人がドン引くような味付けをする人なんだし。

 ……ニンニクとラー油と唐辛子をちょっと……そう、一般人よりちょっと多く入れただけさ。そう、ちょっとなんだよ。

 美味しいのにねぇ?(※個人差があります)


 周りからはこの紅茶を嗜むという趣味を「え!?あなたがそういう趣味を!?いつもシュールストレミング(世界一臭い漬物)とか、ブートジョロキア(世界一の辛さ。ジョロキアの二倍らしい)とか、ネオテーム(世界一甘い)とか、デナトニウム(世界一苦い)とか食ってそうなのに!」って言われるんだけど……。


 どういうことですかねぇ!?

 最初の二つはまだしも、途中から食べ物じゃなくなってるし!!ナメてる!?人間ナメてる!?おかしいよね!?てかあいつなんでこんなに詳しいんだよ!!


 ……と、そうこうしている間に紅茶がいい具合に混ざってきたようだ。

 安物でも、量産型でも良い味は出るものさ。だって、世に出せるとわかった上で売っているわけだから、そして大人気商品となり、この私の耳に入り、こうして私の手元にある、と。


「私が味が濃いのを飲むのは、この面白くない世の中を少しでも刺激的にしたいからっていうのもあるけどねぇ」


 そう言ってグレーの街並みを見てティーカップに口をつけた。

 うん、美味しい。

 このティーカップには特に金色の装飾とかはなく、どちらかというと安物で、白をベースにしてあとはよくわからない花の柄がちらほらと。


 ……そう、ここにはあまりお金がない。

 こんな寂れた『探偵事務所』に入ってくる客なんていないのだ。


「姉さん!姉さん姉さん姉さん!!!」


 ……たった一人を除いては。


「チッ。うるさいのが帰ってきたよ。あと私は『姉さん』などではない」

「あの黒いやつらに狙われてた人たち連れてきた!」

「よし!でかしたぞ!!」


 手のひらクルックルだぁ?

 そんなことはどうでもいい。

 簡単に言うと、この黒服たちを追い詰めれば、世界が変わる。

 ……もっと簡単に言うと、政府側の奴らだ。


 私はティーカップを置き……ちょっと溢れたな。あとで拭こう。……そして、応接間へと向かった。


 このグレーの街をちょっとでも忘れてもらうように、明るめにしている。

 カラー電球も使っており、一応客の好みによって変えることができる。


 これにはちゃんとした意味があって、文字通り『この街を忘れて、本来のイメージを思い出してもらいたいため』なのだ。


 この星は異常だ、普通じゃない。狂ってる!と思った住民は、ことごとく政府の犬である黒服に消される。

 しかし、本当のことに気づいた住民……通称『[[rb:明晰の民>セカンド]]』は白い礼服のようなものを着た『ブリリアント』というグループとなって活動を始めた。

 名前の由来はもちろんダイヤモンドで、男は『ディアマン』。女は『ディアマンテ』と呼ばれている。


 ダイヤモンドの石言葉は『永遠の絆、不屈』など。

 レジスタンスらしいだろう?


「……さてと。それで?一人足りないようだが?」


 少年は首をかしげた。

 最初からこの人数だったとでも言いたいのか。


「ヘラなんか知らないよ」

「この通り、ケンカ中なんです……」


 黒髪の男の子は不機嫌そうにし、女の子は申し訳なさそうにしている。


「……だってさ、紗也嬢?」

「げぇっこぉう……」


 ソファーの背中部分が少し沈む。

 音も無く部屋に入ってきたその男はどんなバランス感覚をしているのか、ソファーのはしっこで胡座をかいて笑った。


「そんな『前世から恨んでました』って声出さないでよ」

「どうして月光さんがいるの?!」

「さっきぶりだねぇ、お二人さん。ここはおじさんの第二の故郷だからね」


 月光は客人二人にフランクに接した。

 ここに来るまでに会ったのだろうか。


「で、ヘラはどこだ?」

「ケンカしてるのっ」

「そーんな、プリプリしちゃって、仲良くしないとダメだろ?親友なんだろ?」


 月光は頭を撫で回す。

 だが、月光には別に目的があるということは私もわかっていた。


「紗也嬢、このままじゃヤバイぜ。ヘラが政府に奪われちまう」

「わかってる。行ってくる」

「え!どこに?」

「そりゃもう工場しかないでしょ」


 私はさっきから話に振り回されている客人二人を見て言った。


「工場?」

「さっきの襲撃。あの時にそのヘラって人の反応が消えた。恐らく捕まったんだろ。で、この街の住人みたいに心を消すための工場に連れてかれたんだろうね」

「心を……消す?」


 男の子の顔から血の気が引いた。


「自分で取り戻すことはできるよ。賭けだけどね。いつも通り仲良く過ごすか、ケンカなんかしてて、結果会っても一生思い出されない。どっちがいい?」

「やだ……一緒にいたい……」


 男の子の目に大粒の涙が浮かんだ。


「最初からわかってるじゃないか。よく言うよ。キミ、名前は?」

「ムジナ……」


 ムジナは月光に助けを求めるような顔をしながら答えたが、奴め、無視する気だ。


「ムジナか。よし、行くよ、ムジナ」

「工場に?わかった!」


 ムジナは女の子の手を引き、私の後を追って建物を出た。


「姉さん!僕も行く!」

「お前はダメだ」

「どうして!?」


 ハンチングをかぶった短パン少年が叫ぶ。

 姉さんと呼ばれてはいるが、赤の他人だ。

 一緒に戦う理由はない。


「お前にはまだ早い」

「いつもそう言ってるじゃないか!ね?月光さ……ん」


 月光はどこかに行ってしまっていた。

 ……いつものことだが。


「月光だっていつも通りにしておけばいいって言ってるだろう?」

「いないけど!?」

「あの人の行動は、意見を語ってるのよ」

「めちゃくちゃだ……」


 ムジナまでそう言うとは思わなかった。……私がおかしいのか?


「あぁ、あとさっきの単独行動について後で話がある。震えて待て」

「やだよ、そんなゲーム情報の続きみたいな待ち方!」

「ウダウダうるさい!そんなこと言ってる暇があるなら、上着を着てブーメランを持ちな!」

「……!うん、姉さん!!」


 短パン小僧……いや、冬馬は目をキラキラと輝かせ、冬だというのに動きやすい薄手の上着を手に取り、いつもの紫色のブーメランを持って私の横に並んだ。

 子供の温度調節は私にはよくわからん。


「何だかんだ言って甘いのね」


 ムジナの隣の女の子が言った。


「私はただ駄々をこねられるのが嫌なだけさ。ほら、行くよ。鍵は閉めたか?冬馬」

「閉めたよ!姉さん!」

「暖房は?給湯器は?元栓は?電気は?」

「やった!」

「自分でやりなさいよ……」


 女の子が呆れている。

 居候にはこれくらいやってもらわねば。


「監視カメラは作動してる?捕獲用ネットは?レーザーは?クロスボウは?」

「待って待って待って!!物騒すぎない!?」

「?」

「いや『?』って顔されても!!」


 うるさい奴だ。

 そんなに旅人気取りしたいのか、この子供は。子供だけで旅をして、同情してほしいのか。

 この星ではそんな生ぬるい思想は通用しない。自分の命は自分で守る。他人をあてにしてはならない。当たり前だろう?

どうも、グラニュー糖*です!

現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!

こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。

本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!


なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!


ではでは〜

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