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怪奇討伐部Ⅴ-Star Handolle-  作者: グラニュー糖*
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洞窟の外の光、そして男の闇

第三十三話 上映終了




「あ!見て!出口が開いてる!」


 ムジナがはしゃぐ。

 それを見た月光も「おぉ」と感嘆の声を上げていた。


「開いてるって……閉まってたのか?」

「あ、そっか。ヘラは寝てたもんね」

「質量の法則を無視して封鎖されていたからさ。ホント、あの量の岩、どっから出てきたんだろうなぁ」


 この洞窟の高さは身長が百五十あるかないかの人の二倍……つまり三メートルほどだ。

 月光も江戸時代の人なのでそこまで身長は高くない。だが、俺たちが百四十前後なら月光は百六十くらいだろう。


 それが完全封鎖されるほどの岩が出現したと考えると背筋が凍る。


「でもま、宝は手に入ったことだしおじさんは満足だよ」

「月光さん、ビデオカメラなんて何に使うの?」

「いやそのままビデオ撮るんだけど……」


 そう言いながら懐にビデオカメラをしまった。

 急ピッチで締めたであろう帯が緩んでビデオカメラがズドン!なんて……無いか。


「……あのー、ヘラくん?おじさんのこと、じーっと見つめられても困るんだけど?あ、それともやっぱり君は____」

「アホか、今さら印象操作しようにも遅いんだよ」

「辛辣だね!?」


「うるせぇ!年甲斐もなくはしゃぐんじゃねぇよ!」と返し、前を見るとムジナがこちらを向いて不思議そうな顔をしていた。

 後ろから「反抗期かい?それとも照れてるのかな?」と聞こえたが、無視した。


「うーん」

「どうした?ムジナ」

「月光さん、前より優しくなってるね。何というか、人間味が戻ってるというか……」


 どうなんだ、と月光を見てみると彼は立ち止まって皮肉っぽく笑っていた。


「おじさんはここまでだ。君たちと外には行けない」

「どうして?」

「外にはノートの……月の力が満ちている。だから外に行くとまた狂気モードになっちまうんだ。つまり、建物や洞窟の中でしか正気でいられないってワケ」


 月光はお手上げだというようにため息をついて肩を竦めた。


「嫌なモードだな」


 そう呟いた途端、ムジナから痛恨の一撃が飛んできた。


「ヘラのドラゴンソウルも同じだよ」


 __________


「そんなに落ち込まなくてもいいのに」


 ムジナは洞窟の出口ギリギリで手を振る月光に手を振り返したあと、樽を頭から被って三角座りしているヘラを見た。


「なんでこんなにボロボロなんだよぉ……なんで扉壊れてんだよぉ……うぅ、土に埋まりたい……」

「バカね、宇宙に土なんて無いの!さ、裏地球に行くわよ」

「アシリアには俺の気持ちなんて一億年経ってもわからないんだよ!!」

「そんな小学生みたいなこと言ってないで、樽を戻しなさいな。みっともないわよ」

「ぬぐぐぅ……」


 ヘラは渋々樽を元に戻した。


 洞窟から出て、一目散に船に行ったと思えば樽を頭から被りだしたのだ。

 剣である廻貌が追い出されていたので、危機一髪されたいのかと思った。


「到着まで一時間ほど。二人はさっきのオリオンの船が来ないか見張っておいてね。バリア、あまり効かないから。早期発見が大事なの」

「病原菌かよ」

「オリオンの船に襲われるなんて、いよいよ本格的になってきたね!」


 ムジナがワクワクした声で言うが、ヘラの表情は暗かった。


「どうしたの、ヘラ。まだ引きずってるの?」

「そんなことはないが……。いや、忘れてくれ」

「?」

「じゃ、俺は後方を見とくから。ムジナには前を見るように伝えといて」


 ヘラは黒コートのポケットに手を突っ込み、その身を翻した。

 その背中はどことなく怒っているような気がした……。



「……そろそろ裏地球よ!」


 結局敵機の姿は見受けられず、無事に裏地球に到着することができた。

 いや、正確にはまだ到着していないが、ここまで来れば大丈夫だ。裏地球は太陽の光が届いていないのか、建物が大きいからなのかは知らないが常に暗いのだ。なので見にくい。

 イメージ的にはそう、曇りの日のロンドン。それが惑星全体に広がっているイメージだ。


 そのため、『シャドウアース』と名付けられたらしい。


「あれ、ヘラは?」


 ムジナは後ろから戻ってこないヘラに疑問を抱いた。


「いじけてるのよ、きっと」

「そっか。まぁ珍しくないからいいんだけど」

「よくいじけるの?」

「力について言ったときね。ヘラはオレのために強くなってくれてるんだけど……だからこそだと思う。たまにヘラのことが怖いもん」


 下を向いて目を細めるムジナ。

 こんなシリアスなムジナは珍しい。


「そうなの……。さぁ、着陸準備をするわよ。今回はヘリポートがあるから安心ね」

「安心なのかなぁ……ま、いっか」


 船はもう既に大気圏へと突入している。

 珍しくこの星には大気圏がある。反転しても地球は地球なのだ。


「バリアは解除して……って、今回はアンカーはいらないわよ」

「うえー、仕事がなくなったー」


 __________


 刺すように冷たい風が吹き、避雷針がギシギシと揺れる。

 帽子が飛びそうになったので、横に置いて荷物で固定した。


 スコープ越しに見える世界はなんと狭きことか。

 この寒空に曝されたせいでスナイパーライフルは氷のように冷たい。

 誰も見ていないし、誰も聞いていないので無線機は不要だ。元より一人なのだし、必要ないのだが……ハッキングした先の情報を手に入れるためには必要不可欠だ。不快極まりない。


「はー。……」


 大きく息を吐いて止める。


 ここはビルの屋上。

 風の動きをよく読まないと当たるものも当たらない。


 ____ターゲットが動いた!


「嗅ぎ回るネズミどもめ」


 くい、と引き金を引く。

 白い服を着たネズミどもを狙って撃った悪逆の弾丸は、見事に赤い花を散らした。


「よし……ん?」


 宇宙から何かが飛んできた。

 宇宙船だろうか。いや、それにしては古い見た目だ。


 まさか『あちらの地球』のものなのだろうか。

 もしそうだとすれば、生かしておくわけにはいかない。この星の人間たちが真実に気づいてしまったら……。


「まったく、面倒事を」


 スコープの世界を船で満たす。


「子供が乗っているのか」


 子供が一人、二人……三人いる。大人は見当たらない。


「……む?」


 ____水色の髪、星の瞳……。あの顔、どこかで……。

 いや、仕事に私情を持ち込んではいけない。スナイパーはただ依頼されたことをこなすだけだ。

 だが……。


「あの娘……上に報告せねばならないな」


 スコープから目を離し、スナイパーライフルを片付ける。

 日頃から触っているので無駄な動きなくスピーディーに終わった。


「よっこいしょ。……はぁ」


 ちら、と東の方向を見る。

 大きなビルがそびえ立っている。あそこに連絡をしなければならない。


 ……あぁ、こんなことになるなら無線機を持って来ればよかった。


 そうぼやきながらスナイパーライフルが入った鞄をギタリストのように背負い、耳元まで隠していたマスクをはずす。

 ゴムで止めていた長い黒髪をほどき、一般人のフリをして帰路につく。


 その背中はまるで全てを失った男のもののようだった。

どうも、グラニュー糖*です!

現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!

こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。

本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!


なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!


ではでは〜

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