グランドゥプリュイ編11
第二十七話 サメとハコフグ
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剣の軌道が少しズレる。
光の入り方がまずいのだろうか。
それは幻覚のように、懐かしいもののように傷つけてはならない、大切なものだと訴えかけてくる。
「くそ……あまり効いてないみたいだ」
「ヘラもそう思う?」
それにしても妙だ。
守りに徹するのではなく、俺たちを上回る力があるのならさっさと仕留めればいいものを、どうして戦いを長引かせるようなことをしているのだろうか。
何かを……待っている?時間稼ぎでもしようというのか?
魚たちのタイムリミットはそこまで短くないはず。では、どうして?
「やい、オリオンのやつ!やるならさっさとやれ!」
「いや、まだまだ時間はありますよ」
体の大きさ、見た目の年齢に反してちょこまかと動き回る大臣。無性に腹が立つ。
「何のために長引かせている!」
「何のためって、元より素晴らしい力をお持ちのあなた方にも神の力を見てもらいたくてね。あなた方ならきっと使いこなせる」
「それはオリオンへのお誘いってやつか?バカめ、入るわけないじゃないか。な、ムジナ」
「そーだそーだ!!」
ムジナがグーにした右腕を突き上げて叫ぶ。予想以上にノリノリだ。
「『イレギュラー』でも持ち込まない限り、オリオンは、神は倒せない!」
「あぁ、ならちょうどいい……な!!」
「何っ!?ぐあっ!?」
勢いよく開かれたドアからサメが飛び出してきた。大きく腕を振りかぶり、大臣の顔面を殴った!
「どうして……まさか、お前は____」
後ろに吹っ飛んだ大臣は上半身だけ起こし、唸った。口を切ったのか、血が出ている。
「『イレギュラー』か何だか知らねぇが……俺は俺だ。……すまなかったな、ムジナ、ヘラ」
「ううん、大丈夫だよ。お姫様が部屋を出たときはビックリしたけど、サメさんが来たならアシリアあたりが保護してくれてるんでしょ?」
「その通りだ。同盟……やっとこれでこの星から排除できるな。お前らには聞きたいことがたっくさんあるんだ。覚悟しな」
サメは手をボキボキと鳴らしながら近づく。
「まずは手始めに……ハコフグに何を吹き込んだ?」
「何って……そうだな、この星には勝ち目がないということと……反乱分子にはキツい仕置きが必要だということだな」
大臣は口の血を拭いながら言った。
「そして、政治についてはオリオンに有利になるように教えた。暗い部分は抹消することも教えたな」
____こいつのせいであだ名が『グランドゥクラウディ』なのか……。
「それだけか?」
「あとは……くく、そうだな。サメ……お前が一番の危険人物だと教えたな。小さな魚と危険な鮫……どう考えても餌と天敵の間柄なのに仲良くしているところを双方が見た。結果、和平案を出そうとしていたそうじゃないか。さすがにそれはオリオンにも不利だと思ったのだ」
「だから攻撃してきたのか?」
「いや、手当たり次第の中の一つだったな」
「貴様っ____」
サメがもう一度殴ろうとする。
しかし、その間にイサキが割り込んだ。
「どけ!イサキ!」
「まだダメです」
イサキは背の高いサメを睨んだ。
サメは右の拳を握り締めたまま口を開いた。
「そういえばお前も姫を制御してた側だったな。お前も同盟に寝返ったのだろう?」
「……姫は、成長していくにつれ、ご自分が何をなさっているのかをお気づきになっておられました。たまにこちらに聞かれるのですが、何もできず……。大臣に『変なことをすれば姫の命はない』と脅されていたのです。いつしかその行動は姫の精神にとっての毒になって……いつストレスが爆発してご自身を害されるのか時間の問題になっていました」
イサキは心底悔しそうにしている。この話は本当のことだろう。
ハコフグは、自分が溜めてきた毒で周りを害すことも、自分を傷つけることもできる。まさに泳ぐ時限爆弾だ。
それは人の形になっても逃れられなかったようだ。
「なので……」
イサキはなんと、ナイフを取り出した!
皆が驚いている間に大臣に近づいた。
「やめろ、イサキ!」
「!?」
俺はイサキの前に出た。
どうしてそんなことをしたのかというと、イサキとO-57が似ていたからだ。
自分の星を崩壊直前までに追い詰めた相手を庇い、悲しみを生む。そんな場面はもう二度と見たくなかったからだ。
「そんなことをして姫は喜ぶと思ってるのか?」
「そ、それは……」
「お前がやったと知ったら姫はどう思う?」
「……」
「それ半分脅迫じゃない?」
「ムジナ、ちょっと黙っててくれ」
この星の命運をかけた戦いに脅迫など関係……いや、どうだろうか。とにかく負けは許されない。
「……じゃあ、どうやって罰を下すんですか!!」
「そりゃあ捕虜にしたり____」
俺が考えながら言葉を口にした瞬間、大きく地面が揺れた。
ドウン!!と大きな音もした。
柱にヒビが入り、窓ガラスが割れた。俺は驚くイサキの手を掴んだ。
「どうしたの、これ!?」
「ムジナもシャコも来い!外にテレポートして出るぞ!____サメも!」
サメに手を伸ばす。だが、彼は手を伸ばそうとはしなかった。
もうテレポートを発動してしまっているため、あっちが手を伸ばしてくれなければ置いていくことになってしまう。
「サメ!!」
「……」
「早く!サ____」
目の前がまばゆい光に包まれる。
テレポートが発動してしまったのだ。
光が消え、周りを見た。
……レジスタンスの皆はもちろん、ムジナ、イサキ、シャコがいて……走って出てきたのだろう、アシリアや姫もいた。
やはりサメの姿がない……。
「サメ……」
背後にそびえ立つ城を見る。
中でまだ崩壊が続いているのか、轟音は鳴ったまま。幸い、アンコウがいる塔は無事だ。
「サメさんはきっと決着をつけるために残ったんだと思う」
ムジナがそう言うが、本当にそうなのだろうか。
「ねぇ……あの人はどうしたの……?」
姫がアシリアの元を離れ、悲しそうな声を出しながらゆっくりと近づいてきた。
「ジンベエザメは……?大臣は……?」
その声は震えていた。
「どうして……どうしていないの?!まだ中にいるの?!」
「姫!崩壊が収まってから捜しましょう!」
「終わってからじゃ遅いの!!」
姫の悲痛な叫びに思わず身をすくめるイサキ。彼は何か言おうとしたが、すぐに口を閉ざした。
「今は……サメを信じるしかない」
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ヘラがテレポートを実行したので、この部屋には俺と大臣しかいない。
もうイサキに邪魔されたりはしないのだ。
……邪魔してくれたりはしないのだ。
「この爆発はお前が仕組んだのか」
「もちろん。オリオンが栄えればいいからな。邪魔者も消えて一石二鳥だ。ま、仕留め損ねたがな」
「……狂ってやがるぜ」
俺は嫌悪感満載で呟いた。
「だが、お前のような『レジスタンスが城を落とすために計画した』と言えば、これはお前の責任となる」
「そうだな」
「ずいぶんと冷静じゃないか。レジスタンスのリーダー・ジンベエザメ」
大臣はニヤリと笑ってきた。
だが、もうその顔を見るのは最後だ……。
どこにいても見られているというのは終わりにしよう。あの強大な存在感……ずっと監視されている気分になるのだから。
俺は、それを終わらせるためにここに残ったのだ。
「ジンベエザメは常に優雅であるべきだ……そうだろう?シロナガスクジラ……いや、裏切り者めが」
俺はポケットに手を突っ込んで呟いた。
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




