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怪奇討伐部Ⅴ-Star Handolle-  作者: グラニュー糖*
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グランドゥプリュイ編10

第二十六話 作戦開始




『サメを始め、レジスタンス、俺たち、イサキ……と同盟は捕まえる対象を大胆にしてきている。これは大変面倒な変化だ』


 オレはシャコさんと歩きながらヘラの言葉を思い出していた。


『敵は恐らくあの大臣一人だろう。ということで、ここからはチーム分けさせてもらおうと思う』


 そのチーム分けの結果がこれだ。


『オレはイサキと。ムジナはシャコと。アシリアはサメとだ。あとのレジスタンスのメンバーには陽動を任せる』


 窓の外を見ると、チカチカと光が見える。

 レジスタンスが炎を使って陽動を行っているためだ。


『所定の位置に着いたら俺は炎を出すから、ムジナには水蒸気を出してほしい。それを見てサメには大臣に突撃してもらい、その隙にイサキを送り出す。いいな?』


 ヘラの作戦通りに動いてくれればいいのだが……。


「不安か?」

「えっ?」


 シャコさんがサイドを刈った髪を撫でる。

 ちら、と見えたのは切り傷だった。


「ん?……あぁ、これか……」

「ちょっと不安だけど……その傷は?」

「骨だよ」

「骨?」

「ちょっとグロい話をするが……まぁ簡単に言えば、死んだ魚人はその体に比例した量の骨が出るわけさ。それで……同盟のやつらが殺して飛ばしたレジスタンスのメンバーの骨で切れた、ってわけ」


 やつら……?ということは複数いるというわけなのか……?


「まぁ心配するな。もう同盟はあの大臣だけになってるからな」

「よかった……」

「ほら、そろそろ目的地だ。あの力を見せてくれよ、ムジナ」

「うん」


 __________


 みんなから離れて三十分ほど経った。

 外の炎の数は減ってきた。

 城の気温が上がったり下がったりしている。ヘラとムジナの力だろう。

 私はこの戦いを終わらせて、宝を借りなければならない。

 もしもの時は、殺してでも……いや、隣にいるサメがそれを許さないだろう。


「この扉の先が食堂ね」

「……なぁ、アシリア」


 サメが足に付いた鉄球を外しながら口を開いた。

 それ、自分で取れたのか……。


「どうしたの?敵前逃亡でもするつもり?」

「アホか。そんなことしねぇよ。それより、俺が何を言おうとしているかわかっているだろ」


 左手を腰に、右手を私の背後の壁に勢いよく当てた。いわゆる……。


「か、かかっ……壁ドン!?」

「これで逃げられないぜ。……お前さ……」


 サメの瞳が冷たく、鋭く光る。

 それはこの話は浮わついたものではないと物語っていた。


「オリオンの野郎の一人娘、だろ」

「!!!」


 あまりのことに言葉も出なかった。


「一人だ。一人だけお前の名前を呼んだ同盟の輩がいた。タビトって奴だ」

「……タビトなんて知らないわ」

「そうか。だが、確かに聞いたさ。お前の名前をな」


 恐らくお父様は私が出ていったあとにそのタビトという人を雇ったのだろう。


「でも同姓同名もいるかもしれないわ」

「そう言い張るならそれでいいと思う。だがな、どうしてそんなに震えてる?」

「は、はあ!?こ、これっ、武者震いだから……」

「……そうか」


 サメは敵意を露わにしてから腕を下ろした。

 そういえば、この人は出会った時に気付きかけていたんだっけ……。


「……念のために聞くけど……いつから気づいてたの?」

「この数日だ。あれからずっと考えていた」

「私を殺すの?」

「そんなことしたらヘラに焼かれる」


 サメがドアに向かい合ったその時、ドアが勢いよく開いた。


「え!?」

「姫!?」

「!」


 ____姫が部屋から出てきた!?作戦はどうなったの!?


「……ジンベエザメ……!」


 姫の丸い目が見開かれる。

 中から戦闘音が聞こえてきた。ムジナやヘラたちが戦っているのだろうか。

 しかし、この空間だけが時間が止まったかのように息がしにくくなっていた。


「ハコフグ」


 彼女の名前を呼ぶサメの瞳は、今までに見たことのないほど優しいものだった。


「……その名前で呼ぶのは今も昔もあなただけよ」

「元気にやってたか?」

「えぇ。あなたは……少し憔悴してる……?」

「治りかけだ」

「それはよかったけど……どうして外にいるの?」


 姫の核心をついた問いに私とサメは「うっ」と唸って固まった。


「……って聞くのは野暮な話よね。知っているわ。やっと動き始めたのね」

「じゃあ塩が必要なのもわかっているな?お前も、俺も、イサキも必要なことは……」

「ちょ、ちょっと、何言ってるの?!」


 ____この男、まさか作戦の内容をターゲットに話すつもり!?


「大丈夫だ、アシリア。……それで?どうなんだ?」

「……知っているわ。イサキの料理がどんどん塩辛くなっていってたのも、イサキの手がどんどんおかしくなっていったのも、牢からの病人がどんどん増えていっているのも……」

「どうして治そうとしなかった?」

「治せなかったのよ!……あの新しい大臣が全てやるって言ったから託したのに全くやらなくて……やるとしても、どうして調べていたのですか?って勘付かれるのが怖くて……」


 姫は泣きそうな顔で話す。

 やっと話せたからなのか、彼女は安心して膝から崩れ落ちた。

 ……姫も姫で困っていたようだ。

 それなのに、私は姫も大臣も敵と思っていた……サメは一体どんな考えだったのだろう?


「ハコフグはここで待ってな。俺たちが同盟を倒してやる」

「待って!」


 サメがドアに手をかけたその時、姫が叫んだ。

 サメも私も驚いて姫の方を見る。


「私は多分助からない……それどころか、あなたたちまで殺してしまうかもしれない」

「な、何言ってんだよ。俺たちはハコフグと星を守ろうと____」


 サメが姫に近づく。

 しかし姫は同じ距離遠ざかった。

 そんな一進一退が続く。


「何で離れるんだよ!」

「私の……ハコフグの特徴、わかって言ってるの!?」

「あぁ、当たり前だろ。そんなの____」


 ハッとサメの顔が青ざめた。

 私もフグと聞いて察してしまった。

 彼女もサメと同じだ……触れることを、そして近くにいることを嫌っているのは____。


「猛毒、パリトキシン……」


 パリトキシンとは、あの有名なフグの毒であるテトロドトキシンより強い毒。そのテトロドトキシンは青酸カリより五百倍以上の毒性を持つと言われているのだが、パリトキシンはそれ以上……数万倍だ。マジでやっばい毒なのである。


「で、でも、昔は普通に触れた!どうして?」

「ハコフグは、食べたものなどに入っている毒を蓄積するらしいの。何年も、何年も知らない間に続けてきた……今、私にどれほど毒が溜まっているのか、わからないわ……」

「なら解毒薬を____」

「現時点では存在していないわ。ましてやこの星よりも発達している……そうね、地球にも無いのよ」


 姫から直接伝えられた言葉に絶句するサメ。こんなにも耐えてきたのに、その仕打ちはないだろうという顔をしながら拳を握っている。その手は震えていた。


「……あいつらのせいだ……ハコフグに変なことを吹き込んだから……」

「サメ?」

「くっ!!」

「ちょっと!待ちなさい!」


 私の制止の声を聞かずにサメは勢いよくドアを開き、ムジナたちの戦いに参戦していった。

 残された私と姫は顔を見合わせた。


「……ねぇ、さっきの話は本当なの?」

「はい。生き物全てが必ずしも完璧なサイクルを行っているとは限らないのです。ほら、あなたたちだって暑いとき、寒いときはあっても完全にちょうどいい日なんて無いでしょう?」

「……海のギャングのウツボに手足が無いように、毒があるのに自ら動き回ることができないイソギンチャクのように、凶暴な鮫に対抗する手段があるように、止まったら死んでしまうマグロのように……?」

「そうです。生き物には必ず天敵というものがあります。人間にとっては死が天敵でしょう。誰でも死は怖いものです」


 ____姫の言葉で思い出したことがある。

 ハコフグを水槽に入れると、そのハコフグの皮膚から出た毒で他の魚が全滅したという話だ。

 さっきサメに言ったのはこれを恐れたことだろう。


「だからってサメを傷つけるような言い方をしなくても……」

「私だって傷つけるつもりはありませんでした。ですが、自然界最強クラスの毒といわれるパリトキシンを持つハコフグは……毒舌にもなってしまうのですね」


 誰がうまいことを言えと。

 だが、間違ってはいない。間違っては……いないんだ。

どうも、グラニュー糖*です!

現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!

こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。

本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!


なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!


ではでは〜

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