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怪奇討伐部Ⅴ-Star Handolle-  作者: グラニュー糖*
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グランドゥプリュイ編8

第二十四話 保存




 隠れ家に到着し、サメさんをゆっくりと寝かせた後イサキが面倒を見ていた。

 料理の準備をしたあとしばらくして、ヘラがこっちにやってきた。


「そういえば塩の話してなかったな」

「そうだよ!何に使えるの?」

「……ムジナは魚料理を食べたことがあるか?」

「うん!この前作ってくれたじゃん!レチタたちが獲ってきた魚を調理したの、忘れちゃったの?」


 レチタとは、レチタティーヴォのことだ。

 そしてもう一体の化け物さん……アリアと一緒にいる。

 二体はレインの妹であるスノーが生まれる前から取り憑いていた呪いで、今、化け物さんたちとスノーは仲良くやっているそうだ。

 彼らはスノーの腰に巻かれている大きな茶色いリボンに封印されており、そのリボンは黒く変色し、異形へと変わっている。


 それもこれもレインが弟のサニーとスノーを見つけ、もしくは見つかり、再び家族として一つになったからである。

 レインは初めて見たときはボロボロで頼りない印象を受けたけど、今はもう頼れる立派なお兄ちゃんだ。……未だにヘラとはあまり仲良くないけど。


「あれは獲れたて新鮮だったからな」

「どうして目が死んでるの?」

「あ、あぁ……ムジナは見てなかったよな……うん……」


 どこか遠くを見て頷くヘラ。

 聞かない方が身のためかもしれない。


「それより!早く教えてよ!」

「あー、はいはい。それはな、魚を保存するためだよ」

「保存?しないとダメなの?その場で食べれないの?」

「……なぁ、聞くけどさ、『海』からイリスまでどのくらいかかると思う?」

「えー?そんなの聞かれても……」


 ヘラはテレポートが使えるし、オレやお兄ちゃんは特別な時空の穴が使えるので、特に考えたことはなかった。確か普通に行くと……。


「……二日……くらい?」

「もっとかかる。その間に腐るだろ」

「うぅ……待ちきれなくて食べちゃうとかは?」

「アホか、何のために運ぶんだよ」


 ヘラは頭を抱えた。


「一緒に食べるため……」

「そう!そのために保存する!それには塩漬けするのが一番なんだよ!……はぁあああ、やっと言えた……」


 体全体でため息をつき、両手の拳を握って、突き上げてと忙しい。


「塩辛そー」

「どうしてあいつらがそんなに塩に固執するのかも、もしかしたら新鮮なままでいたいから……みたいな理由なんじゃないか?よくわからんがな」

「あはは、確かに不死は憧れちゃうよねー!」

「お前が言うな」


 ジト目で呆れるヘラ。

 それもそうだ。死神のオレが不死について言及するなんてのはちゃんちゃらおかしい。

 死神がその不死を目指す者たちの命を刈り取るというのに。

 死神の目的はただ一つ、『平等』だ。

 世界が正しく回るためにはたとえ仲のいい人でも"刈り取ら"なければならない。

 もしそれが今、目の前で病人を見て微笑んでいる親友でも____。


「ムジナ?何ボーッとしてるんだよ?」

「あ、え?あぁ……何でもないよ」

「そうか……とりあえずイサキに話を聞こうじゃないか」


 ヘラはイサキの方へと歩いていく。

 彼は辛そうに自分の手を見ていた。


「……イサキ、大丈夫か?」

「あ……はい」

「お前たちに何があったか教えてくれるよな?」

「はは、半分脅しじゃないですか……私も協力していただきたかったので、元々教えるつもりでしたよ」


 イサキはもたれていた体を起こし、ヘラに微笑んだ。


「まずイサキはどっちの味方なんだ?」

「もちろん私は姫と共にあります」


 当然だ、とドヤ顔で返すイサキ。

 それをヘラは渋い顔で受け止めた。


「いや、そういうことじゃなくてだね……」

「わかっていますよ。私はこの星の幸せを願っています。同盟が悪だということは重々承知です。なので私はあなたたちの味方ですよ」

「じゃあこっち側と。……サメと仲良くできるか?」

「姫を守る身としてはいいえと答えたいのですが____」

「で き る よ な ?」

「は、はい!できます!仲良くさせていただきます!」


 ヘラが笑顔で詰め寄り、イサキがビビりながら顔を引きつらせる。

「焼き魚にされずに済んだな」と手に炎を湛えたヘラがそう呟いた気がするが、気のせいだろうか。


「よし、イサキは大丈夫だな!」

「オレたちレジスタンスも協力するぜ」

「助かるよ」


 シャコさんたちも協力してくれるそうだ。

 あとはサメさんが目を覚ますのを待つだけだ。


「なぁ、イサキ」

「どうしました?」

「お前にはあとどれくらい時間が残されているんだ?」

「……その事ですか。場所を変えましょう」


 ヘラがイサキに手を引かれて部屋の奥に行く。オレはその後を追った。


「____はぁ!?むぐっ」


 武器が一通り置かれてある倉庫に響くヘラの声。その後すぐに口を押さえられたのか、苦しそうな声が聞こえた。

 オレは見つからないように扉の横に身を潜めた。


「しー!若干は抑えることはできますが、私の場合はもう限界なのです。さっきも見ましたよね、鱗の腕を……」

「あぁ。ビックリしたよ。……もしかして、この星の全員がそうなるのか?」

「……はい」


 イサキの言葉にオレは固唾を飲んだ。

 それを言うならサメさんも同じではないか。あの時掴んだサメさんの手はまさに鮫肌というようにザラザラしていた。

 鮫には鱗と言える鱗が無いらしく、道具を使って見ないとわからないほどの小さい鱗が集まっているだけらしい。

 それがザラザラしているように感じ、その総称が鮫肌になった。


 それが本当なら、もうサメさんの体も限界____。


「急がなきゃ!!」


 オレは足を踏み込み、眠っているサメさんの元へと駆け出した。

 もし……もしもだけど、それが事実なら……あのハコフグのお姫様や、イサキや、サメさんや、シャコさん、その他レジスタンスのみんなが死んでしまうかもしれない……!


「ムジナ……?」

「聞いてたんですね……」

「……ムジナは……ああ見えて俺より強い……俺なんか到底敵わない力を持っているんだ」


 オレは周りの人を押し退けてサメさんの手を握る。その手はやはりザラザラだった。


「ぅ……うぅ……」


 サメさんの指がピクンと動く。

 気がついたようだ。

 しかし目を瞑っていてもわかるほどのしかめっ面で、苦しんでいることがよくわかる。


「サメさん!」

「こ、ここは……どこだ……」

「隠れ家だよ。どこか痛いところはない?」

「大丈夫だ……それより、早く助けに行かねぇと……。うぐっ!」

「無理しないで」


 サメさんの口から苦しげな声が漏れる。

 すると突然、咳き込みだした。


「ごほっ!?げほっ、げほっ……」

「サメさん!?誰か、水!水!」

「これを!」


 コップに入った水をシャコさんから受け取り、サメさんに飲ませた。

 背中をさすり、サメさんの顔を覗く。

 涙目になっており、元からボサボサだった銀色の髪はさらに乱れていた。


「げふ!?」

「何だこれ、プラスチック?」


 水を飲んで落ち着いたサメさんの口から出てきたのは、なんとプラスチックだった。ヘラがよく使っているルアーの一部のようだ。赤ちゃんでもあるまいし、どうしてこんなものを体に入れていたのだろうか……。


「お前もだったか……」

「シャコさん?」

「普通の魚に戻りかけると発生するものだ。お腹の中にある誤飲したものや食べ物が戻ってくるんだ」

「その誤飲したものがプラスチックのルアーだったの?」

「そうだ」


 それなら合点がいく。

 サメさんが食べ物を食べなかったのはお腹の中に食べ物が戻ってきたから。

 それを知っていたからだろう。

 しかし、断食していたのは結構昔だと聞いた。なら……サメさんの魚化はいつから起こっていた?


「……一般には鮫の寿命は二、三十年と言われている……そうだろ?」


 いつの間にか部屋から出てきていたヘラが壁にもたれて口を開いた。


「二、三十年?じゃあとっくに死んでるんじゃ……」

「ムジナ、サメの魂見てみろ」

「え!?魚の魂なんか見たことないよ!!」

「だーいじょーぶ!いけるいける」

「ウソウソウソウソ!?ちょちょちょ!!」


 ヘラに背中を押され、サメさんの前に向かい合う。

 レジスタンスの皆は何も言わず、干渉もしてこない。

 アシリアも沈黙を貫いていた。

 サメさんは諦めたかのように目を瞑り、口を結んでいた。


「……え?」


 サメさんの本来の姿が見えた。

 鮫は鮫だ。だが……。

 大きな体。斑模様。大きな口。優雅に泳ぐ姿。

 どう見ても『ジンベエザメ』だ……!!


「でかっ!!!怖っ!!!」

「どういうことなんだ、ジンベエザメ?」

「……」


 サメさんの……いや、ジンベエザメさんの表情が曇る。


「威嚇にはこうするしかなかったんだ」


 ジンベエザメさんは歯を食いしばって下を向いた。

 確かに優しいジンベエザメより鮫と言っておいた方が強そうだ。だが、嘘は良くない。


「……これだから『グランドゥクラウディ』って言われるんだ」

「『曇った大地』か?……不透明な、嘘つきな星に似合うあだ名だろうな」


 シャコさんが吐き捨てる。


「不透明な政治、嘘、見えない城……私たちはそこからそう呼ぶようになった。自業自得っていうのよ」

「アシリア!!」

「止めなくていい、ムジナ」

「でも!」


 アシリアの言葉に怒ったオレをジンベエザメさんは静かに止めた。


「どこともコンタクトを取らなかった俺たちが悪い。……そうさせた同盟もな」


 ジンベエザメさんの目には闘志が宿っていた。

 ひしひしと伝わってくる同盟への恨み……それが今、アシリアに向けられたものとはオレたちはまだ知らなかった____。

どうも、グラニュー糖*です!

現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!

こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。

本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!


なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!


ではでは〜

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