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怪奇討伐部Ⅴ-Star Handolle-  作者: グラニュー糖*
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グランドゥプリュイ編5

第二十一話 珊瑚の城




 __________


「……話というのは?」


 姫が玉座に座って問いかけた。

 ここは謁見の間。

 床にはレッドカーペットが敷かれてあり、窓と玉座以外は何もない、質素な部屋だった。


 扉の前にはイサキではなく、見たことのない、中年くらいの男が立っている。

 今日はイサキの番ではないのだろう。


「私たちの目的のためにこの城に伝わる羅針盤を貸してほしいのです」

「何のために?目的とは一体何なのです?」

「……同盟……オリオンの破壊のためです」


 途端に姫の表情は曇り、「そうですか……」と呟いた。

 すると、扉の前に立っていた男が駆け寄り、姫の前にひざまづいて叫んだ。


「姫!同盟に歯向かう者ですぞ!姫、ご命令くださいませ!こやつを……あのレジスタンスの愚か者と同じように牢屋に閉じ込めましょうぞ!」

「えっ?歯向かう……?姫……?」


 私は驚き、姫の顔を見る。

 すると姫は一瞬悲しそうな顔をしてから男に命令した。


「____大臣。この旅の者を捕縛、そして投獄しなさい」

「姫……ありがたき幸せです。やはり姫はお分かりになっておられる!」

「うるさいわ。早く行きなさい」

「はっ!……こっちだ、罪人」

「え!?ちょ、何で!?」


 私は全く理解ができないまま、大臣と呼ばれた男に腕を掴まれ、そのまま三階の謁見の間からサメたちと同じ地下牢に連れ込まれた……。


「いたっ!」


 牢屋に到着し、私の体は荒々しく投げ込まれた。


「何するのよ!さっきの言葉といい、あんた同盟の人ね!?」

「そうじゃないとしたら何だ」

「うぐ……」


 こいつには何言っても無駄だと思った。

 私は同盟の性根を叩き直さないといけない。なので言いくるめられるわけにはいかないのだ。


「ここで頭を冷やして反省しろ」


 そう言って大臣はどこかに行ってしまった。

 もちろん鍵は持っていかれた。

 深海のようなひんやりとした空気が不安感をあおる。

 ムジナとヘラは気づかずに調査を続けていることだろう。

 ……さみしい。これじゃあ地球に着く前と一緒だ。


「……早く……気づいてよ……」


 私が体育座りをして呟くと、奥から不機嫌な声が目の前の牢から聞こえた。


「気づいてるぜ。……まーたお前か?えっと……」


 ジャラジャラと足枷の音を鳴らして頭を抱える男が一人。

 ……サメだ。


「……アシリアよ」

「アシリア……アシリア?どっかで聞いたことのある名前だな……気のせいか」

「えぇ、気のせいよ」


 サメは怪訝な顔をしてため息をついた。


「……で?これは全員が一人ずつ牢屋にぶち込まれるって流れか?」

「そんなわけないでしょ!ムジナとヘラは強いんだから!」

「あのドジと料理バカが?ありえねー」


 そうやって揉めていると、少し離れたところから口論が聞こえてきた。……激しく嫌な予感がする。


「離せ!この(自主規制)!!」

「さらっととんでもないこと言ったよ!?口が悪いよー、ヘラ」

「うるせー!(自主規制)はどう転んでも(自主規制)なんだよ!!」


 何を言っているのかはわからないとして、最悪だ。二人までここに来てしまった。ヘラにとっては二回目だが。

 まだ子供の姿の二人は担がれている。

 後ろ向きに運ばれているヘラはどうにかして大臣を攻撃しようとするが、足は空を切るばかり。

 大臣には一つもダメージはない。


「ムジナ!ヘラ!」

「ちっ、遅かったか……」


 私が鉄格子に手をかけ、二人の名前を呼ぶ。それを聞いたヘラは抵抗をやめ、舌打ちした。


「遅かったかって……この城が同盟の傘下ってこと知ってたの?」

「ついさっき知って、お前を助けようと城に戻ったらこのザマだよ……」

「不意打ちだったんだ……ごめん!」


 二人が悔しそうに言ったあと、二人は同じ牢屋に入れられた。

 この短時間で二つも牢が埋まってしまった。


「嬉しくない再開だな、ムジナ」


 サメは彼の隣の牢に向かって声をかけた。

 ……男女で分けてるのか、はたまた偶然なのかはわからないが、サメとムジナたちは隣同士のようだ。


「ほんと!サメさんを助ける予定だったのに」

「俺なんか助けたって何の意味もねーよ」

「そんなこと言ってー。お姫様が待ってるよ?」


 ムジナがニヤニヤしながら言う。

 明らかにサメの表情が変わった。

 まさかこの状況を打開する鍵がサメとあの姫だというのか?


「……くそ。何でもいい。失敗するなよ」


 あれほど否定的だったサメが折れた。

 ムジナとヘラは顔を見合わせた後、お互いに頷いた。

 そしてそれぞれ異界を開く。ヘラは廻貌を、ムジナは鳥の頭蓋骨を模した装飾のある鎌を取り出した。


「さすがに異界までは封じれないみたいだな、この牢」

「マスター捕まってやんの、ダッセェ」

「うるさい、牢を開けたあと地面に突き刺して置いてくぞ」

「ひどっ!!」


 ヘラはニヤ、と笑って廻貌を構える。

 ムジナは呪文を唱え、周りが見えないほどの水蒸気を生み出した。


「アシリア、伏せてくれ。直線上は危ないからな」

「危ないこと?」

「ううん。ぶっ壊すだけだよ!」


 ムジナがガラにもないことを叫ぶ。

 その瞬間、温度が急激に下がった。

 水蒸気はムジナの一部かというように自由自在に制御されている。


 水蒸気は気体を通り越して鋭い氷の槍へと変化した。

 それを手に取り、残りの水蒸気は鉄格子にまとわりついた。

 そして目にも止まらぬ早さで鉄格子に攻撃するムジナ。


 一方ヘラは廻貌に炎をまとわりつかせ、廻貌の低く猛獣のような呻き声が響く。

 力を溜めているのだろう。


 今、畳八畳ほどの部屋で絶対零度を思わせる寒さと地獄のような熱が共存している。

 放っている二人には影響はない。

 果たしてこれは現実なのだろうか。

 普通ならありえない。

 私は二人を甘く見すぎていたのかもしれない……。


「ヘラ!」

「いくぞ、廻貌!」


 ヘラが廻貌を振り下ろす。

 直後、爆音が響いた。

 水蒸気で何も見えない。

 しばらくして二人の牢を見ると、なんと鉄格子が粉々に砕け散っていた。


「やったー!成功だね!」


 この光景を作り出した張本人とは思えないほど無邪気に喜ぶ。


「ムジナ、喜んでる暇があったら鍵を作れ。今ので覚えただろ?」

「もー、ちょっとは喜んでよー!でも、時間が無いのは本当だね。わかったよ、ちゃんとやる」


 ムジナは再び呪文を唱え、氷でできた鍵をいくつか作り出した。半分をヘラに渡し、二人で鍵を開けていった。

 あんな爆発、必要あったのだろうか。


「はい、サメさん」

「ムジナといい、ヘラといい……お前ら、一体何者なんだ?」


 サメは警戒しながらかなり身長差のあるムジナに質問した。

 ムジナは純粋な赤い瞳をサメに向ける。

 そしてニッコリと笑った。


「オレたちは悪魔だよ!ただの魔法使いじゃなくて、悪魔なんだ!」

「……そっか。人は見かけによらないってか。……これぞまさに『悪魔に魂を売る』ってやつだな」

「うまいことはあとで聞くから、先に塔まで逃げてて!」


 ムジナは有無を言わさずサメの背中を押す。

 そして最終的に地下牢には私たち三人だけになった。


 ……はずだった。


「もういないよね?」

「……んー!んーん!」

「あら?誰か……ってあなたは!?」


 上着は無くなっているが、ドジっ子そうで美形の男の人が牢の中で横たわっている。

 黒髪に近いが、緑がかかった金髪混じりの……イサキが捕まっていた。

 その後ろに回された手と足には鎖を、口に布を噛まされ、逃げられないようにされていた。


「イサキ!?どうして捕まってるの!?」


 ムジナが驚きながら拘束を解く。

 口が自由になったイサキは咳き込んだあとムジナに礼を言った。


「す、すいません……捕まってしまいました……」

「イサキ、理由を話して!」

「とりあえず、この騒ぎで大臣が来てしまいます。なので塔に行きましょう。皆さんがいるのでしょう?」

「う、うん……イサキは同盟の人じゃないの?連れてって大丈夫?」

「はは……それくらい信用されてないんですね……」


 イサキはふらつきながら壁に手を当てる。

 その手は少し見た目がおかしくなっていた。……鱗のような……。


「イサキ、その手……」

「……隠してたんですが……バレてしまいましたか」

「とりあえず塔に連れていくぞ。見たところ、悪さもできないほど疲弊してるし」


 ヘラが牢屋に入り、肩を貸す。

 ヘラはできるだけ鱗化している手を避けた。

 とにかく怪しいイサキは監視が必要だ。

 とりあえず塔に連れていくが、それが吉と出るか凶と出るか……結果はわからないが、何があったか全部吐いてもらうことにしよう。

どうも、グラニュー糖*です!

現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!

こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。

本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!


なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!


ではでは〜

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