グランドゥプリュイ編
第十七話 水の星、グランドゥプリュイ
各々考えることがある中、俺たちは無事に船に乗り込み、飛び立った直後だった。
「ねぇ、ヘラ」
「何だ?アンドロイドを持って帰ろうだなんて思ってないだろうな」
「思ってないよ!それより、なんかあっち光ってない?」
「えぇ?」
ムジナの言うとおり、指差す方を見てみる。すると、本当に光が出ていた。不定期にチカチカしているではないか。
「アシリア……は忙しいか。おかしいな、誰もいないはずなのに」
「何か訴えてるのかも」
「訴えてる?それなら、もしかすると……モールス信号かも」
『--・-- --・ ・-・・ ・・ ・・-・・ ・・-』
「『ありがとう』だってさ」
「うわっ!?アシリア!操縦は!?」
突然耳元で聞こえてきた声に俺は飛び退いた。どう考えても心臓に悪いし、誰が操縦するんだってなる。
「オートにしたの。この船は特殊で、パーツが増える度機能が向上していくのよ」
「特殊すぎるだろ!生き物かよ!こえーわ!」
「失礼ね」
____いつかこの船、誰も乗ってなくても動き出しそう。
「……何?その目。これでも私がいないと動かないわよ?」
そう言って持ち場に戻るアシリア。
それを聞いていたムジナは彼女を追いかける。
「アシリア!次はどこにいくの?」
「次?そうね……どうしよう」
「え!まだ決めてないの!?」
……なんだか揉めているようだ。
仕方ない、俺も追いかけるとするか。
「何の話だ?」
「次どこに行くか決めてないの」
「ふーん……なら水の星は?」
「水の星?ヘラ、そんなの知ってたんだ」
ムジナが目を丸くする。
一方アシリアは少し嫌そうな顔をしていた。
「商人ちゃんに聞いて……って、どうしたんだ?アシリア」
「うーん……グランドゥクラウディ……」
「へ?何?呪文?」
ムジナが冗談を言う。
チラッとムジナを見たアシリアは大きくため息をついた。
「何かため息つかれた!そんなにくだらなかった?!」
「そういうことじゃないの。グランドゥクラウディはね……水の星のあだ名なのよ。それも良くない意味の、ね」
そう言い切った時はすでに宇宙空間に出ていた。
光はもう見えない。内容的にはO-57からだろうか。
せめてデータだけでも取り出してナビゲーターとして利用できたのだが、O-57はそれを望まないだろう。
だって彼女は……最後までO-57でいたかったから。
__________
ギュンギュンとすごい勢いで星の海を渡る船。
いつもの部屋に戻ったヘラは「寝る」と一言言って爆睡し始め、アシリアはグランドゥクラウディまでの道筋を調べている。
さっきグランドゥクラウディという名前はあだ名だということを知った。なので本当の名前を聞いてみたい気もする。
「アシリア!どう?行けそう?」
「えぇ。あそこ綺麗だし、いつかは行かないといけなかったから、ちょうど良かったわ」
「へー、何があるの?」
「羅針盤よ。ほら、今まで地図で調べてたからさ」
「綺麗な星の羅針盤!うん、楽しみ!」
羅針盤となればスコープは先延ばしだ。だが、綺麗な水の星だというのだからやっと宇宙に出たって感じがしてきた。
まず宇宙に水なんてあったんだ……。
「あ、そういやグランドゥクラウディってあだ名なんだったよね。本名は何なの?」
「グランドゥプリュイよ。見渡す限りの水ってことで、地面は雨……水。だからそんな名前なのよ」
ヘラなら詳しいが、今は寝ている。覚えてたら後で聞こうっと。
「そうなんだ!水の星らしい名前だね!……で、クラウディってなに?」
「……ちょっとは勉強したらどうなの?クラウディってのは、曇ってるってことよ。お城があるんだけど、見た目は綺麗でも政治が不透明だからクラウディって不名誉な名前がつけられたの。一体誰がそんなあだ名つけたのかはわかんないけど、星の人からしたらとんだ迷惑よね」
確かにそうだ。例えば故郷のクノリティアに変な名前つけられたら悲しい。それと同じだ。
「グランドゥクラウディはそんなに離れてないからすぐに着くわよ。そうね……三十分くらい?」
「じゃあヘラはちょっとしか寝れないね」
「ま、今回はお城を見つけて、主に目的を説明して羅針盤を譲ってもらうだけだから私一人でも行けると思うわ」
「ダメだよ!オレがアシリアを守らないといけないもん!アシリアは戦えないし!」
「ムジナ……なら、お言葉に甘えるわ」
アシリアはニコッと笑い、地図を片付けた。
そういえばヘラは泳げない。
なら船の中で待機させるのが一番だろう。
逆に戻ってきたら釣りでもしてるかもしれない。よくイリスで釣りやってたから……。
というか寝てるのってもしかして次の星で泳ぎたくないから狸寝入りでもしてる?
_____三十分後……_____
「ムジナ、ずっと横にいなくてよかったのに」
「だってヘラってば爆睡してるもん!やることないでしょー」
そう言いながら船の外を見る。
すると周りのバリアがキラキラと消えていくところが見える。
そのさらに外には綺麗な青が見えた。
ヘラの本で見た太平洋のようだ。
太陽光はあまり届いていないので暗めだが、ヘラと一緒に魚釣りしたい気持ちにさせる。
少なくとも魔界の海よりかは安全だろう。
「それもそうね。じゃ、着陸する……わ……」
アシリアの顔が青ざめた。
「ん?どうしたの……って、うわ……」
アシリアが見る方向を見ると、そこにはザ・無人島というような、ヤシの木一本しか生えることができないレベルの狭さの島があった。
周りには何もない。
海。一面の海だ。
船を停められそうな場所はない。
「あー……水の……星……ね~……」
とりあえず高度を低くする。
もしかすると見えないだけで、何か仕掛けがあるかもしれないからだ。
「何かあった?」
「ううん、なぁ~んにも」
アシリアはスコープを下ろし、お手上げだとジェスチャーした。
「そっかぁ……ん?なんか変な音するね」
何か重低音がする。
この周りに何もない場所でさらに恐怖を煽るような、そんな音だ。
何者かの唸り声のようにも聞こえる。
心なしか、寒気もしてきた。
「ちょっと!変なこと言わないでよ!」
「だ、だってぇ……」
そうこうしていると、天気が一瞬で曇りになった。
オレとアシリアは驚いて見上げる。
直後、視界が真っ暗になった。
そして浮遊感もある。
一言で言うと、ヤバい。
「アシリア!?なんか流されてない!?」
「ムジナ、アンカーを使って流されるのを止めて!あのアンカーは止まろうとしたところに必ず止まるから!多分! 」
「多分!?でもやらない手はないね……!」
オレは手探りで紐で繋がったアンカーを探し出し、船の外に放り投げる。
直後、引っ張られるような感覚がし、何か硬いけれど少し柔らかいものの上をゴリゴリと擦れていっているような気がした。
「止まらないよ、アシリア!しかも何か気持ち悪い!」
「私もよ……まるで生き物に飲み込まれたみたい……」
「えぇー!?……うわっ!!」
アンカーの能力もむなしく、流されていく船。
ついにアンカーが引っ掛かるところもなくなり、その時の大きな衝撃によってオレたち二人は気を失ってしまった……。
__________
「……ナ……ムジナ!」
「う、うーん……」
どのくらい経ったのだろうか。
アシリアの影の向こうに幻覚のようなものが見える。
すごい……大きな……お城……。異世界でも来てしまったのだろうか……。だってさっきまで海だったんだし……。
「起きなさい!」
「うわぁ!?」
アシリアから耳元に向けられた大声で飛び起きる。
そして左右を見渡す。
オレたちは船から投げ出され、木製の船着き場で倒れていたようだ。
「やっと起きたのね。……なにすっとんきょうな顔してるのよ。あれが目的地……グランドゥプリュイのお城よ」
海水でびしょ濡れになったアシリアが後ろを指差す。
そこにはそのいわゆる『珊瑚でできたお城』が建っていた。
白い色をしており、結構大きなお城だ。こんなところに建っているなんて誰が想像できようか。
「おっきいね!そういやヘラは?」
「見てないわ。最悪の場合、はぐれたって可能性もあるけど……あら?」
アシリアが何かに気づいた表情を浮かべる。起き上がったオレは生き物の魂を感知し、アシリアを守るように前に出た。
「騒がしいと思って外に出てみたら……何ですか、このにおいは。魚ではない者がいるのではなくて?」
重々しく開いた鉄でできた門から出てきたのは、髪の毛を上で団子ヘアにし、ドレスを着た、上も下も丸っこい……お姫様のような女の子が出てきた。
「姫!出てきてはいけませんと何度……!」
その後ろをバルディのような服を着た……おそらく召使いであろう人物が追ってきた。
彼の言うように、やはり姫なのだろう。
「失礼しました、姫。私たちは旅の者です。グランドゥプリュイのあなた様にご協力いただきたく、参上いたしました。……ほら、ムジナも頭下げて!」
「え、あ、う、うん。えーっと……ごめんね」
……オレには小さな子にはいつも同じように接してしまう癖がある。
その度にお兄ちゃんやヘラに叱られてきた。だが、治ることはないだろう。自慢じゃないけどね。
案の定、アシリアと召使いが凍りついた。
「な……ムジナ!?」
「そこの怪しい男!今姫に何と……!」
「え、だからごめんねって……むぐっ!?」
「あははは、ムジナってば、もー!」
「ん、んー!!」
口を押さえられた。
しかし、姫はくす、と笑った。
「面白いわね。いいわ、お城に入れてあげる。イサキ、部屋を用意しなさい」
「わ、わかりました。では、船長、失礼極まりない方、どうぞこちらへ」
「失礼極まりないって失礼だね」
「それ、普通に言えるムジナがすごいわ」
開いている鉄の門の中に案内されるオレたち。
中に入ると大きな橋があり、周りは水槽になっていた。もちろん色とりどりの魚たちが泳いでおり、そこだけでも数時間は暇潰しできそうなほど種類が多かった。
「魚がいっぱいだー!いいなぁ、毎日見れるんでしょー?」
「そんなのすぐに見飽きるわ。望んで作った水槽じゃないもの」
「そ、そうなんだ……ごめんね」
姫は前を向きながら素っ気なく答えた。
「ムジナってお城とか来たことないタイプでしょ?」
「えー?そんなことないよー」
「本当?嘘でしょ?」
「嘘じゃないよ」
そういえばアシリアにはライルの話をしていなかったかも。
昔、オレは魔王ライルの参謀をしていた。
なのでお城は庭同然だった。だからお偉いさんにもこんな口調で話しちゃうんだけど……。
「あ、そういえばあとでヘラを呼んでこないと」
「そうね。落ち着いたら行きましょう」
「まだ仲間がいるの?」
ヘラのことを話していると、姫が話しかけてきた。
「うん。一番の親友だよ。赤い髪の毛で、ピョンって跳ねてるんだ」
「赤い髪の毛……ピョンって跳ねてる……?」
「姫、もしかすると……先ほど捕らえた男では?」
捕らえた?ヘラを?
「えぇ、そうかもしれないわね。彼、城周辺の魚を狂人のように捕まえまくっていたのよ。なんでも、調理するとか何とか……」
「あー……やりそうだね……ヘラ、家事となるとすごいことになるから……」
いつもは止めてるが、あの人は家事となると止まらない。壊れたロボットかのようにご飯を作り続け、家まるごと掃除し(もちろん武器庫も)、シフのエプロンを作り、オレとお兄ちゃんの服までも作った。
まさに一家に一人という感じだ。
だからこそ、こんな海の中と思われる場所は天国のようなところだろう。
なぜか息できるし。
ヘラは泳げないのでピッタリの場所だ。
「あなたたち、彼の仲間だというなら警戒しないといけないわね。あなたたちも魚を捕獲するかもしれない可能性が出てきたもの」
「いやいやいや!料理できるのはヘラだけだよ!もちろんオレも釣りは好きだよ?でもオレは見る専!だから捕獲なんてやらないよ!ね!アシリア!」
「そうです!ヘラの料理は一流だけど、私たちはそんなことできないですよ!それに、協力を求めている相手を怒らせるようなことはしないもの。きっと、ヘラはさっきまで寝てたから私たちの話を聞いていなかったんですよ!」
オレたちの必死の言い訳で姫は目を閉じて頷いた。
「そうなのね。じゃあ彼は本当はいい人、と……イサキ、行き先変更よ。牢に向かいましょう」
「わかりました」
イサキはクルッと方向転換し、歩いていた廊下の端へと向かった。
なぜわかったかというと、その部屋だけが異様な雰囲気を醸し出していたからだ。
「周りが白いのにあそこだけグレーだね。蝋燭立ってるし」
「あの部屋に入るには相当な覚悟が必要よ。あそこには……ううん、見てもらった方が早いわ」
イサキがポケットから取り出した鍵で門を開ける。暗くて埃っぽく、そして石でできた階段がさらにこの場所の異様さを際立たせていた。
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




