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怪奇討伐部Ⅴ-Star Handolle-  作者: グラニュー糖*
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ハードコア編8

第十六話 この身朽ち果てるまで




「ご主人様……もうおしまいにしましょう?これは私、O-57からのお願いです……」


 一歩、一歩と歩く度にO-57の関節部分から火花が散る。

 ムジナの氷の加護があったのだろう。


 ここまで離れてしまったのでオーバーヒートを抑えるストッパーが無くなってしまったのか。


「火花が出ているではないか、O-57……いや、オリオンのアンドロイド内最高にして最後の傑作、クロノス……」


 クロノスとは、ギリシャ神話の時間の神の名前であり、土星の別名でもある。


 土星といいオリオンといい、同盟は星が好きすぎるだろ。


「クロノスって時間の神だろ?だからわざわざ時計塔を最期の場所にしようとしたのか?」

「そうじゃよ。時計塔の一部となった失敗作の攻性アンドロイドとクロノスを一網打尽にし、復興を不可能にしようとしたんじゃが……君たちが来たおかげで全て意味の無いものとなってしまった」


 このおじいさんを『ご主人様』と慕っていたO-57を自爆紛いのことをさせるだなんて外道だ。人のすることじゃない……いや、人じゃなくてワンチャン宇宙人だったか。とにかくありえないことだ。


「……少年、いつから気づいていた?」

「屋敷で二人で話したときから察していたよ。O-57の話と周りの風化速度が噛み合っていなかったからな。その時から思っていたさ____」



 俺は一息ついて廻貌を仕舞い、O-57とおじいさんの間に割って入った。


 O-57が止めようとしたが、俺は右手をO-57に向け、それを止め、下ろした。


「この星を守らないと、データを書き換えられて騙されてきたアンドロイドたちが報われないってな!!」


 俺は下ろした右手を握りしめ、大きく振りかぶっておじいさん……いや、不完全なアンドロイドの頬を一発だけ殴った。


 これは俺の感情ではなく、アンドロイドたち全員の想いを込めてぶつけたものだ。もしこれ以上口を開けば、このおじいさんは「アンドロイドに感情、自我なんて無い」などと言ってくるだろう。


 だが、それは違うと思う。


「O-57は俺と二人だけの時に言っていたんだ!『本当は瓦礫の山となってしまった屋敷の部屋の一つに最後の部品があったんです。屋敷を破壊していた攻性アンドロイドを倒したのではなく、ご主人様が失敗作として保存しておいたアンドロイドを爆発させて、残骸が残っていただけでした』って。……O-57は気づいていたんだ!『ご主人様は本当は同盟の人なんです。だからこそ、攻性アンドロイドから守らないといけません。ご主人様は私の恩人……マスターなんですから』って!」


「ヘラさん……」


 O-57はボロボロになって三つ編みがほどけてしまった髪を揺らし、殴った後の体勢のままだった俺の肩にバチバチと音がなる両手を置いて俺の名前を呟いた。


「……お前の負けだ。もうそんな体じゃ満足に動けないだろ」


 俺は近くに置いてあったブラックライトを手にし、おじいさんの足を照らした。


 型番が書いてある。


 シリアルナンバーの内の一つに見覚えがある。


 いつ作られたかの記録だ。


 ……人間界でいう江戸時代初期だ。


 リストが生まれるより前だろう。


 なら、まともに動けずに車椅子で移動することに合点がいく。


 まさか数百年前からアンドロイドの技術があったということに驚きだが、宇宙人なのだから疑うことはない。何があってもおかしくないからだ。


 俺は身を翻し、さっき通った道を戻ろうとしたその時だった。


 おじいさんが話しかけてきたのだ。


「____少年。……敵だというのにトドメをささないのか?」

「当たり前だ。O-57には守るべき相手が必要なんだろ?じゃあな」

「ふ……当たり前のことを聞いてしまったか。……ところで少年。」

「ん?何度も止めないでくれよ」



 俺はもう一度振り返る。

 目に入った光景は、停止しかけのO-57がおじいさんを起こしているところだった。


「レーザービームは一人で越えられないじゃろう?」


 おじいさんはニヤリと笑い、O-57は困ったように笑った。


「……む。そう……だったな。あの、さ……介護してやるから……ついてきて……ください……」


 ____俺にはこれまでこんなに恥ずかしいことがあっただろうか。


 __________


「あー!どうしよー!!アンドロイドさん行っちゃったよー!」


 攻性アンドロイドを全滅させ、ヘラの作戦通りに水蒸気を凍らせて、あたかもO-57が時計塔のど真ん中にいるように見せかけていたオレたち。

 ちょっと目を離した隙にどっかに行ってしまったので慌てふためいていた。

 このままじゃヘラに怒られる。


「落ち着きなさいよ……今頃ヘラが同盟の人を倒してるはずだし、何とかなるわ。あのアンドロイドが変なことをしなけりゃ……ねぇ……」

「アシリアだってちょっと不安になってるじゃん!!」

「しょうがないでしょ!あの戦闘狂でも一人だと不安だし……」

「戦闘狂って……。間違ってはいないけどさ……ってあれ?」


 遠くから何かが飛んでくる。

 黒い影だ。それだけでは誰だかわからない。


 アシリアに木製のスコープを借りて覗く。


 そこには赤い髪の……ヘラがいた!


「わっ!ヘラだ!」

「嘘!?ちゃんと戻ってくるなんて、さすがね!」


 移動中の仲の悪さはどこへやら。

 アシリアはヘラの方へと駆け出した。

 その後をオレは追っていく。


「ヘラ!」

「アシリア……ムジナ……」


 疲れきった彼の表情からして接戦だったのだろうか。それとも精神的な疲れなのか。


「ねぇ、ア……O-57見なかった?」

「……ちまったよ」

「へ?」

「壊れちまったんだよ!もう動かない……あいつは最期まであのおじいさんのたった一人の付き添い人……アンドロイドだったんだ!」

「落ち着きなさい。わかるように教えて?」



 アシリアが宥める。


 最期まで、ということはO-57はもう本当に動かなくなってしまったのか。


 死神であるオレは生き物の魂はわかるが、さすがにアンドロイドなどという機械のことはわからない。例外であればマリフの霊界ラジオだが、それは例外中の例外だ。


「ほ、ほら……これを見てみろよ」


 やっとのことで落ち着いたヘラが黒コートのポケットから取り出したのは、ピンク色の髪の毛のようなものだった。


「これって……」

「O-57の髪の毛……というか、作り物の毛だよ。アンドロイドだし、本物だと逆に困るだろ」

「でもどうしてヘラが持ってるの?」


 アシリアが一番気になることを聞いた。


「……オリオンの人、あのおじいさんだったんだ。で、もうボロボロになったO-57は最後の力を振り絞ってでもおじいさんの傍にいたいって……。時計塔にあるアンカーを取り出すには、この星の住民である証拠が必要だから、O-57の一部である髪の毛をくれたんだ」

「じゃあ、あのアンドロイドさんが時たま呟いてた『時計塔』ってのは……」

「おじいさんがO-57を爆破しようと設定した場所だったってわけ。……さ、目的地も決まったことだし時計塔に行こうぜ」


 ヘラが黒コートをはためかせ、放心するアシリアといまいち現実を受け止めきれていないオレを置いて時計塔に向かって歩き始めた。


「待ってよ、ヘラ!ヘラは何とも思わないの!?」

「ダメよ、ムジナ。一番つらいのはヘラなのよ。自らの命と引き換えにって場面を目の前で見たのはヘラなのよ?」

「で、でも……」


 アシリアに腕を掴まれてもなお進んでいくヘラ。彼の首回りのオレンジ色をしたファーが憎らしいほど目立つ。


「確かにオレはアンドロイドに関しては観測できないし、理解もあまりできてないから壊れたとかはわかんないよ!でも、ヘラなら……正義感の強いヘラなら何か思うことがあったんじゃないの?!」


 オレたち三人以外、生き物と言える者がいなくなった星で響く声。

 時計塔まで聞こえるのではないかと思われたオレの声は、ヘラの心を掴んだ。

 彼は立ち止まり、振り返った。


「……俺だって……俺だってO-57を救いたかったさ!でも、俺を止めに入ったO-57を斬っちまって……廻貌の先がコアまで届いてて……火花を散らし始めたんだ。あいつは最初で最後の最新型。替えは無かったんだ!」


 ヘラが叫んだあと、エガタがヘラの元を離れ、隣に浮かんだ。


「めちゃくちゃ熱かったんだからな。唯一無二のものは時にはそうなる。残念だが、あのアンドロイドのことは諦めろ。ムジナ」

「うぅ……エガタに言われると説得力が……」


 エガタ自体も唯一無二の、まさに国家遺産レベルのものだ。それを傷物にしようとした妖怪たちは大罪人だ。……いや、人じゃないか。


「ヘラ、髪を渡してほしいわ。私、一人で行ってくる」

「敵がいないからって大胆すぎないか?」

「全員で行けないわよ。ムジナの精神状態がこんなのだし」

「も~ぉ、アシリア~!!」

「……間違ってはないけどな。わかった。気をつけて」


 オレたちのところに戻ってきたヘラは持っていた中の内半分くらいをアシリアに手渡した。


「あ、さっきのスコープ返すね」

「ありがと。この旅で新しいスコープも探すから、見つけたらそれあげるわよ」

「マジで!?やったー!!」


 __________


 時計塔は反転地域の外……普通のハードコアの地域にあり、かなり遠くにあるというが、O-57が残したバイクをなんとか操縦できた彼女は猛スピードで移動することができたようだ。

 ……だが、結構遠かったようだ。


「ちょっと聞きなさいよ、ムジナ、ヘラ!」


 戻ってきたアシリアは肩で息をしながらアンカーを引きずってきた。引きずっていいのかよ。


「遅かったな……お、アンカー見つかったのか」

「アンカーとかの問題じゃないのよ!途中でガソリン切れて大変だったんだから!」


 アシリアが後ろにあるバイクを指差す。

 荒野を押していったのか、砂まみれだった。


「お疲れ様!筋肉痛になりそうだね」

「他人事だと思ってそんなこと……」

「大丈夫だよ!ヘラの回復魔法でなんとかなるよね?……ね?!」

「そうなの?」


 ……突然期待の眼差しを向けられたときの対処法を検索させてくれ。


「え?!……で、できないことはない……けど……」

「「けど?」」

「俺自身、どんな効果があるのかわからないんだ。怪我は確実だとして、筋肉痛とかは……」

「マスター、できたときとできなかったとき、全力で笑ってやるから安心しろよ」

「廻貌は黙ってろ」


 廻貌を地面に刺し、モゴモゴ言っているうちにアシリアの全身に向けて意識を集中させる。

 いつもの不完全な回復魔法の力が湧いてきた。


「まぶしっ!」

「全身だからしょうがないだろ、我慢しな」


 そう言いながらアシリアに光を浴びせ続ける。

 痛いとも何ともなく、ただ眩しいだけなので本当に効果があるのかはわからない。さらには現在筋肉痛になっているというのではなく、予防という形なのでなおさらだ。

 とりあえず終わったので腕を下ろした。


「ねぇ、これ本当に効くの?」

「俺にもわかんねぇよ。ほら、さっさとアンカーを船に取り付けて出発しようぜ。船に乗ってたら効果が出てくるかもしれねぇだろ。それに、いつまで経っても進まないし」

「それもそうね。さっき船を見つけたから行きましょ。こっちよ!」


 アシリアはバイクがある方へ歩いていく。アンカーを引きずって……。


「はぁ……。貸せ」

「え?ちょ、ちょっと!?」


 俺はアシリアからアンカーをぶん取り、異界にぶち込んだ。

 真っ黒いブラックホールのような異界だ。よく見ると俺のガラクタ(家事裁縫シリーズ)が入っている。

 その中に馬鹿デカい、そして鉛の塊が仲間入りした。

 見てるだけで息苦しくなってくる。


「これなら重くないだろ」

「これ、取り出せるよね?」

「廻貌と同じだ」


 ついでとばかりに廻貌もぶち込んだ。


「容赦ないわね……」

「廻貌でも勝手に出てこれないから異界って安心するな」

(ノートに干渉されなきゃいいけど……)

どうも、グラニュー糖*です!

現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!

こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。

本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!


なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!


ではでは〜

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