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怪奇討伐部Ⅴ-Star Handolle-  作者: グラニュー糖*
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ハードコア編7

第十五話 たった一つの装置




「そんな気はしてたよ。どうしてO-57に俺たちを助けるように指示した?」


 今聞いているのは、一番最初にバイクで助けてくれたときのことだ。


「O-57に変化が必要だったからだよ」

「変化?」

「アンドロイドはAIだから自ら進化していく。この星の住民が全て消え去ったあと、あのアンドロイドには守るべき存在が消えたということにもなる。だから君たちの存在が必要だったんだ」

「でもどうしてピンポイントで俺たちの存在がわかったんだよ」

「……君ならもうわかってると思ってたんだがね」


 おじいさんは残念そうに言った。


「確実じゃないものは口にはあまり出したくないんだ」

「そうか。……せっかくここまで来てくれたが、残念じゃったな。もう計画は止められない」

「は?」

「守るべき存在ができたことにより、アンドロイドの任務遂行意識が高まった。そこのベルトコンベアを見てごらん。O-57の複製ともいえる部品が流れているじゃろう?」


 さっきの『最重要部品』のことだ。

 全てに『O-57』と書かれている。


「壊れても代わりはいるってやつか」

「その通り。そして最初にO-57が作られたときにO-57には時計塔を動かす鍵としての任務も与えられた。今、あいつはその鍵としての任務を果たそうとしている。ついてこい」


 おじいさんは車椅子から降り、横に付いていた杖をついて歩き出した。

 俺はそのあとを急いで追いかける。

 おじいさんは床にある大きな鉄製の蓋を鍵を使って開き、俺の手を引いた。


「離せよ」

「いいや。手を離すとレーザーに焼かれるぞ?」

「……くそぅ」


 O-57も使っていたスキャン機能がここでも使われている。

 鉄でできた壁から緑の光が出ており、体をスキャンしていく。しばらくして目の前の扉が開いた。


「ここじゃ」


 おじいさんが横に逸れる。

 感じられるのは真っ暗な部屋に似合わない水の音。

 おじいさんが電気を付ける。俺は強すぎる光に目を細めた。


「な……これって……」


 ____水槽の中にたくさんのおじいさんのクローンが浮かんでいた。


「うっ!?……あ、あぶね……」

「吐くこともないじゃろう。よく見てみろ、アンドロイドだ」


 背中をさすられながら水槽の前に行くと、本当にアンドロイドだった。

 やっぱりアンドロイドにしか見えないというかそのものだった。


「で、でもどうしてムジナやO-57はお前を生きていると判断したんだよ?」

「これじゃよ」


 おじいさんはガラスの破片で腕を切った。たとえアンドロイドでもこんなのは見たくない。

 案の定中から赤い液体が流れ出た。


「あらかじめ言えよ……」

「これはこの住民が遺した本物の血だ」

「!?」

「だからスキャンを乗り越えることができる。あの少年やO-57が帰ってくることはないからもう必要ないがね」

「……一つだけ教えてくれ」

「何かね?これから君は死ぬのだから何でも教えてあげよう」

「そんなこと言ってられるのも今のうちだぜ。……どうしてO-57に読み込ませたデータみたいな回りくどいことをした?ミスリードのためか?」


 このおじいさんが同盟の人なら、なぜ同盟の者は他の人と見分けがつかないなどと残したのだろうか。


「データなどいくらでも書き換えられる。どれだけ心の込もったものでもただのデータにすぎないのだからな。あれに同盟の者の存在を書くことで私の存在を惑わそうとしたが……君のように勘が鋭い子供がいるとは思わなかったよ。本当に忌々しい」

「……お前はO-57を道具みたいにしか考えていない!」


 俺は叫びながら廻貌を取り出した。

 すると廻貌は俺の手からスルリと抜け出し、横に浮かんだ。


「廻貌!?」

「……こいつの言うことには一理あると思うぞ、マスター」

「今さら何を言ってるんだよ!あいつは同盟の人なんだ、さっさと倒した方がいいだろ!」

「マスターはマスターが言った言葉の意味を考えることだな。地下に行くまでは手伝ってやるよ」


 俺たちが騒いでいたそのとき、おじいさんはくくく、と笑った。


「何がおかしいんだよ」

「君もその喋る剣のことを道具としか思っていないと思ってのう。どう見てもそれには魂が宿っている……いや、取り憑いていると言った方が正しいかね」

「年寄りの妄言だろ」

「本当にそう思えるならそう思って良い。じゃが、用心するがいい」


 うるさい、と言おうとした途端、地鳴りが起きた。

 バランスを取ろうとして思わず床に廻貌を突き刺す。突然のことなので廻貌も反抗できず、大人しく突き刺さった。


「もが、もががっ!?(おい、刺すな!)」

「廻貌って刺さったら喋れなくなるんだな……覚えとこ」

「もがががー!!(いらんこと覚えなくていいわ!)」

「ほら、見てみなさい。主人のことを考えることができず、ただ命令に従うだけのアンドロイド……いや、ロボットを!」


 おじいさんは横のモニターに映し出された時計塔を指す。

 黄色っぽく光る時計の真ん中に人影が見えた。

 もっとよく見るとピンク色の髪だった。

 そう、あれは紛れもなくO-57だ。


「もうあんなところに……!」

「どうだ、この光景は。今ここに、このハードコアは同盟に降伏する____!」


 おじいさんが仰々しく両手を頭より上に上げる。


 ____しかし、どれほど経ってもそのときが訪れることはなかった。


 当然狼狽えるおじいさん。

 理由は簡単だ。誰でもできることだったのだから。


「ど、どうして何も起こらない!?この星の動力源、そして命のシンボルである時計塔をO-57の炉心で爆破する予定だったのに!?」

「お前はO-57のことを知らなさすぎたんだ。そう、何も……な!」

「ぐ……なぜだ!O-57を改造した時に抜いた部品の場所は誰にも教えていないはず!」


 抜いた部品……彼女が自分で言っていた「感情」を読み取る部品だったか。

 確かにそれさえなければ、どれだけ邪悪な心で接していてもO-57には理解できず、任務をこなすだろう。


「……お前さ、ここがどこだかわかってないのか?『ハードコアの住人』なのに?」

「アンドロイド製造所だろう?……!」

「やっと気づいたか。ここは『アンドロイド製造所』。つまり部品なんか山ほどあるんだよ!」

「だ、だが、O-57は試作品であり、最新型……代わりなんてあるはずがないじゃろう!」


 言っている通り、確かに最新型らしい。

 しかし、生身の住民は百歩譲ってこのおじいさんしかいない。なので工場長とも言えるべき存在だ。どこに隠したか、そしてどれくらい製造を進めているかは把握しているだろう。

 もちろん、誰も知らないはずの『O-57は試作品』という事実もだ。


「『拾われた』じゃなくて『作られた』だったらという見方もあるだろ?抜いたんじゃなくて、最初からあったんじゃないのか?」

「ありえない!命令を待つことしかできないアンドロイドが自ら成長するな……ど……!!」


 体に限界が近づいているのか、肩で息をしながらLEDとなった目を赤く光らせて叫ぶ。

 もう自分の思考さえショートし、矛盾した救いようのない演算生物が目の前にいる。


「そうだよ。O-57は人工知能で変化した。そう望んだのはおじいさん、お前自身じゃないのか?自らの体をアンドロイド化することで、愛着が湧いたんじゃないのか?それで、誰かがメッセージを見てハードコアを救ってほしかったんじゃないのか?」

「馬鹿言うでない!まず愛着が湧いて何になると言うのだ!我々、オリオンは惑星を狂わせることが目的なのだぞ!」

「それは俺にもわからない。それに宇宙なんかと接点も無かった俺には星がどうなろうと構わない。でもな、これだけは言わせてくれ」


 俺が一歩前に進み、床から抜いた廻貌を力強く握る。

 気迫に圧されたのか、おじいさんが後退る。

 おじいさんからミシミシと音が聞こえた。


「____ナメんなよ!」


 廻貌を逆手で持ち、斬りかかる。

 機械の身のおじいさんなら避けられたはずだ。だが、彼は一歩も動かなかった。


 ……いや、動けなかったのだ。


「くっ……」


 廻貌の刃先が鉄に食い込む。

 柔らかく、そして硬い。

 さすがの廻貌も驚いて俺の手からするりと抜け出した。


「……O-57……離れろ!俺はお前を刺しに来たんじゃない!それに、ムジナたちのところから離れるなって言ったじゃないか!」

「ヘラさん、いいのです。私は替えの部品も無い、いびつなアンドロイド。ならやるべきことは一つ。……そうでしょう?賢いヘラさんならわかるはずです」


 O-57は微笑み、中のよくわからない液体が滴る体を動かして、おじいさんの方を向いた。


 よくよく考えるとおかしな話だ。

 ベルトコンベアで流れているものは間違いなくO-57を量産しようとした結果のものだ。しかし成功している様子はこれっぽっちもない。

 つまりO-57の『57』は型番であり、それより前、後は存在しないということとなってしまっている。

 もし成功していれば、O-57と同じシリーズのアンドロイドも襲いかかっていたということになる。


「どうしてここに……時計塔にいたのではなかったのか!?」

「あぁ、最初から時計塔には向かわせなかったさ。お前が怪しいってことは確証がなかったから言ってなかったが、とりあえずムジナにO-57の護衛を頼んでおいたんだ。氷は反射するって知ってるか?ある特定の条件を満たすと、氷も鏡みたいな役割を果たすんだぜ」

「ふん、この星の暑さでは氷なんて解けるじゃろう?驚かすではないわ」


 確かに普通の氷なら、意外と蒸し暑いこの星ではすぐに解けてしまうだろう。

 しかし普通の氷ではない。


 あれはムジナの……死神の永遠の氷なのだ。


 もし解けてしまっても、ムジナの力の加減ですぐに氷に戻るだろう。


「ムジナの氷はそんな生ぬるいものじゃない!」


 俺は牙をむき出しにして叫んだ。

 親友を、たった一人の守るべき相手を侮辱されたのと同じ気分だったからだ。

どうも、グラニュー糖*です!

現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!

こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。

本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!


なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!


ではでは〜

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