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怪奇討伐部Ⅴ-Star Handolle-  作者: グラニュー糖*
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宇宙からこんにちは

第一話 星の船




 朝だ。

 僕はいつものように起き、カーテンを開け、コップ一杯の水を飲む。朝は時間が無いが、朝食はしっかり食べないと仕事が手につかなくなるだろう。なのでパパッと準備する。

 そろそろできる頃かなと思った辺りで僕のとなりで寝ている師匠を起こしに行く。


 それが一連だ。


「おはようございます、師匠。机の上に新聞置いておきますから」

「ありがとう」


 ここはマンションの一角。職場である警察署とは少しだけ距離がある。


「すっかり寒くなりましたね。ムジナくんがあっちに行って半年ですか。早いですね」

「あぁ。昔と随分違って寒くないな」


 と言いながらヒーターの前に陣取っているのは師匠であるリスト・ウルム・ラーン。本名を獅子ヶ鬼剣一という。物騒な名前だが、それには師匠はノーコメントだ。


「火傷に気をつけてくださいね。そろそろ朝ごはんの時間ですから机の前に来てくださいよ」


 それを聞いて師匠は新聞を読むために机に向かった。それと同時にテレビのリモコンも手に取っていく。

 師匠はいつもニュースを聞き流しながら新聞を読んでいる。頭に入っているのかどうかは知らないが、僕より世間のことに詳しいので入っているのだろう。


「____なにぃ!?」


 急に師匠が叫んだので驚いて転びそうになった。


「なんですか、師匠?!」

「テレビだよ、テレビ!これ!」


 師匠がテレビを指す。そこには大きな木製の船が映し出されていた。空にあるのでよくできたCGのアニメだろうか。……こんな時間にこんな番組あったっけ?


「アニメ……?」

「馬鹿。ニュースだよ、ニュース」

「本当だ、ニュースですね。でもなんで?新しい映画の宣伝ですか?」

「中継だっての!おい、黒池。半年ですかとか言って、半年も不思議な存在から離れたら信じなくなるのか?あ?」


 ……僕はお盆のものを置いてからニュースをまじまじと見た。

 アニメやCGや映画かと言っていたのは、事実が信じられなかったからだ。

 船が空を飛ぶはずがない。

 その一心だったからだ。


 ニュースキャスターは驚いた様子で中継をし、野次馬はスマートフォンを向ける。

 あまりに突然のことだったので、皆がポカンと口を開けていた。


『あの空を飛ぶ大船は一体何なのでしょうか!現在、何も攻撃をしてこないところ、無害かと思われます!』


 ニュースキャスターがカメラに向かって叫ぶ。それを見ながら師匠は目玉焼きを口に入れた。


「わー……よくできた映画ですねぇ……」

「おい、棒読みになってるぞ。それにしてもすごいよな。きっとこれはお前の____」


 言いかけたその時、僕のスマートフォンがクラブミュージックを奏でた。ついこの間までシューベルトだったのだが、いつの間にか師匠が変更していたらしい。


「あれ?……もしもし、先輩?」

『あー、おはよ、黒池ちゃん。早速だけど、仕事だよ。ニュースを見たかい?』

「え、えぇ……」


 電話の向こうから上原先輩の声が聞こえた。彼は先輩刑事として働いているが、どちらかといえば司令塔だろう。いつも部屋に籠ってパソコンを弄っている。


『実はあの船から信号が来ててね……。ほら、半年前の引き渡しの件にいた、ムジナくん……だっけ?彼を要求しているみたいなんだ』

「ムジナくんを!?」


 僕の驚きの声に、ウインナーをフォークで刺して食べていた師匠が振り返った。


『詳しくは署で話したい。だから今日は課の部屋ではなく、応接室の前で待っているよ。リストも来てくれ。……切るよ』

「……ですって、師匠」


 机に背を向けていた僕は朝ごはんを食べている師匠を見る。師匠はオレンジジュースを飲みながら頷いた。

 スピーカーモードにしているため、師匠にも話は通っている。

 とりあえず食べ終わったら準備を始めよう。


 __________


『都会のど真ん中に巨大な船現る!宇宙人の仕業か?』

『船は全く動かず、何もしてこない。何のためにいるのか、全く不明____』


 オレは黒池に借りたスマートフォンを操作し、SNSやニュースを見ている。

 どこもかしこもあの船のことばかりだ。

 隠そうとしても、あんなにわかりやすく浮かんでいる船を隠蔽することなんてできない。


「師匠、歩きスマホはほどほどにしてくださいよ?警察の関係者が歩きスマホで事故なんて洒落になりませんから」

「わかってるよ。……しっかし、まさかムジナを、なぁ……」


 あの船がどうして魔界じゃなくてこっちに来たのかはわからないが、さっさとムジナを連れて離れてもらいたいものだ。


「ムジナくんは死神です。欲しがる人も多いことでしょう。着きましたよ」

「確か二階だったよな?応接室」

「えぇ。急ぎましょう」


 黒池が早足で歩く。

 いつものコートをはためかせる。これでこそ黒池だと一人で納得してしまえるほど、こいつと過ごしていたんだと勝手に驚く。

 後をついていくと、部屋の前で腕を組んでドアにもたれ掛かる男がいた。


「おはようございます、先輩」

「黒池ちゃん。この中にいるよ。その……頑張って!」


 そう言ってそそくさと逃げる上原。一体何のことかと二人で顔を見合わせた後、黒池が扉を開けた。


 ____そこには童話に出てくるような、海賊の女の子が座っていた。


「……は、え?」


 黒池の口からマヌケな声が漏れた。

 どう対処すればいいのかがわからないようだ。

 まぁオレはムジナという言葉の時点で薄々予感はしていたが……。

 そんな黒池を見て、その女の子は勢いよく立ち上がり、黒池を指差した。


「あなたが黒池ね?私はアシリア。アシリア船長、もしくはキャプテンとお呼びなさい!」

「え、あ、あのっ……アシリアさん……ですか……?」

「船長と呼ぶ!」

「い、イエス、サー!」

「……まぁ、いいわ。そこ、座りなさい。話はそれからよ」


 アシリアは自分が立っている席の向かい側を指定した。

 応接室は小さな机を挟んで革製の黒い二人用ソファーが二つある。

 オレは黒池の隣に座った。


「あの男の人から話は聞いたわね?それで?ムジナは連れて来れそうなの?」

「結論から言わせていただくと、不可能です。現在死神王は人間との交流を絶って半年経っています。おいそれと穴を開けてはくれないでしょう」

「そう……それは残念ね」


 アシリアは腕を組み、目を伏せた。


「あの、どうしてムジナくんを?」

「あなたたちに教える必要がある?……それに、一つ言わせてもらうけど、地球の人間たちはどうしてこう馬鹿みたいに同じことをするの?空飛ぶ船なんて当たり前の光景だと思ってたんだけど……それを面白がってカメラを向けるなんて、頭がおかしくなくて?」


 アシリアはいかにも不機嫌そうな声を出した。

 どこかのわがままお姫様かのような物言いだが、首を突っ込もうとするなら……彼女が本当に海賊なのであれば首を刎ねられているところだろう。

 オレたちはあくまで公務員。革命を起こす勇者でも何者でもない。


「それは……僕には何も言えません。不快に思われたのであれば、人間を代表して謝らせていただきます。申し訳ありませんでした」

「そ、そこまでしなくてもいいのよ。顔を上げなさい。……でも、穴を開けられないのであれば他の方法を考えるしかなさそうね……」


 彼女はその場で再び立ち、腰に手を当てた。そして海賊の帽子を手に取り、ソファーから離れた。


「あれ?もういいんですか?」

「しょうがないじゃない。私には時間が無いんだから。だから海の境目を無理矢理____」

「待て」


 オレはアシリアの腕を掴み、声をかけた。


「穴を開けるだけなら、とっておきの奴がいるぞ」


 __________


「……それで、ボクのところに来たってわけ?」


 牢の中の彼女は退屈そうに目を細めた。

 なるほど、師匠の言う通り、マリフなら何とかできるだろう。彼女は以前、この世に無いものなら別の世界から設計図を持ち込めばいいと言った。

 黒池は倒れていて見ていないが、マリフの技術を駆使すれば世界に穴を開けることができる。


「良いじゃん!最近暇だったんだよなー。特に面白いことも起きないし、すっかり運動不足だし。何?空飛ぶ船の手伝い?いいよいいよ!手伝ってあげる。リスト、黒池。手伝ってくれるよね?あの機械だ。今回はリストの魔力は要らないから安心しておくれよ」

「誰?このおばさん。なんで罪人に頼るの?」

「ふふん、宇宙人のあなたには地球の礼儀ってのを知らないんだね。ふーん」

「少し黙ってろ、アシリア。今ここでマリフを怒らせちゃいけない。手伝ってくれなくなるぞ」


 師匠は腕を組んで唸った。

 アシリアさんは一瞬何か言おうとしたが、すぐに口を閉ざした。


「実は上原に連絡をもらってね。クノリティアに繋げておいたよ。……え?クノリティアじゃなくてイリスがいい?しょうがないなぁ……」


 マリフがボタンを押していく。しばらくして、座標が設定された。


 イリス。魔の世界に残された美しき辺境。その奥には恐ろしい吸血鬼が潜んでいる場所。


「ヘッジさんが協力的ならクノリティアで良かったのですが……」

「あぁ、知っているよ。大変だったね、よくやったよ。リスト、キミが倒れたときはどうなることかと思ったんだけどさ」

「あぁ、本当に走馬灯も見えたからな。……準備はいいか?アシリア」


 師匠がアシリアさんを見る。彼女は静かに首を縦に振った。

 マリフがニヤ、と笑う。直後、重苦しい音と共に人がギリギリ通れそうな黒い黒い穴が目の前に開いた。

どうも、グラニュー糖*です!

現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!

こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。

本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!


なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!


ではでは〜

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