2日目 10 マセガキ純情派と確信犯修道女《シスター》
戦闘描写で躓き時間がかかりそうなので前段階で止めました。
午後。
ちらほらと雲が浮かぶくらいですっきり晴れ、屋外でも過ごしやすい気候になった。
遅れて朝食にやってきたヒナからさっきはごめんなさいと涙目に謝罪された俺は、いつものことだと軽めに返事をした。
昨日は俺も悪かったから謝ったが今日は一方的な勘違いと早とちりなので受け止めるしかない。
いちいち気にしていたらキリがない。
そういうやつだと認識するだけだ。
そのあとヒナから、肉屋から野ウサギ狩りの依頼があるから行かないかと提案があり、ジーナ、アヤメに詩人の彼を加えた五人で狩りに行くことにした。
そこへ木工屋さんが息子の同行を打診してきた。
冒険者嫌いが先入観であり実際の姿を見ればその認識も改まるのではないかと、いわば社会勉強のために連れて行ってくれないかとのことだった。
ウサギ狩り程度なら森の手前の平原から、行ってもせいぜい森の入り口だから危ないこともないだろう、出てくる獣や魔物も知れているから子供一人くらい守れるだろう。
俺たちは了承した。しかし……。
「なんでこいつらの狩りしてるところなんか見に行かなきゃいけねーんだよ! 興味ねーよ!!」
とガキは行くのを渋っていた。
「そんなことよりとーちゃんと仕事して少しでも早く一人前になりたいんだ! コソ泥野郎や貧乳アクマやぺったんこねーちゃんと一緒になんて行ってらんねーよ!」
行きたくないのはいいがどさくさに紛れてひどい言い方してるな。
さっきアヤメに何か言われてたみたいだが懲りないやつだ。
ヒナかアヤメか、どっちに泣かされるのかと思っていたら、動いたのは意外にもジーナだった。
「ねぇ、ボク。お名前は?」
「コイズ……です」
「コイズくん。じゃあこーくんね。あのね、こーくん。さっきからどうして貧乳とかぺったんこは言うのに、私のことは言わないの? 私のおっぱいが大きいからなのかな? おっぱい好きなのはいけど、お胸のおおきさで女の子を区別するような子はお姉ちゃん嫌いになっちゃいますよ?」
目線を合わせるように屈んでいるようで実は合わせていなく、コイズの視線の高さに胸元を持ってきている。
ヒナやアヤメと違いボリュームがあるため、少し胸元の開き気味な服を着てかがむと谷間が見えてしまうが、どうもわざとやっているようでコイズは顔を赤らめている。
「ちょっとアサギ、何見てんの?」
勘の鋭いヒナが俺の視線の先に気づいたようだ。
べ、べつに覗こうとしてたわけじゃねーよ。
見せつけてるなって思っただけだ。
ジト目で疑うヒナをどうにか躱す。
「あと、アヤちゃんはアクマじゃありませんよ。私の妹なの。ほら御覧なさい。髪の色が同じでしょう?」
「う……」
そう言うと後ろに垂らしている柔らかな黄色の髪を前に持ってきて見せる。
瞳も黄色いアヤメと違ってジーナの目は茶色だという違いがあるが、そこまでは気付かないだろう。
「はい…、ごめんなさい……もう言いません……」
素直に謝るコイズ。
ジーナはわかったならいいのよ、とにこやかな笑顔を浮かべて頭を撫でる。
「町の外は怖いかもしれないけれど、私たちが守るから安心してね」
最後にポンポンと頭を軽くたたき、かがんだ姿勢を直す。
頬がうっすら赤い少年の視線が、ジーナの腰が伸びるのにつられて上がる。
こうして午後は六人で狩りに行くことになったわけだが――。
大人数で連れ立って草原へ向かうとはまるでピクニックだな。
◇
行きの道中は穏やかに過ぎ、森に着くと早速ウサギ狩りを始めた……。
「いっくよーっ!!」
アヤメが叫ぶ。
天に掲げた両手の先には中央に六芒星、その周りには知らない文字の施された魔法陣が浮かぶ。
よどんだ空気が立ち込め、粘液でねちゃねちゃした成人男性の太ももほどの太さをした触手が、ゆっくり何本も顔を出してくる。
気持ち悪くうごめくソレを使役しているあたり、召喚士と名乗っているものの、出てくるものからして呪術師に近いのではないか。
「くらえ! 触手たち!!
太い触手は鈍重そうな見た目からは予想できない勢いで四方へ伸び、草むらに姿が見え隠れしている小型の野ウサギに次々と絡みつき捕獲していく。
「そんな怪しい術を使うなんて! やっぱりアクマじゃないかっ!!」
ガキの叫び声が虚しく響く。
コイズ君はトルコ石色、青緑系です。
次回こそ戦闘描写!
◇
「なぁヒナ」
「なによ」
「よ? よ……よってしりとりじゃねぇ」
「どうしたのよ」
「お前、ゆうべの風の勇者様の話、最後まで聴いてたか?」
「あ、当たり前じゃない!」
「正直に言えよ」
「……寝ました」
「やっぱりなぁ……。俺も寝ちゃったんだが、これマズくないか?」
「何でよ?」
「誰も話を聴いてないから読者に説明できない……」
「なに? そんなこと心配してたの?」
「ずいぶんと余裕だな……何か対策でもあるのかよ」
「へへ-ん! これを見よ!!」
「うぉっ!なんだこの石板……石板にしちゃ軽い。魔法鉱物か? ……ん?文字が浮かんできたぞ。なになに……『かぜの ゆうしゃさまと くろい りゅう たいじ』?」
「そうよ! あたしたちが聴き逃した風の勇者様の物語がこれで読めるの!」
「おお、文字だから聴き逃す心配もなく自分のペースで読めるんだな!」
「そうなの! いいでしょ! しかも全ての漢字にルビを振ってあるから、漢字が苦手なあたしでもスラスラ読めるのよ!」
「……なぁ、最初からこれでよかったんじゃないか……?」
「うっさいわね!」
「ぐはぁっ!?」
「……お見苦しいところ失礼しました。『かぜの ゆうしゃさまと くろい りゅう たいじ』は【小説家になろう】【カクヨム】にて掲載中です! みんなよろしくね♪」
「なんで蹴られたの、俺……」