1日目 2 舞剣士と吟遊詩人《前》
2話目です。にぎやかになってラブコメ調です。
目を通していただけたら幸いです!!
修正:幼女→小柄童顔少女
修道服の少女→修道服で落ち着いた雰囲気の少女
へ変更しました!
2021/6/19
百合描写など追加
「なによ?」
プンスカしている駆け出し冒険者の少女。
緋色の瞳に怒りの色が更に滲む。
「ああ、いや……」
なぜか答えてしまうオレ。
駆け出しと言っては失礼か……と逡巡する。
こいつが冒険者を始めて……数年……? だっけ?
多少は……まぁほんと多少だが古代の稀少な魔法細工を見つけたりーー実績もある。
が、まだまだ中堅とはいえないな。
駆け出しでいいか。
「なにか失礼なこと考えてない⁉」
視線に炎を宿してキッと睨んでくる。
こえーなぁおい。
察しが良すぎるからさっと話題を逸らそう。
「気のせいだろ。それにしても随分早い到着だな。他のやつらはどうした?」
「知らないわよ、あんなスケベ!」
でたでた。また何かあったのか……。
『やつら』ってわざわざ特定の誰かさんじゃないように言ったんだが。
勝手に墓穴掘ってやがる。
まぁ、ここで余計なこと言うとこっちまで不機嫌のとばっちり受けるか……。
なんて考えていると、緋髪少女はオレとアンタがいるカウンターに辿り着いた。
ふくれっ面のまま。
こいつを含めた四人はうちの半ば居候。
滞在歴があれば、いちいち宿泊者カード書かなくても履歴を引っ張り出せばいい。
オレはヘソ出し少女の記録を挟んだ台帳を指でなぞりながら探す。
「だからな……。そんな薄皮の胸当てじゃなく……もっと面の広い胸鎧か、せめて麻の鎧にしたらどうだと前から言ってるじゃねぇか」
小言を言う。
なんでわかるのよ、と頬を赤く染め胸を両手で覆う。
じとーっと睨んでくるのが視界の端に見える。
スケベって言うから適当に言ってみただけだがアタリかよ。
探し物中だから視線を向けずに済んでいるのが救い。
……あ、オレはガキに興味ないからな。念のため。
「だって動きにくいんだもん。身軽でなんぼなのよ。あたしは舞剣士、華麗に舞うことが使命なの」
舞 剣 士。
名の通り剣を手に舞うように戦う前衛職。
……前衛なら身の安全を守れよ。
帰ってくる度にスライムに服溶かされただの、ゴブリンに服やぶられただの騒ぐくせに。
こっちが心配しているのに提案を却下しやがって……わざとか。露出狂か。
あくまで自分のスタイルを変えようとしない、ヘソ出し外套野郎。
あ、女子だから外套女子
「やれやれ」
わざとオレはおおげさにため息をつく。
こういう強情なところが可愛げが無い。
容姿はいいのに中身残念なタイプ。
「"ハチのように飛び、セミのようにおしっこかける"じゃなきゃ」
「ぶっ!」
とんでもないのが聞こえて思わず噴き出した。
「あれ?」
「お前さぁ……それマジで言ってんの? 年頃の娘がおしっこかけるって」
「~~!!」
自分の言ったことを今更理解したのか。
顔が髪色以上に真っ赤になる。
「く、口が滑ったわ! そ、そうよ! セミのように……早死にする!」
「……わかった。もう何も言うな」
「な、なによ! 何だっていいじゃない! ……ねぇ⁉ あなたもそう思うでしょ⁉」
緋髪のヘソ出し少女は初めてそこに立つものの存在に触れる。
かなり唐突に。
多分今初めて気づいたんだろう。
ずい、と押し迫り同意を求める。
アンタは安っぽい木彫り人形みたく、首を何度も上下させる。
華奢な体が一層人形らしく見せている。
いやしかし。
初対面でいきなり話振られて普通引くだろ。
せっかくの客が逃げるだろ。
「あら……あなた! その格好もしかして吟遊詩人!? ね、そうでしょ!?」
いきなり話がぶっとんだぞ。
せわしないな。
アンタは急に話を振られて驚きながらもまたまた頷く。
そうか、アンタ吟遊詩人か。
……あ、ここに書いてあった。
「やっぱり! ふふ。今晩泊まるの? いつまでいるの? あたしね、風の勇者様の冒険譚好きなの! あとで一曲お願いしたいな!」
プンスカから一変、目を輝かせ早口でまくし立てるヘソ出し少女。
圧に押されながらも、喜んで、と答えるアンタ。
「嬉しい! ふふ。楽しみっ!」
ゴキゲンにその場でくるりと一回転。ひらりと外套がたなびき優雅さを感じさせる。
さすが舞剣士。
「なにがたのしみなのー?」
「あら~ヒナさんナンパしてるのかしら~??」
二つの声がしたほう――宿の入り口には並んで立つ大小二人の少女。
誰も優しくない世界w
次回やっと名前が出るかもしれません~。固有名詞決められない症候群。