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野ウサギと木漏れ日亭 #ウサれび【電子書籍化作業中】  作者: 霜月サジ太
2日目AM ~生意気少年とウサギ狩り~
27/157

2日目 1 夜中の散歩とおもらし《前》

2日目に入りました。最初からおしっこです。


1日目の最後に書ききれていないことがまだまだありますので、後日追加しますー!


 【野ウサギと木漏れ日亭】で、吟遊詩人バードの歓迎会が行われていた、その夜。

 近くの宿場街に住む平民モブキャラ一家の亭主、モーブさん――四十五歳、道具屋の販売員、中年太り――はやきもきしていた。

 

 その原因は、末娘である。

 十八になった近頃、急に化粧っ気をだしたり、昼間に寝て夕方から出かけることが多くなった。


 妻とともに話を聞こうとしても、すぐに逃げられてしまう。

 良からぬ男に捕まっているのではないか、いかがわしい仕事に手を出しているのではないか。

 考えれば考えるほど、悪い妄想が膨らむ。


 何としても聞きださなければ、と考えると一層イライラし、てっぺんが薄くなった青みがかった紫色(モーブ)の頭を無意識に掻く。


 娘は今日も出て行ってしまった。

 帰ってくるのは明け方だ。


 帰ってくるまで起きていて問い詰めたいが、いつも寝落ちしてしまう。

 座って寝てしまうために体があちこち痛くなるわ、娘は素通りして部屋に入ってしまうわ。

 空振ってばかりである。


 今日こそは帰ってくるまで起きていよう。

 そう誓って椅子に座った途端に、モーブさんは舟を漕ぎ始めるのであった。



  ◇



「ん……」

 目が覚めた。

 カーテン越しに見える外はまだ真っ暗だけど、ボクはむくりと上半身を起こす。

 隣のベッドでは、おねーちゃんがすぅすぅと寝息を立てている。


 いつ見てもきれーな顔だなー。

 お風呂入りたてだから、柔らかい黄色(レグホーン)の長い髪もうっとりするほどサラサラ。


 夜は楽しかったな、おねーちゃんあんなに乱れて……。


 思い出し、えへへへと一人ニヤけていると、艶めかしい声が控えめに聞こえてきた。



「アヤちゃん……。んん……。だめぇ……」



 不意に名前を呼ばれたため背中がぞくりとした。

 思わずおねーちゃんの顔を覗き込む。

 ボクが目を覚ましたことに気付いた様子はなく、もぞもぞと動き横向きに眠っていたのが寝返りで仰向けになる。


 首までかかっていた掛け布団がずれ、寝間着から鎖骨がのぞくと撫でまわしたい衝動に駆られる。


 夢で続きをしてるのかな。

 まだ物足りないなんて、聖職者クレリックなのに欲が深いなぁ。


 なんて、そんなところも大好きなんだけど。

 目が覚めちゃってすぐに眠れそうもない。

 そもそも睡眠が特に必要ない。


 このままおねーちゃんに夜這いかけたいけど、久しぶりに宿に戻ってベッドで眠れるんだ。

 疲れてるだろうから、そっとしておこっと。


 ちいねーちゃんは戻ってきていないみたいだし。

 ちょっと散歩でもしてこようかな。


 よっと。

 ベッドから出て窓を開ける。


 冬が目前だから、入ってくる空気はひんやりしている。

 ネグリジェ一枚じゃ肌寒い。


 三人分の服がかかったクローゼットから、おねーちゃんにもらったロングコート――修道女シスターの服と揃いで、出会ったときに服を着ていなかったボクにかけてくれたもの――を羽織る。


 すっかり自分のものだけど、まだ微かにおねーちゃんの匂いがするから着るだけで興奮してるのは内緒。

 裾が足首近くまであるから、ボタンを留めればとてもあったかいんだ。


 行ってくるね。

 起こさないようそう心でつぶやいて、ずれていた掛け布団を直し、おでこに軽くキスをする。


 窓の枠に足をかけ……たかったけど、コートの丈で足が上がらないからまず手をついて窓枠に膝をついてから立ちあがり、目を閉じて集中。


 目を開けてぴょんと降りると、一瞬落下した体がふわりと浮かぶ。

 そのまま屋根より高くまで上昇。


 冷たい空気が全身を包む。

 『野ウサギと木漏れ日亭』の周りは建物が少ない――というか裏手が森だ――から真っ暗。


 少し離れた宿場街の灯りもほとんど見えないから誰にも気づかれなさそうだけど、月が明るいから万が一目撃されて騒ぎになるのを防ぐために、隠れ蓑(ハイド)の幻術をかける。

 これで魔力の感知能力に相当長けた人くらいにしか見つからないはず。


 ここに来たばかりのころ、暗いから平気だろって何もしないで夜中に空飛んだら子供に思いっきり見つかって焦ったっけ。


 夜の空気を体全体で撫でるように、滑らかに宿場街の方向へ飛ぶ。

 大きくはない街だそうだけど、収穫祭のある今はとっても賑やか。

 近づいてみると、夜遅いのにちらほらと人が出歩いているのが見える。


 冷気が肺を満たす。

 冷たさが体の内側に入り、お酒を飲んだために少しぼーっとする頭がどんどん冴えていく。

 地上では冷え込んできているのをものともしないで、陽気に歩いている人が多い。


 ヨッパライかなー。

 飛びながらしばらくニンゲン観察をしよーっと。

 



「ねーねーおねーちゃん」


「どうしたの?アヤちゃん」


「“だきまくらかばあ”ってなーに?」


「だ……っ……!(何を突然言い出すのですこの子は……!)」


「?」


「それがどうしたのですか?(平常心、平常心ですわ)」


「ボクの“だきまくらかばぁ”ができたって、“さんぷる”もらったんだー。ほら」


「……っ!!(ベッドの上で恥じらう姿……!本人そっくりではありませんか!か、かわいいですわ!)」


「おねーちゃんどーしたのー?顔赤いよー」


「な、何でもありませんわ(これは欲しいですわ!!)」


「裏面もあるんだよー。ほら」


「…………っ!!!!(俯いた真っ赤なお顔に、お洋服が脱げかけているではありませんか!大事なところは上手に隠して!なんて尊いのでしょう!!)


「おねーちゃん、どう?こんな格好のボク……欲しいんでしょ?」


「(ええ喉から手が出るほど!)……こんなはしたないもの所有するわけにはいきませんわ」


「ふーん。じゃあ、おにーちゃんにあげよっと。あ、おにーちゃーん!」


「ダメダメダメダメ!私が戴きますわ!アヤちゃん!待って~~~~~~!!」



等身大両面プリント抱き枕カバー<アヤメ・レグホーン>(野ウサギと木漏れ日亭より)

サイズ:○○cm×△△cm


予約受付中!(受付てませんw)

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[気になる点] そう思うとズボンを上げ、上着を羽織り、緊急用に備えているを隠してあるって飛んでいった方向にむかって走っていく。 訂正しようと思ったものの、うまくできそうになかったのでご確認お願いしま…
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