1日目 15 ヒナとアサギ③ 鞭打ちと脱獄《前》
またまた2週間ぶりの更新です!
ようやく10話目です。一晩が長いです。
排水口ババァのこと話してたら、あのドスグロいルージュを塗りたくった口から発生してた、鼻のひん曲がる臭いも思い出して気持ち悪くなってきた……。
記憶を紛らわすべく、手元のエールを一気に流し込む。
……おかわりもらおう。
隣に座る君が大丈夫ですか? と心配そうに声をかけてくれる。
濡れた子犬のようにしょんぼりする顔を、かわいいかも……と思ってしまう自分がいた。
いやいや、綺麗な顔立ちとはいえ男同士だぞ! 酒のせいだな! しょうがない!
「君が気に病むことじゃない。思い出したら耐えられない、メンタルヘタレな俺の問題だから気にしないで……。うっぷ」
ちょっとカッコつけてそう言ってみたものの、やっぱ気持ち悪い。
とんでもないトラウマだな、これは。
そのおかげで君から顔をそらす口実が出来たのは幸い。
「ちょっと、こっちに吐かないでよ!!」
顔を背けた先、俺の向かいに座るヒナがおもむろに立ち上がり、体を遠ざける。
失礼な奴だな。
かけたりしねーよ。
「んー? おにーちゃん、気持ち悪いなら、お口直しにボクとチューする?」
えっ。
君の反対側、俺の並びに座るアヤメはそう言うと唇に人差し指を当て、ニコッと笑いながら誘うように目を細め首をかしげる。
「「だめーーーーーーーーー!!!!」」
俺が反応するより早く、ヒナとジーナが顔を真っ赤にして全力で止めに入る。
いや、まだ何も言ってない。
ちょっと期待したけど。とか言ったら殴られる。
ジーナはテーブルに勢いよく手をついて立ちあがり、ヒナは離れた分突進した形になり、拍子にテーブルの上の木製ジョッキが傾きエールがこぼれて、買ったばかりのワンピースにかかって色気のない悲鳴が上がる。
アンタのせいだからね! と言われ、テーブルに突撃する奴が悪いだろ、と少し腹が立つが、はいはいと流し近くにあったまだ綺麗そうなおしぼりを投げて渡す。
「シミになったら弁償しなさいよ!」
怒りながらもすんなり受け取り、ぽんぽんと濡れた裾をたたく。
そんな金ねぇよ。玄関の弁償が先だろ。
ほんと鳥の雛みたいにぴーちくぱーちくうるせぇ。
「アヤちゃん、そんな軽々しくちゅーなんて男性に言ってはだめですよ、そもそも……」
隣じゃジーナが頬を赤らめたままお説教タイム。
「もー、おねーちゃんまで本気にしてー。冗談だよー」
二人の反応に対してヘラヘラと笑うアヤメ。
「ごめんってばー。よその世界から迷い込んだ人なんて興味沸いて。お肉とお魚が味の種類が違って比べられないみたいに、ニンゲンの生気もそれぞれだからね。どんな味がするのかなーって」
分かるような分からないような弁明をする。
「ボクはいつでも歓迎だよ?」
こちらをチラ見し小声で俺だけに聞こえるように言い、あはは、と笑う。
そのしぐさにドキっとする。幼さの中に色気を感じるのはさすが淫魔か。
「……。お部屋に戻ったら少しお話しましょうね?」
ジーナがテーブル越しにアヤメの肩をつかみ、こめかみに青筋の浮かんだ作り笑顔で言う。
ばっちり聞こえてたみたいで恐ろしい。
いつもの間延びした語尾がなくなってるから相当怒ってる。
「アサギ、聞いてんの!?」
こっちもギャーギャーうるさいし、収集つかねぇな。
こういうときいつもなら止めに入るオヤジさん、静かだと思ったら口笛吹きながらエールのお替り注いでるし!
いや頼んだけどさ!
フォローしてくれないのかよ……。
「ああもう! いい加減続きを話したらどうなのよ!! このあたしの活躍を!」
服の処置を終え、ヒナが飛び込むように椅子に座る。
オヤジさんがタイミングよくジョッキに注いだエールを置くと、不機嫌そうにありがと、と言い一気にあおって乱暴に置く。
へいへい、そーですね。
俺のところにもお代わりのエールが届いた。
さ、続きを話そうか。
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