元・騎士団長が物申す!〜自称神に異世界転移・転生させられた元団長。働き先は真っ黒なブラック企業でした〜
とある飲食店に、青年が怒声が辺りに響き渡った。
驚いた周りの客や従業員は、何事かと振り返る。
そこには金髪ショートの青年と、三人の男女の姿があった。
少女の方はズブ濡れに。残りの二人の男の内、一人は薄い毛の頭を下げ、もう一人の中年男は驚いた顔をしていた。
「な、何だお前は!?」
「貴様こそ何だ! この者を執拗に叱り、挙句の果てには水をかけるなど、騎士以前に男として許せぬ! 俺が叩き切ってやる!」
青年は腰に携えた玩具の剣の柄に手をかけ、薄毛の男は慌てて制止する。
「客に向かって何だその態度は!?」
「すみませんお客様! この者は最近入ったばかりの、新人なものでして……!」
「わ、私は大丈夫ですから! 落ち着いてください!!」
少女の方も慌てて青年を抑えようとする。
「この様な愚行を許すなど、言語道断! 首を差し出せ!」
「落ち着いて! このままじゃ、クビになるのは君の方だよ!?」
「そうですよ! 今辞められたら、このお店は回らなくなります!!」
何故このような状況になったのか。
それは中年男が、少女の接客の態度が気に食わないと、クレームをつけたことから始まった。直ぐに薄毛の男と共に少女も謝った。が、横暴な態度の中年男はあろう事か、勢いで少女に水をぶっかけたのだ。それを見た金髪の青年は激怒したのだ。
「客は神様なんだぞ!?」
「貴様が神なわけあるか! 俺の知る神は、もっと珍妙なモノだったぞ!!」
そう言い放ち、抑える二人を払いのけた青年は剣の柄を握――。
「申し訳ありません、お客様」
……ろうとしたところで、突然現れた女性に勢いよく蹴り飛ばされた。
「て、店主殿……何を!?」
青年は蹴られた腰を抑えながら、女性に抗議する。女性こと、この店の店長は蔑むように倒れた青年を睨みつける。
「お客様に対して何をしている」
「この者が……!」
「黙れ、お前は頭を冷やせ」
女店長は二人に倒れた青年を、店の奥に引っこめるように顎で指示する。そして中年男に向かって謝罪した。
「申し訳ございません、お客様。私の指導不足です」
「わ、分かればいいんだよ!」
「しかしお客様……当店の従業員は全て私の奴隷共です。お戯れは程々に」
そう釘を刺すように睨みつけては、何事も無かったかのように去っていく。
青年こと、岸堂アーサー。
彼は元々、この世界の住民ではない。
訳あって自称神に転移させられた、元騎士団長の異世界の住民である。
これはそんな彼が、荒んだ日本を世直しする物語である!
お読みいただきありがとうございます。
いつか連載する(予定)の物語になります。
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