冷静沈着系主人公~条記 雷華~
私には、好きなものがある。嫌いなものがある。
嫌いなものを、避けてしまう。好きなものを、近くに寄せてしまう。貴方にも、こんな経験が、あるのではないでしょうか?
これは、そんな嫌われ者たちの、ほんわか、そして、
どことなくまったりとした世界の、物語。
第一説………嫌われ者
「ここは………」
私、条記 雷華は、周りには何もない草原で
目を覚ます。
本当に辺りには何も無い。色々なラノベで有名な異世界転生と考えたものの、残念ながらそうも行かないらしい。何故なら私は、この風の気持ちいい場所のことを知っていたからである。知っているといっても、この風景を見たことがある………というだけだが。
この状態に至るまでの行動を思い出そうとするが、どうにも限定的なものしか思い出せないようだ。覚えていたのは、自分の名前や家族、そして…この草原。
ふと意識を右に向けると、まさに本に出てくるような、典型的な妖精?のようなものがいた。
「あなたは、だあれ?」
喋る。実に小さくて、少し可愛げのある声は、私の心を奪う。
「私は条記 雷華。あなたは?」
などと、小学生でも出来るような返しをする私。今の発言において、妖精はノーコメントだった。実に悲しい。
「ついてきて」
それだけを返して、森の中へと入っていく妖精。その背中を追うことしか今はすることがなかったので、とりあえず後を追った。
少し入り組んだ緑をかき分けながら進む。見たことのないものばかりだったが、あまり驚かなかった。目の前に広がる世界が、それよりも驚きを感じさせるようなものだったからだ。
第一説 第1部……[完]