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PENGUIN  作者: ごみぬこ
2/2

ちょっとした休息


◆「ぼく」の乗る機体については本文中で説明をしようと思ってはおりますが、他のものについては基本的にググってください。

どうしても要望が出たような場合には文末のあとがきで脚注を入れる作業とかいうものをしようと思います。

◆登場人物、場所などすべてフィクションの方針で進めています。物理的にどーのこーのということはぬるーしてください…。

◆もしかすると残酷な描写が出てくるかもしれません。ご注意ください。


 ぼくは自機の撃沈した潜水艦への弾薬使用数などの報告を上に提出し終え、自室に戻ってテレビの画面を眺めていた。もういつ始まったか忘れたこの戦争は、この戦域ではこちらが圧倒しているが、他の一般的にいう激戦区では、どうも押され気味のようで、軍部の総帥が記者会見を通してぼくたちの健闘を祈るなどという変なことをほざいていた。

 溜息をひとつついて、テレビから視線を外す。自室は特にどうということもない、鉄筋コンクリートの壁に日用雑貨を入れる収納庫があり傍には基地内無線が、あとはベッドと液晶テレビ、冷蔵庫に空調設備といった最低限のものしかおいてはいない。

 テレビは戦局の行方を報じているだけで、娯楽の要素はほぼ皆無。チャンネルを回してみても、下手な芸人のコントがある程度で、興味をそそられはしなかった。暇を持て余すことは苦手なぼくは、立ち上がりながらテレビをリモコンで消し、床に転がしてある荷物から護身用の拳銃とカードキー、あとは小銭を少々持って基地を散策することにした。

「おう幹久、ちょうどいいとこに出てきたな。」

 ぼくが部屋にカードキーでロックをかけると、二部屋むこうを私室に持つ、同じパイロットの大木哲矢が部屋から顔を覗かせてこちらを見ていた。

「ちょっと暇でね、ぶらぶらしようかと思ってるんだ。」

「おお、なら格納庫まで付き合ってくれないか。」

「あー、また郁乃さんを見に行くわけか。まあ、いいよ。」

「おし、少し待ってくれ。準備するから!」

 郁乃さんとは、この基地の整備士の一人で、哲矢の機体の整備を任されている人だ。他の女性整備士と比べても若く綺麗で、何を思うのかはわからないが、哲矢は毎回基地に戻ると郁乃さんが整備をする様子を見ているのだ。彼女のほうは特に気に留める様子もなく、邪魔さえしなければそれでよい、という感じでいる。

「待たせたな。」

 ほんの1分ほどで出てきた哲矢は右手に小さな袋をさげている。どうせ郁乃さんへの差し入れか何かだろう。

 それからは格納庫までのんびりと先ほど出撃して撃沈した哨戒船のことや相手のことについて話しながら兵舎を出て、基地の最も海寄りにある格納庫まで歩いて行った。

 基地自体はすべて地中にあり、もし有事があった際の緊急避難路が通っているだけで、兵舎や司令部、格納庫などといったものはそれぞれが離れた場所に建てられている。そのため、格納庫まで行くにはいちいち地上直通のエレベータを使い、半キロほど歩かなければならない。この基地に配属されて間もない間はこの移動が苦痛でならなかったけれど、毎回の出撃と度重なる司令部会議室への招集で地下へ缶詰状態にされている今となっては、この移動の間に吸う外の空気が数少ない気分転換の一つになっていた。

 空から見るとただの小さな集落のようにしか見えないこの基地には、お偉いさんを含めて凡そ100人前後が配備されている。基地の中央を走る道は滑走路に、所々に建てられている民家はレーダー兼対空砲の機能を備え、その制御に凡そ半数の陸軍所属の兵隊が割かれている。ぼくや哲矢などはお偉いさんの傘下の特殊部隊、という名目なのでそのあたりの人々と関わることは食事をするとき程度しかない。ぼくとしては100人いても20人程度しか関係を持たないため、陸軍の人たちはいてもいなくてもどうでもいい存在。ただ基地を守ってくれているということを感謝するくらいなのだ。

「そういやよ…」

 格納庫までの道を半分ほど行ったところで、哲矢がなにか物想い風な表情でこちらを見てきた。

「さっき格納庫に戻った時に、反対側の入口からえらい綺麗な姉ちゃんが入ってきてたんだが…なんなんだろうな?」

「…。さあな。」

 ぼくはため息をつくと歩調を少し早めた。別に哲矢の言う女性が気になるわけではない。ただ毎回この手の話に付き合うと、格納庫までずっとこの調子で話が続くからだ。周囲に女性成分が少ないせいか、陸軍などではホモやゲイが多いなどと聞くが、それに劣らず若くて綺麗な女性を見ると鼻の下の伸びる哲矢の性格にはほとほとうんざりしてきている。哲矢は歩調を早めたぼくを追うようにその女性の様々な憶測を話してくるが、ぼくの耳はもうそれをスルーし、身体は適当な返事を返しながら格納庫までの道のりを急いだ。



*



 格納庫には、絶えず機械音が響いている。今の時間などはぼくや哲矢たちの乗る機体『海燕ウミツバメ』のメンテナンスが行われているから尚更だ。格納庫自体はこの戦争が始まってから新設されたものなのだが、ほんの数分前まで外を歩いていたせいか酷く暗く、そして古ぼけて見える。

「それじゃ、戻る時にまた呼ぶから、それまでのんびりしててくれよ!」

 哲矢は格納庫に入ったところでそう言ってひとりで自機の方へと歩いて行った。いつもの調子だと早くてメンテナンスが終わるまで、遅くて夕飯時まではここを離れることはない。残されたぼくはというと、特にここですることもなさそうなので入口の自販機で飲み物を買ってそれを飲み干したあと、ふと先ほど地上で哲矢の言っていた女性の話を思い出して、あまり意識をしないままふらりと反対側の地上へ続く入口へ視線を移した。

 この格納庫から司令部へと続くその入口の鋼鉄の扉は、何事もなかったかのように普通にそこにあり、格納庫という風景に溶け込んでいる。少なくとも今現在、人の出入りしている様子はなく、その周囲に目立った服装のお偉いさんの姿も見えない。哲矢の話もどうなのかは全く分からないまま暇を持て余すことになったぼくは、誰かに倣うわけではないが、何気なしに自機の方へと歩いて行っていた。

「や!また哲坊の付添いかね!」

 自機の方へ近づいて行くと顔見知りの整備士にそんなことを言われた。

「そうなんですよ。また郁乃さん目当てにあいつが…。」

「あー、哲坊もよく飽きんなあ…!」

 そんな会話を一瞬立ち止まってやり取りする。しかし相手の整備士も仲間の機体の整備があるためにそう長く立ち止まって話をするわけにもいかず、軽くそんな話をして手を振って別れる。ぼくは手を振り返しながら、少し歩いたところにある自機を眺める。

 今は海水を抜いているために機体の底まで見える『海燕』は、形式的に海軍の所有物の一つとされてはいるが、実質はお偉いさんの傘下、直属の部隊として海軍が指揮をとることは一切ない。大雑把に『海燕』を言い表すとすれば、空を飛びまわっているジェット戦闘機の主翼、尾翼、垂直尾翼をちょっと切って縮めたような形だ。海中ではジェットエンジンが使えないので主翼と胴体を繋ぐ形で高出力のスクリューエンジンを搭載しているため、出動時の射出からフル回転させると5〜60ノットで安定して航行できる。高速移動のためにどうしても海中の気体による航行跡が残ってしまうことから局地戦闘及び急襲作戦でしか使用できないことが残念なことだが、そのおかげでこうして暇を持て余す時間ができているのが少し嬉しいのがぼくの本音である。

 ぼくは自機に歩み寄り、整備を邪魔しないように気を使いつつ眺める。

 もし何も知らない人がここにきて初めて眺めるとすると、『海燕』は航空機以外のなにものでもない。しかし『海燕』は扱いとしては船舶の一種に指定され、ミサイルではなく魚雷を装備している。だが、これを操縦するためには海技師など一般的な船舶免許だけでなく航空機免許も必要とされるため、普通は空軍所属の少尉以上大尉以下の兵士が海軍で一時期の訓練を受け、この『海燕』の操縦者となる。理由としては『海燕』の操縦は航空機のそれとほぼ大差ないからだ。ぼくもその道を通ってきたし、哲矢や仲間もそうだった。

 正直なところ、これに乗り始めてからは生と死の距離が離れたように思う。人を乗せて水中を50ノット以上で航行するものなどこれまで世界のどこにもなかった。そのために対抗策は限られ、その限りある対抗策のおかげで空戦などよりは戦死の確率が非常に低くなる。過去に機雷や対潜艦などから高速で射出される爆雷によってモニターに赤が灯ることはありはしたが、作戦中の戦死の報告を入れたことはない。ただ、他の場所の他の部隊で爆雷をもろに受けて撃沈されたという情報はいくつか入ってきたことはある。現状知りうる限りで一昔前の対潜魚雷や追尾式のもので沈められることは殆どない。危ないとするとイージス艦など主力艦に配備されている最新型のMk50タイプなどの対潜魚雷だが、これは垂直尾翼から一番近い胴体部の後部から発射される小型ロケットでほぼ相殺できる。アスロックに関しては真上から当てられない限りは他の魚雷と同様の処理で通用する。核爆雷は過去に退役したものらしいが、激戦区などでしか使用されておらず、こんな辺境で使われることなどはまずないに等しい。

 ぼくは近くの時計へと視線を移す。時刻は午後4時。夕飯時までまだ3時間もある。哲矢の機体のほうへ目を向けると、哲矢はにやにやしながら整備を続ける郁乃さんを見ている。ほんとうによく飽きないものだ。

 結局、今回は本当に夕飯時まで格納庫でのんびり整備を眺めることになった。

文章ばかりで会話があまりないな…。と感じたかな…。

正直、仕方なかった気もする…。

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