14話
「モンスターと対峙している状態で治療を行うというのはそれ即ち自分たちの戦力の減少を意味します。典型的とされる5人のパーティーであれば、腕を負傷した一人に、その治療に専念する一人で二人の戦力が減りますから、三人で戦う必要がある。これだけで討伐失敗のリスクが大きく上がる、上がるでいいかな?まぁ、上がるわけで、同時にパーティー殲滅のリスクが一気に上がります」
「ですから、まず何よりも自分たちの安全の確保が第一になります。しかしそれと同時に「できる限り生存率を向上させる」ことも目的としてありますから、腕が落ちて血が流れてる仲間を死んでも仕方ないから放置しておけとは行かないわけです。そこでどうすべきか?わかりますか?」
答える生徒はなし。
教頭が挙手をして
「可能な限り両立させる。つまりできる限りの時間を稼いだうえで、生存の為の最低限の治療を行う、だったかな」
「先生詳しいですね」
「それは失礼じゃないか?」
ドーリーがつい口をだす。
「えぇ、つまり一つの解が治療のために必要な時間を稼ぐこととなります。ですから戦力として一定以上の価値があることが回復魔法の利用者には求められます。安全の確保、それは自分の身は自分で守るということでもあり、仲間がやられてるときに回復役だと後ろに控えるわけにはいきませんから」
攻撃魔法使えない魔法使い冒険者が何を言うんだ、とはドーリーの考えだが口にしない。代わりにちょっとした説明を加える。
「傭兵などであれば複数のグループや大規模な集団で動くから、一人がやられても他の人間やパーティーで時間を稼ぐということも行える。まぁ傭兵の場合どこが安全かや雇い主の問題も関わるんだがな。上から大砲の玉が降ってくるし、前からは弓と鉄砲の玉が飛んでくる。俺の知り合いは最前線で首に矢を受けて、もう死ぬと思って自棄になって敵軍に突っ込んでいて捕まってな。敵の連中は捕虜にして情報が欲しいってんで苦労してそいつを助けた。障害は残ったが、今は外国で居酒屋の店員をして元気に暮らしてる。こればっかりは運だな」
Vはドーリーの言葉を受け取って
「冒険者はそういった危険性はまずありません。まぁモンスターの集団に襲われるとかありますけどね。その代わりに本格的な治療を行える施設までの距離がながくなる傾向があります。ですから「生きて連れて帰る」ことが求められます。腕一本のために命落とすのは勘定にあいませんから、場合によっては腕がない状態でも連れていきますし、もしくは自分たちで切り落とすことになっても生かして帰ることが大切なわけです。そして前線基地は前線基地で最善の治療を行い、そこで対応できなければ村、村でも無理なら都市部、とケガの度合いによってどんどん後ろに下げていくわけですね。このルートの確保もできれば問題が起こる前に行うのが好ましいです」




