13話
「自分のパーティーの実力を判断し、それに合った難易度の依頼を受ける。ダンジョンを攻略するにしても、自らの技量や装備にあったダンジョンを選択すること、もし戦力や技量が足らないと判断した場合は追加で人員を募集する、上級パーティーに応援を頼むなどで戦力の増強を目指すこと。場合によっては途中で依頼を辞退する。こういった的確な計画により怪我や事故を減らすことが可能であり、それはすなわち回復魔法が目指す生存率の向上につながります」
魔法の授業だと思ったらいきなりパーティーの組み方の問題。
どう反応したらいいかわからない生徒達を見てドーリーは助け舟を出す。
「まずはケガの予防ってことだよ。理想論で世の中そこまでうまく回ることはまずないけどね」
「そうですね。 特に冒険者や傭兵業界というのはかなり特殊な事情がありますから、生存率の向上という観点では回復魔法の技量よりも事前の予防策、危険を除外する計画立案が占める割合が大きくなります」
そう言っているVの後ろでドーリーが黒板に簡単な絵と言葉を書く。
右から、オーク(モシスター)、前線基地、近隣の農村、そして都市部。
「モンスターの綴が違いますよ」
それを見たドーリーがモンスターと書き直す。
「恥ずかしいな。 まぁ一般的なモンスター退治の位置関係を示した略式図がこれだ。傭兵業界ならオークの代わりに 敵軍というのがいるし、その周りは前線、つまりは戦争の真っ只中ということになる」
「冒険者業界ではそういうことはないですね。まぁ別の危険性はあるんですが。ただここでは略式化したこの図を使わせてもらいましょう。えぇ、腕が切り落とされた場合、切断から接着できるまでの時間に限界があるのですが、誰か答えられますか」
「はい。現在の技術では適切な処置が行われていれば最大1時間と言われています」
「正解ですね。ただし適切な処置というのが落とし穴で、これは都市部の病院などでできる治療と処置であれば約1時間ということです」
そう言って都市をさすV。
「農村などでは治療器具や薬品などは慢性的に不足していますし、都心部より高い技術の治療を受けることはまず不可能です。それでも腕をつなげる指をつなげるといった外科的な魔法については、農村での事故も多いので心得ている医者は多い。ですからまぁだいたい切り離されてから30分以内であればつなげることは可能でしょう。あ、これらはもちろんその腕の持ち主が生きていれば、という前提の上での話です。死んでたら話にならない」
次にオークを指す。
「モンスター討伐のみで採算が合うような大物や群れがいる地域は、普通は村の近くにあるようなものではありません。ですから前線基地を別に設置します。大物モンスターであればここにも医療スタッフを用意します。ただ、 荷物と人が多ければ多いほど採算が合いませんから必要最低限と見積もった装備と人しかないのが普通です」
「そしてモンスターと戦うわけですが、普通はその討伐などの影響を受けて前線基地まで崩壊しないように、モンスターとは一定の距離を持たせた場所に設置します。 近ければ1時間、遠ければ半日程度の距離でしょうか?」
「戦争だと比較的前線に近い部分に設置する事が多いかな。伝令をだす必要があるから」
「まぁ、ここはそう言った都合によって変わります。 逆にモンスターがそこまで強くなければ近隣の村などを拠点として少人数で動くこともあります」
そしてVはモンスターの前に数人分の人の絵を書く。
「世の中100%はありませんから、どんなに対策を練ったとしてもモンスターと戦えば負傷する可能性があります」
そう言って一人の右腕を指でこすって消す。
「仲間が最前線でモンスターに襲われ右腕を落とした。この場合どのような対処が正しいか。わかりますか?」
困惑する生徒。
「その場でできる限り最善の治療を施すこと、いや、違いますね。なんとなくですけど」
一人の生徒が挙手をしてそう答えた。
「これは冒険者業の試験で出される典型的な引掛け問題ですからね。経験もないのに違うと気付けるのは立派です」
Vはそう言ってオークの首にバッテンを書く。
「最初に行うのはできる限りの安全の確保、つまりモンスターの討伐、もしくは追い払うか足止めすることが最優先です。治療はその次となります」




