70話
崩壊しかけた建物の中にすっぽりと入っているドラゴン。
言葉に甘えてドラゴンの背中に乗ったドーリーはVに
「そういえばどう飛ぶんだ?まさか壊すのかね?」
と聞いた。
確かに羽を広げるスペースがない。小さな子供なら別だが、大人二人が背中に乗ってまだ十分余裕があるという大きなドラゴンの体。ここでは羽を完全に広げることもできないだろう。
「いいですか」
「大丈夫です」
「すこし揺れますのでお気をつけて」
もうどうにでもなれ、と思ったVだが、ドラゴンは狭い部屋の中で壁を壊すことなく翼を器用に広げ、ゆっくりと飛び上がった。
壊れそうな壁に傷を一つもつけていない。
「すごいですね」
ある程度の高さまで飛び上がり、今まで動かしてなかった羽をならすようにダンジョンの上を周回。その最中にVはドーリーにそういった。
「空なんか初めて飛んだよ」
ドーリーも驚いている、そもそも空なんか飛んだことがないし、ドラゴンの背中に乗るなど神話か伝説の中でしか聞いたことがない。
ドラゴンはその巨体に似合わない器用な動きで翼を操作するので、後ろの二人は命綱一本だけなのに安心感がある。
首都の学生や商人が利用する荒くれ乗り合い馬車よりもいいとはVの評価。
「村、どっち?」
「あぁ、あっちだ。あそこの畑が見えるだろう。村の真ん中には下りず、村のはずれに下りてくれないか。いきなりみんなを驚かせちゃまずいだろ」
母親から頼まれたのだろう。二人に村の位置を聞きに来た子ドラゴンに、ドーリーは村の位置を教えた。
そしてゆっくりと、しかし力強くドラゴンはその方向に飛んでいく。
その時。村では別の問題が持ち上がっていた。
冒険者が来たのだ。今回は誰も呼んでもないのに。




