65話
「一通り見た程度なのでもう一回登りますけど」
そう言ってVがドーリーに見せたのは矢だ。
「これが刺さってました。毒矢ではないようですが」
「こりゃ、どうしたんだ」
「夜中に飛んでいたらいきなりうちの子を狙った不届き者が居て。追い払いはしたけど、翼に受けてしまったの。どうにか山の中のここに下りたけど、翼が痛くてね。ずっと飛べなかったのよ」
ドラゴンは条約に基づき狩猟で捕ってはいけないモンスターの一つとなっている。
狩猟で、というのはそれ以外による殺害、例えば人間を襲ったり略奪などの犯罪を行ったドラゴンに対する刑罰として死刑を執行する、そのために捕獲する際に抵抗した結果として死亡する、また襲われた民間人が正当防衛で殺してしまうなどというのはOK。
簡単に言えば人間と同じ扱いだ。
人間と違うのは、ドラゴンはモンスターであり、その翼も、鱗も、肉も、目も、内臓も、すべてにかなりの高値が付くということだ。
そのため前述の刑罰などで処分された死骸のほか、条約制定前に取得されたものが市場に出回っているが需要を満たすほどではない。
その結果として現れるのが密猟者。また冒険者でも質が悪い連中が狙うこともある。
もちろん重罪。帝国では狙っただけで重大犯罪として取締られ、場合によっては首都の民が言うところの「首縄の奇術をかけられる」ことになる。この奇術は人生で一人一回しかできない。
その一回を賭けてでも密猟を考える人間がでるのは、それだけドラゴンの価値が高いかだ。
「まだ二本か三本くらい刺さってます。ドラゴンというのは頑丈な体なんですね。傷は浅いですから死ぬとは思いませんが、膿んでます。これは痛いでしょう。しかし処置をしたら明日にも飛べるようにもなると思います。ですが、首都、せめて村のほうまで降りてもらわないと本格的な治療は無理ですから、治したらそっちに来てもらえませんか」
「人に迷惑をかけたくはない」
「そうですか。まぁとりあえず手当しましょう。このまま放置で羽を切り落とすことになるのはいやでしょう」




