58話
その声のあと、闇夜を羽ばたく音。そして二人の前に現れる小さな怪物。
大きな翼。鱗。厳つい小さな顔。鋭い爪。
「ドーリーさん。剣」
それを見て驚いていたドーリーにVは一言。ドーリーも剣を仕舞う。
「おどろいたな」
「おどろかせて、ごめんなさい」
「いや勝手に驚いただけだから、いいんだが、ドラゴンとはね」
ドラゴン。怪物の王。モンスターの神。形容詞はいろいろあるが、それらが指し示すのは「めっちゃんこ強くて怖くておっかない」というもの。
ただ人との関係はほかの上位種と比べればよい方で、人間の真似事をして帝国と条約などを結んでいるし友好的なドラゴンも多い。それでも無礼ものには容赦はしない。
「首都の近くにいるものじゃないだろう。どこから来たんだい」
「お日様が、落ちていくほう。遠くから、おかぁさん、お仕事できた」
目の前のドラゴンはまだまだ小さい。Vだと少し難しいが、体格がいいドーリーなら抱っこができるという位の大きさ。
「ドラゴンの仕事ね」
「いろいろ聞きたいけど話はこの程度で、君のお母さんはどこにいるんだい」
「山の上、貴族様のお城にいる」
お城、とはダンジョンのことだろう。
「だから、あまり、来てほしくない。おかぁさん、羽、ケガしてから、機嫌、悪い、治せるなら、つれてく」
「外傷なら治せるとは思いますけど、どうします?」
Vはドーリーに聞く。
「行くしかないだろう。礼儀正しくな。今から行くか?」
「連れていく、荷物、持っていく」
暗闇の中進むには、と二人は考えたが、ドラゴンの子供が早くとせかすので仕方ない。
少ない荷物をまとめて前に進むことになった。
荷物はすべてドラゴンの背中に括り付けてある。ドーリーの武器類以外の二人分の荷物、だが動きを見るには重そうには見えない。
「重くないかい?」
「だいじょうぶ、軽い」
「ドラゴンってのは力強いんだな」
ドーリーの率直な感想。
ドラゴンを先頭に松明替わりの魔法で前を照らすV、そして剣を携えたドーリーと続き、くらい森の中を歩いていく。




