56話
Vの料理の腕はなかなかだった。
というよりちょっとしたプロ顔負け。何もなくてこれなのだから、村の酒場の女主人より旨いものを作るんじゃなかろうか。とはドーリーの感想。
持ち込んだ四角い調味料はVの薬学と調理の知識を駆使して作られた手製の品で、数種類の調味料を事前固めてある。
これがポイントだとは本人の弁。
「調理は得意ですよ」
組合の技能認定試験で中級を取れる、というのは「少なくとも普通以上」という事なのでそれは納得するが
「旨いに越したことはないが、冒険者に第一に求められるスキルじゃないんだよな」
「そうなんですよね」
そもそも調理を技能をなぜ組合が認定しているか、といえば
「冒険者がおろそかにしがちな食事について教育することで衛生の向上と生存率の増加を目指す」
ため。とされている。
要は「不衛生な水を飲んで腹を壊さないため」「腹が減ったからと言って適当な薬草や木の実を食べて死ぬということを避ける」「食べられる肉と食べられない肉の見分け方」とかを教えることで冒険者がいらないことで死ぬことを防ぐのが目的であり、そりゃ旨いものができるようになればそれに越したことはないが、冒険者として第一に求められる技能ではないのだ。
「おまえ、やっっぱり転職したらどうだ」
食べおわった時間、ドーリーはそんなことを言った。
夜は冷え込むしモンスターもいるかもしれない。できるだけ焚火を囲んで時間を稼ぎ、明るくなってから寝付き、昼から夕方にかけてダンジョンというのが二人の考え。
そうでなければ寒い夜中に目を覚ます。
「田舎の町医者にでもさ。お前より腕も愛想がないやつなんかゴロゴロいるぜ」
「医者になるには学校に行かなくちゃダメでしょう。昔行ってたんですけど、いろいろあって退学になりましてね」
「そうか」
ドーリーは別に気にしない。冒険者だ。訳アリがいてもおかしくない。
それにVの物腰は、首都の学生と言われれば納得できるもの。
「そうなると、そうだな。うまいものが作れて回復魔法の腕がいいなら、傭兵団付きの魔法使いとかどうだ。裏方だが腕が良ければ重宝されるぞ」
「あなた自分がどうして冒険者になったか覚えてますか」
そう言って闇夜に笑うV。
確かに、景気が良けりゃこんなことしてねぇと笑い返すドーリー。
そしてどこかから聞こえるもう一つの声。




