4話
「迎え、ってこれ?」
二日後の早朝、冒険者組合の受付から迎えが来ると聞いて剣士と魔法使いの二人が事務所の前で待っていた所に来たのは馬車だ。
この首都の民がイメージする馬車というのは貴族が乗るような奴だがこれは違う。田舎の農民がよく乗り回している農耕用のものだ。実際荷台には野菜と農業用の鍬なんかが乗ってる。
「遅くなりもうしわけございません。村を代表して」
「そういう話はいいよ。これに乗って行くってことでいいんだな?」
「もうしわけございません。いかんせん田舎な上に足代も十分出せず」
大丈夫か?と魔法使いは思ったが、後の祭りだ。
「飯と宿はあるんだよな?」
「えぇ、村の方で負担させていただきますので」
「ならまぁ行こうじゃないか」
そう言って剣士はさっさと荷台に乗り込んだ。もっているのは弓と剣、そして防具類、戦闘関係の小物を入れたちょっとした袋に日用品を詰めた袋。それに比べて魔法使いは着替えや本なんかを入れたカバンだけだ。気軽な物。
「頼みますよ。でなきゃ帰りますからね」
魔法使いもそう言って荷台に乗り込んだ。
帝国の首都は結構というかかなり広い。
そしてしっかりと整備されている。帝国の威信を表す意味もあり、貴族の帝国への尊敬を表すということもありでそこら中から金が注ぎ込まれる。そこから商売が生まれ、また帝国が繁栄し貴族がもうかるというサイクル。
その広い道を傭兵団を首になった剣士、パーティーから追い出された魔法使いの2人が、これか首都の市場に卸される野菜と田舎の農民に頼まれた農機具、あの御者ともに走る。
「そういえば自己紹介してませんね。僕はヴィリアです。みんなからVと呼ばれてました」
がたんがたん揺れるこの馬車も、なれれば結構気もちがいい。首都の馬車ように幌がなくてオープンだから風を受けるし、前の御者の手綱捌きが首都の乗り合い馬車の何倍も上手いのであまり揺れない。
「V、かっこいいあだ名だな。俺はドーリーだ。長くなるかどうかはわからないが、まぁこれからよろしく頼むよ」
そう言ってドーリーは手を出した。Vも手を出し握手。
ゴツゴツした傭兵の手と、ひ弱な魔法使いの手が合わさればなにかおきるか、まぁそれはだれも知らない。